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股関節唇損傷とは?やってはいけないことやおすすめストレッチを紹介

日常生活における何気ない動作の中で、股関節に痛みや違和感を感じた経験はないでしょうか。

このような症状が続いている場合、股関節に何らかの異常が発生している可能性が考えられるため、なるべく早めに検査と治療を受ける必要があります。

本記事では、股関節疾患のひとつである股関節唇損傷の治療法や重症化を防ぐための注意点、治療に要する期間をご紹介します。

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股関節唇損傷とは?

股関節唇損傷とは、股関節の骨頭を覆う関節唇(かんせつしん)が傷ついたり破れたりする疾患です。

関節唇は軟骨組織でできており、股関節の安定性を保つとともに、衝撃を吸収し滑らかな動きをサポートする重要な役割を果たします。

しかし、何らかの要因によって股関節に過度な力が加わると、軟骨組織が損傷し痛みを生じることがあります。

股関節唇損傷の程度はさまざまで、初期の段階では股関節の引っ掛かり感や不安定感、違和感などを覚えることが多く、やがて痛みが生じてきます。

治療をせずに放置しておくと激しい痛みを感じるようになり、やがて股関節の動きが制限され日常生活にも支障をきたすことも少なくありません。

股関節唇損傷の原因

股関節唇損傷はどういった原因で発症するのでしょうか。代表的な要因を4つご紹介します。

加齢

加齢に伴い、関節唇を構成する軟骨組織が劣化しやすくなり、その結果として股関節唇損傷につながります。

本来、軟骨組織は弾力性がありクッションの役割を果たしていますが、年齢とともに弾力性が低下していき損傷しやすくなります。

また、長年にわたって股関節に負担がかかり続けた結果、徐々に関節唇の損傷につながります。

構造上の問題

股関節の形状や構造に問題がある場合、関節唇に過剰な負荷がかかり、損傷のリスクが高まります。

股関節インピンジメント(FAI:Femoroacetabular Impingement)といわれるもので、FAIは股関節の構造異常により、大腿骨頭と寛骨臼(骨盤側の受け皿部分)が正常に動かず、関節内で衝突が生じる状態です。

この衝突が原因で、股関節唇や軟骨に損傷が起き、痛みや可動域の制限を引き起こします。

スポーツ

加齢と並んで多い要因が激しいスポーツや運動によるものです。

特に、サッカーやバスケットボールなどの激しい動きが多いスポーツでは、急な方向転換やジャンプによって股関節に衝撃が加わりやすく、関節唇を損傷する要因になりがちです。

また、野球、水泳、ダンス、バドミントン、格闘技など、股関節を繰り返し深く曲げ伸ばししたりひねる動作が多いスポーツも股関節への負担がかかりやすくリスクが大きいといわれています。

外傷

稀ですが転倒や交通事故などによって、外部から大きな衝撃が加わることも股関節唇損傷の要因となります。

加齢やスポーツによる損傷は徐々に痛みが増してくることが多いですが、外傷が原因の場合には直後に強い痛みを伴うことが多くなります。

関連記事:膝関節の痛みの原因|痛みを和らげるセルフケアや病院の受診目安

股関節唇損傷でやってはいけないこと

股関節唇損傷を悪化させないためには、日常生活の何気ない動作にも注意が必要です。特に、以下の動きは避けるよう心がけましょう。

繰り返すしゃがみ込み

深くしゃがむ行動は、股関節に負担をかけ、関節唇の損傷を悪化させる可能性があります。

特に繰り返し長期間続けることで症状を悪化させるリスクが高まるため、痛みを感じるようであれば無理をせずしゃがむ動作を減らしましょう。

無理なジャンプや急なダッシュ

高い場所からのジャンプや急なダッシュは、股関節に強い衝撃を与え損傷を悪化させる恐れがあります。

特に、準備運動を怠ったり運動の習慣がない人ほどリスクが高まるため注意が必要です。

股関節をねじる動作

水泳の平泳ぎやテニスの回転動作など、股関節を強くねじる動きは関節唇に負担をかけやすいため注意が必要です。

これらの動作を行う場合は、はじめから思いっきり行わず、まずはゆっくりと動かしながら痛みが出ないように関節に負担がかかりにくい正しいフォームを身につけていきましょう。

深いスクワットや負荷の高い筋トレ

深くしゃがむスクワットや重いウエイトを持ち上げる筋力トレーニングは、股関節唇に過剰な負担をかける可能性があります。

そのため、まずは軽めのトレーニングからスタートし、徐々に負荷を上げていきましょう。

無理な可動域を求めるストレッチ

開脚や大きく足を広げる動作など、関節の限界を超えたストレッチは損傷を悪化させるリスクがあります。

ストレッチを行う際には心地よいと感じる範囲内に収め、痛みを感じた場合には無理に動かさないことが大切です。

片足に重心をかけた姿勢

片足に体重をかけ続ける立ち方や歩き方は、股関節にアンバランスな負担をかけます。

日常生活における直立の姿勢や歩行では、体重を均等に分散させることを意識しましょう。

関連記事:変形性膝関節症の主な原因は?女性に多い理由や若年層の発症についても解説

股関節唇損傷におすすめストレッチ

股関節唇損傷の予防やリハビリにおいては、股関節周囲の筋肉を無理のない範囲でほぐすストレッチが効果的です。

腸腰筋のストレッチ

腸腰筋は股関節のスムーズな動きに重要な役割を果たしているため、この筋肉を柔らかくすることで股関節の負担軽減が期待できます。

  1. 床に片膝立ちの姿勢を取る(前脚は90度に曲げる)
  2. 後ろ側の脚を後方に伸ばし、骨盤を前に押し出す
  3. 股関節の前側が伸びているのを感じながら、20~30秒間キープ
  4. 左右の脚を替えて1〜3を繰り返す

 

ポイントとしては、2の段階で脚を後方に伸ばす際に、骨盤を捻ったり横に向いたりするのではなく、真っ直ぐ前方に押し出すことを意識しましょう。

おしりのストレッチ

お尻には太ももから伸びる大きな筋肉が集中しており、股関節を安定的に支える役割があることから、定期的にストレッチを行うことで股関節の機能改善が期待できます。

  1. 仰向けの状態で左足を伸ばし、右膝を立ててクロスさせる(足を組むような姿勢)
  2. 右足を左側にゆっくり倒す
  3. お尻や太ももの付け根が伸びるのを感じながら、20~30秒間キープ
  4. 左右の脚を替えて1〜3を繰り返す

 

足を倒す際に体を捻る姿勢になるため、無理をせずゆっくりと行いましょう。痛みを感じた場合は無理をせず、心地よいと感じる範囲に留めておきます。

股関節唇損傷の治療方法

股関節唇損傷の治療は保存療法から外科的な治療、再生医療などさまざまな選択肢があります。

薬物療法

日常生活へ支障をきたさないよう、痛みや炎症を抑えるために行われるのが薬物療法です。

主にロキソニンなどの痛み止めや湿布が処方されることが多く、理学療法士の施術などを併用するケースが一般的です。

理学療法士の施術

ストレッチや筋力トレーニングなどの理学療法士の施術も代表的な治療方法のひとつです。

股関節周囲の筋力バランスを整えることで症状の改善が期待されますが、誤った運動は股関節への負担を増大させ症状の悪化を招くリスクもあるため、理学療法士の指導を受けながら行う必要があります。

この治療法を行うことで痛みは改善するケースが多いです。

ヒアルロン酸注入

股関節の変形によって摩擦が生じ、それが原因で炎症や痛みを発症している場合にはヒアルロン酸を注入し潤滑性を高め、症状を緩和することができます。

ただし、ヒアルロン酸は徐々に体内に吸収されていくため定期的な注入が必要であるほか、根本的な治療法ともいえません。

体外衝撃波治療

体外衝撃波治療とは、関節部位に特殊な衝撃波を照射し自然治癒力を高める治療法です。

衝撃波には痛みを軽減する効果があるほか、複数の成長因子を産出し損傷した組織の修復を促す効果もあります。

体外衝撃波治療には広範囲に照射する拡散型と、ピンポイントに照射する集束型の2タイプがあり、股関節唇損傷の治療には集束型が用いられることが多いです。

手術療法

損傷の程度が大きく、上記でご紹介した治療法で回復が見込めない場合には、手術療法が選択されるケースもあります。

損傷や関節唇を縫合したり、せり出して関節唇損傷の原因となっている骨の一部を削る手術を行います。

ただし、手術療法は患者様への負担が大きく、入院やリハビリにも時間を要するため、最終的な治療の選択肢として提示されるケースがほとんどです。

再生医療

手術療法に換わる新たな治療法として注目されているのが再生医療です。

患者様自身の脂肪や骨髄から採取した幹細胞を使用し、損傷部位の再生を図る幹細胞治療や、血液から抽出した成分を再び体内に注入し組織修復を促す成長因子療法などがあります。

自己治癒力を高め関節唇の修復を促進する革新的な治療法ではありますが、保険適用外となるため治療費が保険診療と比べると高額になります。

また、関節の損傷度合いによっては再生医療でも回復が難しいケースもあり、そのような場合には手術療法が選択されることもあります。

手術で関節唇を縫合した場合は、術後に再生医療を行うことでより手術の治療効果が高まることが期待できます。

股関節唇損傷はどのくらいで治る?

股関節唇を損傷した場合、治療が完了し日常生活に戻るまではどの程度の期間を要するのでしょうか。

損傷の程度や治療法、患者様の年齢や体質などによっても治療期間は変わってきますが、軽症の場合は数週間から数ヶ月程度の保存療法を行いながら徐々に日常生活に復帰していきます。

一方、重度の損傷で手術療法が必要な場合には、1~2週間程度の入院の後、少なくとも数カ月のリハビリを継続する必要があります。

また、股関節の機能が回復し通常の生活に戻るためには、数ヶ月から1年程度のリハビリやトレーニング期間を要することもあります。

股関節の痛みでお悩みの方はイノルト整形外科まで

股関節に違和感や痛みがある場合、今回ご紹介した股関節唇損傷の可能性が考えられます。

しかし、これ以外にもさまざまな股関節の疾患があり、正確な診断を行うためには医療機関で精密検査を受ける必要があります。

また、症状や関節の状態によっても適切な治療法は異なり、特に今回ご紹介した体外衝撃波治療や再生医療、手術療法などは対応できる医療機関も限られています。

股関節の状態を正確に把握し、幅広い選択肢の中から自分に合った治療法を選びたいという場合には、イノルト整形外科へお気軽にご相談ください。

イノルト整形外科では関節専門外来を設置しており、痛みの原因を正確に診断し最適な治療法を提案させていただきます。

最新の検査機器や医療設備も完備しており、体外衝撃波治療や再生医療などにも対応できます。

関連記事:体外衝撃波治療の効果とデメリットは?|適応疾患や頻度についても解説

まとめ

股関節唇損傷は加齢や激しい運動、外傷などが原因で発症することが多く、痛みを放置しておくと関節が変形し可動域が制限される可能性もあります。

重症化を防ぐためにも、股関節に痛みや違和感がある場合には信頼できる医療機関を受診し早めに治療をスタートすることが大切です。

股関節唇損傷の治療法は理学療法士の施術や薬物療法、手術療法などが一般的ですが、近年では体外衝撃波治療や再生医療といった新たな治療法も確立されています。

幅広い選択肢の中から自分に合った治療法を選びたいという場合には、ぜひイノルト整形外科へご相談ください。

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この記事の監修医師
藤沢駅前 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック  院長 渡邉 順哉 ■詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

経歴

●東邦大学 医学部 卒業 ●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科 ●イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長