変形性膝関節症でしてはいけないこと|悪化を防ぐ生活習慣と負担軽減の工夫
※本記事は、整形外科専門医・イノルト整形外科 統括院長 渡邉順哉医師の監修のもと執筆しています。

「膝の痛みを和らげようとウォーキングを始めたら、余計に痛みが強くなった気がする」
「変形性膝関節症と診断されたけれど、日常のどの動きに気をつければ良いのかわからない」
このようなお悩みを抱えていませんか?
膝の悪化を防ぐために良かれと思って行ったストレッチや運動が、かえって関節に負担をかけているケースは少なくありません。
変形性膝関節症による膝の痛みや関節の変形は、日々の無意識な動作や習慣の積み重ねによって進行する可能性があります。
この記事では、膝に負担をかける「してはいけない動作」とその理由を3つの負担別に分かりやすく解説し、日常で実践できる負担軽減の工夫や受診のタイミングについてご紹介します。
Contents
変形性膝関節症でしてはいけないこと【強い衝撃】
膝関節の表面は、衝撃を吸収するクッションの役割を果たす「軟骨」で覆われています。
膝に強く急激な衝撃が加わると、この軟骨の摩耗が早まったり、関節内で炎症が起きて痛みが悪化したりするおそれがあります。
まずは、膝に「強い衝撃」を与える運動や日常生活での動作について確認しておきましょう。
膝に強い衝撃が加わる運動
以下のような、着地時に全身の体重が瞬時に膝へかかる運動は控えることが望ましいでしょう。
- ジャンプ動作を伴う運動(縄跳び、バスケットボール、バレーボールなど)
- 足裏全体で強く着地する運動(ランニング、ジョギングなど)
日常の平地歩行時であっても、膝には体重の約2〜3倍の負担がかかるとされています。
ジャンプやランニングの着地時にはそれ以上の負荷が膝関節やその下にある骨へ集中的に加わるため、摩耗した軟骨や骨をさらに傷めてしまう原因になりかねません。
運動自体をすべてやめる必要はありませんが、膝への衝撃が少ない水泳やエアロバイク、水中ウォーキングなど、低衝撃の運動へ切り替えることが推奨されます。
衝撃が積み重なる日常動作
強い一撃だけでなく、小さな衝撃が何度も繰り返し加わる動作にも注意が必要です。
- 痛みをこらえながらの長距離歩行
- 階段や下り坂の歩行
「歩かないと足の筋肉が衰えてしまう」と考えて痛みを我慢して歩き続ける方がいらっしゃいますが、炎症が起きている状態での過度な歩行は逆効果となる可能性があります。
特に「階段の下り」や「下り坂」では、自重に勢いが加わるため、上りよりも大きな衝撃が膝にかかります。
膝の痛みが強い時期は、エレベーターやエスカレーターを積極的に利用し、階段の昇り降りをできるだけ控えましょう。
関連記事:変形性膝関節症の症状と対処法|進行を防ぐために知っておきたいこと
変形性膝関節症でしてはいけないこと【膝の深い曲げ】
膝関節を深く曲げた姿勢をとると、膝の皿(パテラ)と太ももの骨のあいだや、関節内部にかかる圧力(関節内圧)が著しく高まります。
圧力が高まることで炎症が引き起こされ、痛みの悪化に繋がるリスクがあります。
深く膝を曲げる姿勢
日常生活の中で、無意識に以下のような「深くかがむ動作」を行っていないか振り返ってみましょう。
- 床へのしゃがみ込み
- 膝を大きく折りたたむ深いスクワット
- 和式トイレの使用
床に落ちた物を拾う際や清掃時に深くしゃがみ込むと、膝関節に過度な圧力が集中的にかかります。
物を拾うときは、片膝を床につけて体を支えながら拾うか、椅子に一度座ってから手を伸ばすなど、膝を深く曲げずに済む工夫を取り入れることが大切です。
床に座る生活スタイル
日本の伝統的な和風の生活習慣には、膝を深く曲げざるを得ない姿勢が多く含まれています。
- 正座、あぐら、横座り(ペタン座り)
- 低い椅子や柔らかすぎるソファへの着席
- 床からの立ち座り
特に正座は、関節の可動域の限界近くまで膝を折りたたむ姿勢であり、関節内に非常に強い負担がかかります。
また、床からの立ち上がり動作や、低すぎる椅子からの立ち上がり動作も、膝を深く曲げた状態から体重をかけて伸ばす必要があるため、大きな負荷を生み出します。
重い物を持ち上げる動作
重い荷物や家具などを持ち上げる動作も、膝に高い負荷がかかる原因になります。
持ち上げる重量によっては、膝関節へ体重の数倍以上の負荷が一気にかかるケースがあります。
特に、膝を伸ばしたまま腰だけを前傾させて重い物を持とうとすると、膝と腰の両方に強い負担がかかり危険です。
変形性膝関節症でしてはいけないこと【膝のひねり】
膝関節は本来、主に「曲げる・伸ばす」という一方向の動きに適した構造をしています。
「ひねる(ねじれる)」動きには比較的弱く、ねじれの力が加わると、関節を支える靭帯やクッションである半月板を傷めてしまうおそれがあります。
急な方向転換やひねりを伴う運動
素早い切り返し動作や、足を固定したまま体をひねるスポーツは控えることが望ましいとされています。
- テニス、サッカー、バスケットボールなど(急なストップ&ゴーや方向転換)
- スキー(足元が固定された状態でのターンや転倒時のひねり)
これらの運動では、急激なねじれの力によって半月板や靭帯に強い引っ張り・摩擦が生じます。
特にスキーは大きな負荷とひねりが同時に加わりやすく、転倒による再負傷のリスクも高いため注意が必要です。
日常動作でのねじれ
スポーツだけでなく、日々の何気ない立ち振る舞いの中でも膝のねじれは発生しています。
- 足元を固定したまま体だけをひねって振り向く動作
- 片足に体重をのせたまま方向転換する動作
- 足を組んで座る姿勢、片足に重心をかける立ち方
立ち上がって向きを変える際は、体だけをひねるのではなく、「足の向きごと体全体を進行方向へ向ける」よう意識してください。
また、足を組む座り方や立ち姿勢での偏った重心は、膝関節に左右非対称なねじれ負担を与え続けます。
まずはご自身の座り方や立ち方の癖に気づくことが予防の第一歩となります。
関連記事:変形性膝関節症の主な原因は?女性に多い理由や若年層の発症についても解説
膝の負担を減らす日常生活の工夫
膝に負担をかける動作を完全にゼロにすることは困難ですが、我慢ばかりするのではなく「負担のかかりにくいやり方へ置き換える」ことで、進行を抑えやすくなります。
膝にやさしい歩き方と階段の使い方
歩行時は背筋を伸ばし、視線をまっすぐ前方へ向けましょう。
着地する際は「かかとから静かに着地し、足裏を通ってつま先で軽く蹴る」意識を持つと、衝撃を和らげやすくなります。
歩幅を広げすぎず、小刻みに歩くこともポイントです。
階段を利用せざるを得ない場合は、必ず手すりや壁に手を添えましょう。一歩で一段飛ばしをするのではなく、「一段ごとに両足を揃えてから次の段へ進む」ことで、片膝へかかる負担を大きく減らすことができます。
膝を守る座り方と環境の整え方
座るときは、座面に着席した際に「膝の曲がり角度が90〜100度」になる高さの椅子を選ぶことが理想的です。
畳やフローリングに直接座る「床座」の生活から、椅子やベッドを使用する「洋式生活」へ環境を整えるだけでも、膝を深く曲げる機会が減り、立ち座りの負担を軽減できます。
また、膝の冷えは血行を悪くし痛みを感じやすくさせるため、サポーターの着用や膝掛けを活用して保温に努めることも効果的です。
体重管理と筋力維持
歩行時には膝へ体重の約2〜3倍の負荷がかかるため、体重が1kg増加すると膝への負担は2〜3kg単位で増加すると考えられています。
適切な減量を行うことは、膝への物理的な負担を減らすうえで非常に有効なアプローチとなります。
ただし、極端な食事制限のみによる急激なダイエットは、身体を支える筋力まで低下させてしまう可能性があります。
膝を守るためには、太ももの前側にある「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」の維持・強化が欠かせません。
「椅子に腰掛けた状態で膝をまっすぐ伸ばし、数秒間キープする」といった、関節に衝撃をかけない運動を日常に取り入れながら、バランスのよい食事と組み合わせて管理することが大切です。
重い物を持ち運ぶときの工夫
重い物を運ぶ際は、荷物をいくつかの袋に小分けにして片手あたりの重量を減らすか、キャリーバッグや台車・カートを積極的に活用してください。
やむを得ず床から重い物を持ち上げる場合は、腰だけを曲げるのではなく、股関節と膝を落としてしっかりと重心を下げます。
荷物を胸元や身体の近くへ引き寄せてから、太ももや体幹の力を使ってゆっくりと立ち上がるよう心がけましょう。
関連記事:【簡単】変形性膝関節症の運動療法|自宅でできる筋トレメニューを紹介
受診を検討すべき膝の症状
生活習慣の工夫や動作の見直しを続けていても痛みが改善しない場合、自己判断で放置することは避けましょう。
変形性膝関節症は進行性の疾患であり、放置することで関節の変形が進んでしまうリスクがあるためです。
以下のような症状が見られる場合は、早めに整形外科や関節専門の外来を受診してください。
- 痛みが数日以上続く、または強くなっている
- 膝に水がたまって腫れている
- 膝が伸びない、曲がらないなど動かせる範囲が狭くなった
- 階段や立ち座りなど日常動作がつらくなってきた
これらの症状は、膝関節の内部で炎症が強まっているサインや、関節軟骨・半月板の痛みが進行している可能性を示しています。
早期に専門医へ相談し、適切な評価と治療を受けることが、将来的な悪化を防ぎやすくなります。
変形性膝関節症の膝の痛みでお悩みならイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックまで
「ヒアルロン酸注射を続けているけれど、なかなか痛みが改善しない」
「手術を勧められたけれど、できる限り自分の足で歩き続けたい」
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックの関節専門外来をご検討ください。
当院では「何歳になっても自分の足で動ける生活をサポートする」という理念のもと、お一人おひとりの膝の状態やライフスタイルに合わせた関節痛診療を行っております。
また、従来の保存的治療に加えて、患者様の状態に応じた先進的な選択肢をご用意しております。
- 再生医療(自費診療):
患者様ご自身の血液や細胞から抽出した成分を利用し、組織の修復力や炎症の抑制を促す治療法です。 - 体外衝撃波治療(自費診療):
高エネルギーの音波(衝撃波)を痛みの患部に照射し、組織の活性化や除痛を目指す治療法です。 - ハイドロリリース(一部自費診療・保険適用範囲は要確認):
超音波(エコー)画像で位置を確認しながら、筋膜や神経の周囲に薬液を注入し、滑走性を改善させて痛みを緩和する治療法です。
※上記の再生医療・体外衝撃波治療・ハイドロリリースなどの自費診療は、公的医療保険が適用されない自由診療となります。費用や適応については事前の確認が必要です。また、治療効果には個人差があり、確実な効果を保証するものではありません。
切開を伴う手術以外の治療アプローチも含め、痛みの根本的な改善と「通院からの卒業」を目指した治療プランをご提案いたします。
膝の痛みや動作について不安がある方は、まずは一度ご相談ください。
まとめ
変形性膝関節症において、悪化を防ぐために避けるべき動作は「強い衝撃」「膝の深い曲げ」「膝のひねり」の3つです。
- 強い衝撃を避ける:
ジャンプやランニング、痛みを我慢しての長距離歩行や階段の下りを控え、低衝撃な動きに切り替える。 - 膝の深い曲げを避ける:
しゃがみ込みや正座、低い位置からの立ち座りを避け、洋式生活や高さのある椅子を活用する。 - 膝のひねりを避ける:
急な方向転換や足元を固定した体幹のひねりを避け、体ごと進行方向へ向ける。 - 日常の工夫:
正しい歩行姿勢、体重管理、膝に衝撃を与えない大腿四頭筋の運動により負担を緩和する。
日々の工夫によって膝を守る意識を持ちつつも、強い痛みや水がたまるなどの症状がある場合は、自己判断に頼らず専門医へご相談ください。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックでは、患者様が不安なく歩める日常を取り戻せるよう、一人ひとりに適した精密な診断と治療を提供しております。
膝の違和感や痛みにお悩みの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修医師
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉
経歴
- 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
- 平成23年 東邦大学 医学部卒
- 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
- 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
- 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
- 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
- 平成30年 渡辺整形外科 副院長
- 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
- 令和6年 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長
