変形性股関節症の初期症状はどこが痛む?特徴と受診の目安を解説
※本記事は、整形外科専門医・イノルト整形外科 統括院長 渡邉順哉医師の監修のもと執筆しています。

「立ち上がるときや歩き始めに、足の付け根がズキッと痛むことがある」
「股関節のあたりがなんとなく重だるいが、年齢のせいだと自分に言い聞かせている」
このような股関節の違和感や不快感を覚えつつも、「病院に行くほどではないかもしれない」「もし重い病気で手術と言われたらどうしよう」と不安を感じていませんか?
股関節は体重を支え、歩く・立つといった日常の基本的な動作を担う大切な関節です。
変形性股関節症は徐々に進行する傾向がありますが、初期の段階では痛みが一時的であったり、別の部位に違和感が出たりするため、病気のサインを見逃してしまうケースが少なくありません。
この記事では、変形性股関節症に見られる初期症状の具体的な特徴や見逃されやすい理由、似たような痛みを生じる腰痛・坐骨神経痛との違い、そして受診を検討すべき目安について詳しく解説します。
Contents
変形性股関節症に見られる初期症状の特徴
変形性股関節症は、股関節のクッションである軟骨が少しずつすり減り、関節内で炎症や変形が生じる疾患です。
初期の段階から特有の症状が現れることがありますが、痛む部位や感じ方には個人差があり、股関節から少し離れた場所に不調を感じることもあります。
足の付け根(鼠径部)に出る痛み
変形性股関節症の初期症状として最も典型的なのが、足の付け根の前面にあたる「鼠径部(そけいぶ)」の痛みや違和感です。
特に以下のような「動き始めのタイミング」で痛みを感じやすい特徴があります。
- 椅子から立ち上がるとき
- 歩き始めの最初の一歩を踏み出すとき
- 車やバスから降りるとき
このような動作開始時の痛みを「始動痛(しどうつう)」と呼びます。
動いているうちに関節内で潤滑油のような役割を果たす「関節液」がなじんでくるため、しばらく歩いていると痛みが軽くなったり消えたりすることがあるのも初期症状の大きな特徴です。
お尻から太もも・膝に広がる痛み
股関節自体ではなく、お尻や太もも、膝のあたりに痛みを感じるケースもあります。
これは、股関節の負担をかばおうとして周囲の筋肉が過度に緊張することや、神経の伝達経路の影響で離れた部位に痛みが響く(関連痛)ためです。
そのため、「膝が痛いので膝の病気だと思っていたら、原因は股関節にあった」というケースも珍しくありません。
ただし、お尻や膝の痛みがあるからといって、必ずしもすべてが股関節に原因があるわけではなく、状態を正しく確認するには専門的な評価が必要です。
股関節のこわばり・重だるさ・動かしにくさ
病気の初期段階では、関節の動く範囲(可動域)が急激に狭くなることはそれほど多くありません。
その代わり、「はっきりとした強い痛み」ではなく、「関節の重だるさ」「突っ張るようなこわばり」「動かしにくさ」として自覚されることがあります。
特に長時間の立ち仕事をした後や、たくさん歩いた日の夕方・翌朝などに強く感じられる傾向があります。
股関節を動かしたときの音や引っかかり
軟骨の表面が滑らかさを失ってすり減り始めると、関節の動きに不スムーズさが生じます。
股関節を大きく動かしたときや、足を開いたり閉じたりした際に、「ポキポキ」「ゴリゴリ」といった音が鳴る感覚や、関節内部で何かが引っかかるような突っ張り感を覚えることがあります。
関連記事:変形性膝関節症の症状|痛みの特徴など初期症状のセルフチェック
変形性股関節症の初期症状が見逃されやすい理由
変形性股関節症は初期に発見して対処することが望ましいものの、実際には初期の段階で医療機関を受診する方が少ない傾向にあります。
それには以下のような理由が挙げられます。
年齢や疲れのせいと思い込みやすい
初期の症状は激痛ではないことが多く、「最近少し疲れがたまっているから」「年齢的に関節が硬くなってきたからだろう」と軽く考えてしまいがちです。
しかし、日常のちょっとした動作の変化の中に、変形性股関節症の初期サインが隠れていることがあります。
- 靴下が履きにくい
- 足の爪が切りにくい
- あぐらがかきにくい
- 歩き方に左右差が出る
上記の動作に心当たりがある場合、股関節の柔軟性低下や軟骨の変化が進んでいる可能性があります。
ただし、これらはあくまでセルフチェックの目安であり、当てはまるからといって直ちに病気が確定するわけではありません。
痛みが一時的に治まり様子見にしやすい
変形性股関節症の初期症状は、毎日絶え間なく続くわけではありません。
「数日痛んだと思ったら、しばらく落ち着く」というように、症状が出たり消えたりを繰り返すのが一般的です。
痛みが引くと「治った」と安心しがちですが、痛みが治まっても一度傷ついた股関節の構造が自然に元通りになっているわけではありません。
一時的に痛みが引いている間にも、知らず知らずのうちに関節の変化が進行してしまうおそれがあるため注意が必要です。
関連記事:変形性膝関節症でしてはいけないこと|悪化を防ぐ生活習慣と負担軽減の工夫
腰痛や坐骨神経痛との見分け方
股関節の周辺には大きな筋肉や神経が集中しているため、変形性股関節症は「腰痛」や「坐骨神経痛」と症状が似ており、見分けがつきにくいことがあります。
個々の痛みの感じ方には個人差がありますが、一般的な特徴の違いは以下の通りです。
| 疾患 | 痛む場所 | 痛みが出るタイミング | しびれ |
| 変形性股関節症 | 足の付け根(鼠径部)、お尻 | 立ち上がり、歩き始めなど体重をかけたとき | 原則として伴わない |
| 腰痛 | 腰、背中 | 腰を動かしたとき、同じ姿勢が続いたとき | 伴わないことが多い |
| 坐骨神経痛 | お尻から太ももの後ろ側、ふくらはぎ | 特定の姿勢をとったとき、歩行時など | 伴うことがある |
※腰と股関節の双方が悪いために、股関節痛としびれが同時に現れるケースもあります。
腰痛との見分け方
変形性股関節症は「足の付け根(鼠径部)」に痛みが現れやすく、立ち上がりや歩き始めなど、股関節に体重がかかった際に痛みが強まる特徴があります。
一方、一般的な腰痛は「腰や背中」を中心に、腰をひねったり前後に曲げたりした際や、長時間同じ姿勢を保ったときに痛みが現れやすくなります。
ただし、股関節の痛みをかばって歩くことで腰に負担がかかり、腰痛と股関節痛を併発する方も多いため、自己判断だけで区別することは難しいでしょう。
坐骨神経痛との見分け方
坐骨神経痛は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などが原因で坐骨神経が圧迫・刺激され、お尻から太ももの裏側、ふくらはぎにかけて「ピリピリとしたしびれ」や鋭い痛みが生じる状態です。
変形性股関節症では基本的に「しびれ」を伴うことは少ないため、足に電気的なしびれや冷感があるかどうかは、神経由来の症状か関節由来の症状かを推測する一つのポイントになります。
初期症状を放置するとどうなるか
股関節の表面を覆っている軟骨は、一度すり減ってしまうと自然に元の厚みへ回復することはありません。
また、軟骨の内部には神経が通っていないため、初期の段階では大きな痛みがなく、ご自身が気づかないうちに関節の変化が進んでしまうこともあります。
初期症状をそのまま放置してしまうと、以下のように段階を経て症状が進行していく可能性があります。
- 安静時痛・夜間痛:
動いていないときや、夜寝ている間にも股関節がうずくように痛む。 - 可動域制限(関節拘縮):
股関節が固まり、足を開く・曲げるといった動作が著しく制限される。 - 歩行障害(跛行):
痛みのために足をひきずるような歩き方になり、長距離の移動が困難になる。
ただし、どのようなスピードでどの程度進行するかは、ご自身の骨の形状(臼蓋形成不全の有無など)や生活環境、筋力によって大きな個人差があります。
過度に恐れる必要はありませんが、進行を遅らせるためには早期の把握が大切です。
整形外科を受診する目安
初期の違和感は軽度であることが多いため、「どのタイミングで病院へ行くべきか」と迷われるかもしれません。
以下のような状態が当てはまる場合は、我慢せずに早めに整形外科を受診することが大切です。
- 立ち上がりや歩き始めに足の付け根が痛むことが繰り返される
- 股関節周辺のこわばりや重だるさが続いている
- 靴下を履く、爪を切る、あぐらをかくといった動作がしにくくなった
- 歩き方に左右差が出ている
- 股関節の違和感が長引いている
これらに該当したからといって、必ずしも変形性股関節症と決まったわけではありません。
正しい診断を受けることで、ご自身の痛みの本当の原因を特定し、初期の段階だからこそ選択できる幅広い対応(生活指導、運動療法、保存的治療など)を検討しやすくなります。
関連記事:変形性膝関節症の治し方|手術や薬と筋力トレーニング・再生医療も解説
変形性股関節症の初期症状でお悩みならイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックへ
股関節の痛みを「年齢のせいだから仕方がない」と諦めて放置してしまう方は少なくありません。
しかし、早い段階で原因を正確に突き止めることができれば、将来的な身体の負担を軽減するための選択肢が広がります。
初期の変形性股関節症は、一般的なレントゲン撮影だけでは骨の微小な変化や周囲の組織の状態が判別しにくいケースもあります。
そのため当院では、必要に応じて超音波(エコー)検査や磁気共鳴画像装置(MRI)を用いた精密な検査を行い、股関節の状態を詳しくお調べいたします。
「手術を受けるのはできる限り避けたい」
「他の病院で様子を見ましょうと言われたが、痛みが続いていて不安だ」
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックの関節専門外来をご検討ください。
当院では「通院からの卒業」と「いつまでも自分の足で歩ける生活」を目指し、患者様一人ひとりの症状に合わせた治療計画をご提案しております。
- 再生医療(自費診療):
ご自身の血液などから抽出した成分を利用し、組織の修復や炎症の抑制を目指す治療法です。 - 体外衝撃波治療(自費診療):
患部に音波(衝撃波)を照射し、痛みの緩和や組織の活性化を促す治療法です。 - ハイドロリリース(一部自費診療・保険適用範囲は要確認):
超音波画像で確認しながら、筋肉や筋膜の周囲に薬液を注入し、滑走性を改善させて痛みを和らげる治療法です。
※上記の再生医療・体外衝撃波治療・ハイドロリリースは、公的医療保険が適用されない自由診療(自費診療)が含まれます。費用については事前にスタッフよりご案内いたします。また、治療効果には個人差があり、確実な効果を保証するものではありません。
股関節の痛みや変形性股関節症について不安な方は、どんな小さな違和感であっても、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
まとめ
変形性股関節症の初期症状について、重要なポイントを改めて整理します。
- 初期の特徴:
立ち上がりや歩き始めといった「動き始め」に、足の付け根(鼠径部)が痛むのが典型的。 - 見逃されやすいサイン:
靴下が履きにくい、あぐらがかけないといった日常動作の制限や、休むと痛みがひく一時的な性質によって放置されやすい。 - 放置のリスク:
関節軟骨は一度減ると自然には戻らないため、放置すると痛みの慢性化や歩行制限に繋がる可能性がある。 - 早期相談のメリット:
症状が初期であるほど保存的な治療や運動指導など、選択できる対応の幅が広がる。
「ただの疲れ」「歳だから」と放置せず、違和感を覚えた段階で適切な判断を行うことが、これからの健やかな生活を守る第一歩となります。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックでは、お一人おひとりの股関節の悩みに寄り添い、状態に合わせた最適な医療をご提供いたします。
股関節の痛みや重だるさでお困りの方は、ぜひ当院へご相談ください。
この記事の監修医師
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉
経歴
- 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
- 平成23年 東邦大学 医学部卒
- 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
- 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
- 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
- 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
- 平成30年 渡辺整形外科 副院長
- 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
- 令和6年 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長
