股関節回りの筋肉が痛む原因と治し方|考えられる疾患や病院に行くべき目安を解説

股関節周辺にはさまざまな筋肉があり、痛みを引き起こすことがあります。一口に痛みといっても程度はさまざまで、原因も多岐にわたります。
また、病院で診察を受けるべきか判断に迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、股関節周りの筋肉に痛みを引き起こす主な原因と、痛みを軽減するための方法、病院を受診すべき目安について詳しく解説します。
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股関節周りの筋肉が痛む原因

股関節周辺には腸腰筋や大腿四頭筋、大殿筋などの筋肉が折り重なっており、さまざまな原因によって痛みが生じることがあります。
筋肉の柔軟性の低下
長時間のデスクワークや運動不足が原因で股関節周辺の筋肉が硬くなりやすくなります。
特に腸腰筋や大腿四頭筋の柔軟性が低下すると、股関節の可動域が狭くなり痛みを引き起こすことがあります。
悪い姿勢の維持
長時間にわたって悪い姿勢をキープし続けると、股関節周辺の筋肉に負担が集中しやすくなります。
たとえば、長時間猫背や前傾姿勢での座り仕事をする習慣があると、股関節周りの筋肉が過度に緊張し痛みを生じさせることがあります。
加齢による筋力低下
年齢を重ねると、大殿筋・腸腰筋・内転筋などの股関節周辺の筋肉が衰えやすくなります。
筋力の低下によって股関節を十分に支えられなくなると、歩行時や立ち上がる動作の際に痛みを感じやすくなります。
また、痛みによって運動量が低下するとさらに筋力の低下を招くという悪循環に陥ることも少なくありません。
負荷の高いトレーニングによる筋肉痛
運動の習慣がない方がいきなり長時間のウォーキングやランニングを行ったり、負荷の高い下半身の筋力トレーニングなどを行うと、筋線維が損傷し炎症が起こります。
これが筋肉痛として現れ、特に股関節周辺の筋肉に強い痛みを生じさせることがあります。
関連記事:股関節が硬くなる原因とは?セルフチェック方法や自宅でできるストレッチを紹介
股関節周りの筋肉が痛む場合に考えられる疾患

股関節周りの筋肉の痛みが持続する場合、何らかの疾患を発症している可能性も考えられます。
梨状筋症候群
梨状筋症候群とは、お尻の奥にある梨状筋とよばれる筋肉が坐骨神経を圧迫することで、股関節周辺の痛みを引き起こす疾患です。
また、痛みだけでなく、股関節や太ももの後ろにしびれを感じることもあります。
股関節を外側に広げた際には梨状筋が弛緩するため、坐骨神経を圧迫することはありません。
しかし、内側に曲げると梨状筋の伸張によって神経が圧迫されるため、痛みやしびれを感じることがあります。
グロインペイン症候群
グロインペイン症候群は「鼠径部痛症候群」ともよばれ、主に股関節を動かした際に鼠径部に痛みが生じる疾患です。
痛みの程度や現れ方はさまざまで、重症化すると腹部や太ももにまで痛みが放散されることもあります。
グロインペイン症候群は筋肉の損傷以外にもさまざまな原因が考えられるため、適切な検査を行ったうえで治療法を検討する必要があります。
腸腰筋膿瘍
腸腰筋膿瘍とは、腸腰筋に膿が溜まり痛みや発熱、倦怠感を引き起こす疾患です。
糖尿病の合併症や消化器疾患、感染症から腸腰筋膿瘍を発症することも多く、さまざまな発症原因があります。
主に中高年層が発症しやすく、糖尿病などの基礎疾患を抱えている状態は重症化するケースも少なくありません。
その他の疾患
股関節周囲の筋肉の痛みと思っていたら実は筋肉以外の疾患だったということも少なくありません。
変形性股関節症や股関節唇損傷など股関節自体が損傷していることにより痛みが引き起こされている場合もありますし、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症による神経痛が股関節周囲に及んでいる場合もあり、診断には整形外科専門医の診察を受ける必要があります。
関連記事:歩くと股関節が痛いときの原因は?股関節をほぐすストレッチを紹介
股関節周りの筋肉の痛みを緩和する方法

股関節周辺の筋肉の痛みを少しでも緩和するためにはどういった方法があるのでしょうか。自宅でもできる手軽な方法をいくつかご紹介します。
ストレッチ
一人でもできる手軽な方法としておすすめなのがストレッチです。
股関節にはさまざまな筋肉があるため、それぞれの部位に合わせたストレッチを試してみましょう。
お尻の筋肉に効果的なストレッチ
- 床に座った姿勢で両膝を曲げ、体育座りの状態になる
- 左足を右膝の上に乗せ左脚を右膝の上であぐらをかく状態にし、前傾姿勢を取る
- 2の姿勢のまま30秒程度キープ
- 右と左を交代して同様の動作をもう一度行う
身体が固い方は膝に反対の足が乗せられる範囲で曲げる。
太ももの筋肉に効果的なストレッチ
- 床に座り、左脚を前方に伸ばし、右膝はあぐらの状態にする
- 左足のつま先は天井を向け、膝を伸ばしたまま、前傾姿勢になり左手で左のつま先を掴むように体を倒す
- 2の姿勢のまま30秒程度キープ
- 左右の脚を入れ替えて1〜3の動作を繰り返す
掴む側の膝が曲がらないこと、猫背にできる限りならないように行うのがポイントです。
足を上げたままキープするときには、太ももに力が入っていることを意識しましょう。
マッサージ
ストレッチとあわせてマッサージも習慣づけることで筋肉の痛みを緩和できる可能性もあります。
太ももの内側のマッサージ
- 椅子に座り、両足を軽く開く
- 太ももの付け根の内側部分を軽くつまみ、10秒程度揺らす
- 膝の内側にかけて、つまむ部分を徐々に移動していく
お尻のマッサージ
- 仰向けの状態でお尻の下にテニスボールを置く
- テニスボールに体重をかけ、心地よいと感じる部分で20秒程度キープ
- テニスボールの位置を少しずつ移動する
いずれのマッサージも痛みを感じたら中止し、心地よいと感じる程度を心がけましょう。
理学療法士の施術
運動機能の維持や回復を目的として、理学療法士が施術を行います。
これらは医学的知見をもとにした医療行為であり、痛みの緩和にもつながるだけでなく、痛みの再発防止を行うことも可能です。
自宅でのストレッチやマッサージだけで症状が緩和されない場合には、理学療法士の施術を受けられる整形外科を受診し理学療法士による施術の要否も含めて相談してみましょう。
日常生活で負担を軽減する工夫
日常生活の習慣や癖が痛みの原因となっているケースも少なくありません。
たとえば、運動不足を解消するためにウォーキングやストレッチを習慣づけたり、デスクワークの際には背筋を伸ばし無理な姿勢を維持しないこと、十分な睡眠とバランスのとれた食生活を心がけることも重要です。
股関節周りの筋肉の痛みの治療方法

股関節周辺の筋肉の痛みを緩和するために、医療機関で行われることの多い治療法をご紹介します。
理学療法士の施術
理学療法士の施術は、股関節周辺の筋肉の柔軟性を向上させ、痛みの軽減や再発を防ぐためにも効果的です。
適切なストレッチや正しいフォームでの筋力トレーニング、リハビリを行うことで、体のバランスが整い股関節の可動域も向上します。
ハイドロリリース
ハイドロリリースは筋膜リリース注射ともよばれ、筋膜の癒着を改善するために生理食塩水などを注射する治療法です。
超音波を使用しながら正確に痛みの部位に注射をするため、筋膜などの癒着によって引き起こされる股関節周囲の痛みに効果を発揮します。
理学療法士の施術を合わせて行うことでより痛みを改善したり再発を防止することに対して効果的です。
体外衝撃波治療
体外衝撃波治療とは、特殊な衝撃波を患部に照射することで細胞の修復を促し、痛みを軽減する治療法です。
炎症や痛みを抑えると同時に自然治癒力を促進する効果もあり、損傷した筋肉の回復を早めます。
体外衝撃波治療は慢性的な痛みの治療に効果が期待でき、理学療法士による施術や薬物療法と組み合わせて行うこともハイドロリリースと同じく大事になります。
薬物療法
薬物療法は主に痛みを緩和するために用いられる治療法です。
ロキソニンなどの痛み止めの内服薬などさまざまな痛み止めが使用されますが、股関節周りの筋肉の痛みに対してはロコアテープとよばれる痛み止めの貼り薬が効果的です。
しかし、痛み止めは痛みを隠しているだけで、痛みの出ている原因を絶つという根本的な問題解決に繋がっていないので一時的な対処法と考えて下さい。
股関節周りの筋肉に痛みがある場合に病院へ行くべき目安
股関節周辺の筋肉の痛みは、軽い筋肉痛や一時的な疲労が原因の場合もありますが、何らかの疾患が隠れている可能性もあります。
以下のような症状が見られる場合には、早めに最適な整形外科を受診しましょう。
痛みが長期間続く
2週間以上にわたって痛みが続く場合には、単なる筋肉痛ではなく筋肉および腱の炎症や損傷、股関節疾患などの可能性があるため、早めに病院を受診しましょう。
また、痛みが引いた後で再発を繰り返す場合も慢性的な疾患を抱えている可能性が高いため、早めに受診しましょう。
日常動作に支障が出ている
歩行時に痛みを感じたり、階段の上り下りが辛い、しゃがむ動作が困難など、普段の生活に支障がある場合には放置しておくと重症化するおそれがあります。
痛みによって関節の動きが制限されると筋肉がさらに硬くなり、悪循環に陥ることもあるため、早急に病院を受診しましょう。
他の症状が併発している
股関節周辺の痛み以外にも、腫れや熱感、しびれなどの症状が併発している場合には整形外科を受診してください。
骨や関節の異常が関係している可能性があり、放置しておくと重症化するおそれがあります。
安静にしていても改善しない
通常の筋肉痛であれば、数日間の安静やストレッチで改善に向かうことがほとんどです。
しかし、数日が経過し安静にしていても痛みが引かない、あるいは悪化する場合には早期の診断および治療が必要な可能性もあります。
関連記事:変形性股関節症を悪化させないためにやってはいけないこととは?
股関節の痛みでお悩みの方はイノルト整形外科まで
股関節の痛みにはさまざまな原因があり、医学的な専門知識がない方にとっては判断が難しいものです。
また、医師であっても外見を見ただけで正確な診断ができるわけではなく、まずはレントゲンや超音波、MRIなどによる正確な検査が必要です。
そのため、股関節の痛みにお悩みの方は、検査設備が充実し多様な治療法に対応できる医療機関を選ぶことがおすすめです。
イノルト整形外科ではレントゲンや超音波の検査が可能で、MRI検査も提携の医療機関で最短で当日・翌日以降に検査が可能で、さらには今回ご紹介したハイドロリリースや体外衝撃波治療といった最新の治療法にも対応しています。
検査結果を踏まえ、患者様の状態や要望に合わせた個別の治療プランを提案させていただくことも可能なため、まずはお気軽にイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックに受診の上、ご相談ください。
まとめ
股関節周辺はさまざまな筋肉が折り重なっており、筋肉の炎症や損傷が原因になることはもちろん、その他の変形性股関節症や股関節唇損傷、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などの疾患でも痛みを引き起こすこともあります。
しかし、外見や症状だけでは痛みの原因が筋肉にあるのか関節にあるのか判断することができません。
痛みが続き症状が改善されない場合には、早めに詳しく診断および治療のできる整形外科へのを受診し適切な治療を受けましょう。
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経歴
●東邦大学 医学部 卒業 ●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科 ●イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長