骨粗鬆症の治療は何をする?注射や薬の種類や治療期間を解説
※本記事は、整形外科専門医・イノルト整形外科 統括院長 渡邉順哉医師の監修のもと執筆しています。

骨粗鬆症は、骨の強度が低下し骨折リスクが高まる病気です。
特に高齢者や閉経後の女性に多く見られ、進行すると、尻もちや転倒などの軽い衝撃でも背骨の圧迫骨折や大腿骨の骨折し、寝たきりになったり、寿命が大幅に短くなってしまいます。
骨粗鬆症は将来の重大な骨折を未然に予防することが重要な病気になります。
本記事では骨粗鬆症の具体的な治療方法や治療期間、費用の目安について詳しくご紹介します。
Contents
骨粗鬆症の主な治療方法
骨粗鬆症の治療は、もっとも重要になってくるのが薬物療法です。
薬物療法には注射と内服の2種類があり、骨を作るのを速めたり、骨が壊れるのを抑えることで骨の強度が上がります。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病と比べ、治療薬なしでは治すのはかなり困難な病気です。
これは、年齢に伴う性ホルモンの減少などによって、骨を作ったり壊したりという骨代謝のバランスが崩れ、骨が脆くなることが多いためです。
注射による治療
注射は骨の代謝に直接作用する治療法で、大きく次の2種類に分類されます。
【破骨細胞の働きを抑制して骨吸収を抑え、骨密度の維持や改善が期待できる注射】
- ビスホスホネート製剤:イバンドロン酸、アレンドロン酸、リクラスト
骨吸収を抑制する代表的な薬で、注射の場合は長期間効果が持続する - デノスマブ製剤:プラリア
RANKLを抑制することで破骨細胞のはたらきを阻害し、骨密度の低下を防ぐ
【骨芽細胞の働きを促進させて骨を作る注射】
- テリパラチド製剤:テリパラチドBS、テリボン
骨を作る骨芽細胞を刺激し、新しい骨の形成を促進する - ロモソズマブ製剤:イベニティ
骨形成の促進と骨吸収抑制の両方の作用がある
※いずれの薬剤も重度の骨粗鬆症に使用されることがある
注射療法は、骨密度が低いなど骨折リスクが高い場合や、内服が副作用のため困難な方に有用とされています。
医師の指導のもと、定期的に骨密度や血液の検査を行いながら、治療を継続していきます。
内服薬による治療
内服薬は日常的に自宅で使用できるため、長期的な骨密度維持に適しています。
主な内服薬は次のとおりです。
【骨密度を上昇させる薬】
- 活性型ビタミンD製剤:エルデカルシトール、アルファカルシドール
カルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける - SERM(サーム)製剤:バゼトキシフェン、ラロキシフェン
閉経後の女性の骨密度低下を抑え、骨折予防に役立つ - ビスホスホネート製剤:アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、ミノドロン酸
骨吸収を抑え、骨密度の維持・改善が期待できます。
【破骨細胞の働きを抑える薬】
- SERM(サーム)製剤:バゼトキシフェン、ラロキシフェン
- ビスホスホネート製剤:アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、ミノドロン酸
内服薬は骨折リスクが高い方に向けて長期的に使用されますが、副作用や服薬の方法に注意が必要です。
また、骨密度の上昇の程度については、体重や運動量やホルモンバランスなど個人差があります。
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骨粗鬆症の治療期間はどのくらい?
骨粗鬆症の治療期間は個人差が大きいのが特徴です。
大腿骨や腰椎で最も低い骨密度の部分が80%を越えてくると、治療薬の強さを弱められることもあります。
しかし、薬を完全に止めると骨密度が低下し始めるため、活性化ビタミンD製剤をはじめ一生涯何らかの内服薬を続けなければならない方が一般的です。
特に、閉経による女性ホルモン低下、加齢による男性ホルモン低下が主な原因となる場合、内服を止めた途端に骨密度の低下が起こってしまいます。
4ヶ月ごとに骨密度検査や血液検査を受けながら、治療を長期にわたって継続することで、骨折リスクの低減や生活の質の維持が可能です。
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骨粗鬆症の治療にかかる費用の目安
骨粗鬆症は保険適応疾患のため、自己負担の割合によって費用が異なります。
また、地域や各医療機関によっても差があります。
目安となる費用は以下のとおりです。
| 検査・治療 | 薬剤費用の目安 |
| 骨粗鬆症の検査 (骨密度+レントゲン+血液検査) | 3割負担の場合:5000~8000円程度 |
| ビスホスホネート製剤 | 3割負担の場合約1,000円 程度 |
| デノスマブ製剤 | 3割負担の場合約8,000円/6か月ごと |
| テリパラチド製剤 | 3割負担の場合自己注射:約5,000円/月 |
| ロモソズマブ製剤 | 3割負担の場合1か月あたり:約15,000円程度 |
※薬剤費用は目安であり、薬剤の種類や薬価改定によって変わります。
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骨粗鬆症でお悩みの方はイノルト整形外科痛みと骨粗鬆症クリニックまで
骨粗鬆症の治療は、患者様一人ひとりの骨密度や年齢、ライフスタイルに応じて適した薬や注射を組み合わせることが大切です。
イノルト整形外科痛みと骨粗鬆症クリニックでは、患者さまの骨密度や生活状況に応じて、複数の治療法から、患者様の状態に応じた適切な治療方針をご案内しています。
薬物療法と運動習慣や食事の改善を組み合わせ、骨折リスクの軽減を目指し、生活の質の維持・改善に取り組んでいます。
どんな治療が必要なのか、自分がどのレベルの骨粗鬆症なのかといったお悩みを抱えている方は、イノルト整形外科痛みと骨粗鬆症クリニックまでご相談ください。
また、LINEによる相談も対応しており、忙しい方でも受診しやすい環境を整えています。
まとめ
骨粗鬆症は、一旦なってしまうと長期的な治療が必要な病気です。
早期に診断し早期に治療を始めることで、将来の生命予後に関わるような重大な骨折を防ぎ、将来の身体に対する自己投資にもなります。
この記事の監修医師
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉
経歴
- 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
- 平成23年 東邦大学 医学部卒
- 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
- 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
- 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
- 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
- 平成30年 渡辺整形外科 副院長
- 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
- 令和6年 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長
