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股関節の痛みの原因は?女性特有の痛みについても解説

太ももから股関節のあたりに痛みを感じる場合、さまざまな疾患を発症しているサインの可能性があります。

特に、男性と女性を比較した場合、骨盤の形状やホルモンバランスなどが異なるため、女性のほうが股関節の痛みを発症するリスクは高い傾向もあります。

なぜ股関節に痛みが現れるのか、考えられる原因と疾患や治療法、痛みを改善するためのポイントなどを解説します。

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股関節の構造

股関節は人間の身体で最も大きな関節の一つであり、下半身の運動や体重を支えるために重要な役割を果たしています。

股関節は、骨盤の寛骨臼と大腿骨の先端部分である大腿骨頭から形成されています。

寛骨臼はカップのような形をしており、球状の大腿骨頭を包み込むことで股関節の安定性とスムーズな動きを実現しています。

また、股関節は関節包と靭帯によっても保護されています。

関節包は関節を包む厚い膜で、関節液を分泌して関節の滑りを良くし、摩擦を減少させる役割を果たします。

靭帯は骨と骨を繋ぐ結合組織で、股関節の安定性を維持するために重要な役割を果たしています。

このように、ヒトの股関節はさまざまな骨や組織が複雑に絡み合いながら形成されているのです。

股関節の痛みの原因

股関節に痛みを感じる場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。

股関節自体の変形

加齢や遺伝、過度な運動によって負荷がかかりすぎると、変形性股関節症などの疾患を発症し股関節そのものの形状が変化することがあります。

変形の程度や部位によっては激しい痛みが生じるばかりではなく、正常な可動域が失われ日常生活にも支障をきたすことがあります。

軟骨の摩耗

関節の内部には軟骨が存在し、これがクッションのような役割を果たしています。

しかし、加齢や体重の増加、運動のしすぎなどによって軟骨が摩耗していくと、クッションの役割を果たすものがなくなり骨同士が直接接触するようになります。

その結果、激しい痛みが生じることがあります。

筋肉や腱の緊張や硬直

股関節の周りにある筋肉や腱は、関節を安定的に保つ役割を果たしています。

しかし、筋肉や腱が緊張し硬直してしまうと、柔軟性が失われ関節を安定的に固定できなくなり、痛みを引き起こすことがあります。

特に、筋肉の酷使や無理な姿勢、運動・ストレッチ不足などが原因となるケースが少なくありません。

関節唇の損傷

関節唇は股関節にある軟骨の一部で、股関節を安定させる役割を持っています。

特に、急な方向転換や激しい動きをするスポーツなどで日常的に股関節を酷使している方の場合、関節唇を損傷するケースが多く痛みや不安定感が生じることがあります。

関節包の炎症

関節包は関節液を保持し関節を滑らかに動かす役割を果たす組織です。

外傷や感染症、股関節の酷使などが原因で股関節に炎症が生じると、痛みの原因となることがあり、重症化すると股関節の可動域も狭くなる可能性もあります。

靭帯の伸びや損傷

股関節の周囲にある靭帯は関節を安定させる役割を果たしています。

激しい運動や事故・転倒などで股関節が不自然な方向に強く引っ張られると、靭帯が伸びたり損傷したりすることがあり、その結果股関節の不安定感や痛みが生じます。

関連記事:変形性膝関節症の治し方とは|痛いのに放っておくとどうなる?

股関節の痛みの原因となる病気・疾患

股関節の痛みを放置しておくと、重症化しさまざまな病気や疾患を発症するケースも少なくありません。

どういった疾患のリスクが高まるのか、一例をご紹介しましょう。

変形性股関節症

軟骨がすり減った状態になると股関節に激しい痛みが生じますが、これを放置しておくと変形性股関節症を発症する可能性があります。

変形性股関節症は骨同士が接触することで関節の形が変形し、強烈な痛みや関節の硬直、可動域の制限などが生じる疾患です。

主に加齢に伴う股関節の酷使や、急激な体重の増加、遺伝的要因などが原因となって発症します。

臼蓋形成不全

臼蓋形成不全とは、股関節の受け皿部分にあたる臼蓋が大腿骨頭を十分に覆いかぶさっていない状態を指します。

この状態では、大腿骨頭が骨盤にホールドされず不安定な状態になるため、股関節にかかる負担が増大します。その結果、変形性股関節症などの疾患を引き起こしやすくなります。

大腿骨頭壊死

大腿骨頭壊死とは、大腿骨の先端部分である大腿骨頭への血流が途絶え、骨組織そのものが壊死する疾患です。

主に外傷やアルコールの過剰摂取、ステロイド薬の長期服用などが主な原因として挙げられ、壊死が進行すると骨が崩壊し関節の変形と強烈な痛みを伴います。

先天性股関節脱臼

先天性股関節脱臼は、生まれつき股関節の形成異常があり、大腿骨頭が脱臼してしまっている状態です。

幼少期に適切な装具治療などを行なわずに放置してしまうと、骨盤まわりの正常な発育が妨げられ、その結果として変形性股関節症を発症し、強い痛みが発生することがあります。

グロインペイン症候群

グロインペイン症候群とは、股関節やその周辺の筋肉、腱、靭帯に現れる痛みや違和感などの総称であり、「鼠径部痛症候群」ともよばれます。

特にアスリートが発症するケースが多く、過度な運動や不適切なフォーム・動作による負荷の増大が主な原因となります。

梨状筋症候群

梨状筋症候群は、梨状筋という臀部にある筋肉が坐骨神経を圧迫し、痛みや痺れを引き起こす疾患です。

梨状筋が硬直すると、股関節や臀部、太ももに痛みが広がることがあります。

特にデスクワークで長時間同じ着座姿勢をとっていたり、股関節を無理に動かすことで症状が悪化します。

女性に多い股関節の痛みの原因

股関節の痛みは性別によってもその原因が異なる場合があります。

特に女性の場合、以下のような特有の原因が痛みを引き起こしていることが少なくありません。

臼蓋形成不全

女性に臼蓋形成不全が多い理由としては、男女の骨格の違いが挙げられます。

女性は男性に比べて骨盤が広いため、股関節の受け皿部分にあたる臼蓋が浅い傾向が見られます。

大腿骨頭の受け皿が浅いと臼蓋形成不全を起こしやすく、それに伴い痛みが現れることも少なくありません。

変形性股関節症

臼蓋形成不全が深刻化すると股関節への負担が増大し、変形性股関節症の発症リスクも高まります。

特に中高年の女性は、​​女性ホルモンの減少や体重増加などに伴い、変形性股関節症が深刻化しやすくなります。

ホルモンの影響

女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨や関節の健康維持に重要な役割を果たしています。

しかし、閉経を迎えるとエストロゲンの分泌量が減少し、骨密度の低下や関節の軟骨がすり減りやすくなるなどの影響が出てきます。

その結果、股関節の痛みが発生するリスクが高まります。

股関節から膝にかけての痛みの原因

股関節だけでなく、それより下の太ももから膝のあたりにかけて痛みが現れるケースもあります。この場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。

変形性股関節症が膝の痛みを引き起こすことも

変形性股関節症によって股関節の可動域が制限されたり痛みを感じるようになると、膝関節が動きで痛みをカバーし強い負荷がかかります。

その結果、股関節から下の部位にかかる荷重のバランスが崩れ痛みの原因となることがあります。

最悪の場合、変形性膝関節症を発症し、股関節だけでなく膝関節の可動域が狭くなったり、関節の曲げ伸ばしができず歩行そのものが困難になる可能性もあります。

大腿四頭筋の問題

太ももを構成する外側広筋と中間広筋、内側広筋、大腿直筋の4つの筋肉を大腿四頭筋とよびます。

大腿四頭筋は太ももの曲げ伸ばしはもちろん、股関節の安定や曲げ伸ばしにも大きく寄与している筋肉です。

精密検査などの結果、股関節や膝関節そのものに異常が見られない場合には、大腿四頭筋が損傷していたり何らかの異常が発生している可能性もあるのです。

股関節が右だけあるいは左だけ痛くなるのはなぜ?

股関節の痛みは左右対称に現れることもあれば、右側あるいは左側のいずれかに偏って症状が現れるケースも少なくありません。

どちらか一方に症状が現れる原因は、ケガや外傷によって一方にのみダメージが加わることはもちろんですが、左右の股関節の発育に左右差が生じてしまった場合や、つねにどちらか一方に体重をかける癖がついていたり、椅子に座るときに脚を組む癖があるなど、日々の何気ない行動・動作も原因のひとつとして考えられます。

関連記事:再生医療とは?適応となる整形疾患や費用について

股関節の痛みの治し方

股関節の痛みを改善するためには、どのような治療法が有効なのでしょうか。代表的な治療法の例をいくつかご紹介します。

保存療法

保存療法とは、外科手術を行うことなく痛みの緩和や機能改善を目指す治療法です。

関節の痛みが感じられる場合には、まず保存療法が選択されるケースが非常に多く、もっとも基本的な治療法といえるでしょう。

具体的には痛み止めや湿布の処方、リハビリ、ハイドロリリース、体外衝撃波治療、再生医療などが保存療法にあたります。

再生医療

再生医療には、自己の脂肪などを利用した幹細胞治療や、自己の血液を使用したPRPや成長因子療法などがあります。

変形性股関節症や関節唇損傷に起こっている炎症を沈静化、一部修復してくれて、それ以上の悪化を防ぐため、手術を避けたい方にとってはとても良い選択肢です。

体外衝撃波治療

体外衝撃波という強力なエネルギー波を患部に当てることにより、即効性の鎮痛効果と損傷した組織の修復を行なってくれる治療器です。

泌尿器科の分野では体外衝撃波治療は尿路結石の破壊目的で治療として使われています。

ハイドロリリース

ハイドロリリースは筋性の痛みに対して、エコー検査で確認しながら生理食塩水などの体内に入れても大丈夫な水を注射し筋膜や神経の周囲を剥がすことにより滑走性を改善し痛みを解消しやすくなります。

理学療法士のリハビリ

リハビリも外科手術を行わない治療法ですが、主に股関節の筋力強化や柔軟性の向上、関節の安定性向上などを目的に行われます。

具体的にはストレッチや筋力トレーニングなどが代表的です。

股関節の痛みが比較的軽度で、疾患も深刻化していない場合には保存療法と物理療法を組み合わせた治療法が有効な選択肢となります。

手術療法

保存療法や物理療法で改善が見られない場合や、股関節の変形や損傷が進行している場合に検討されるのが手術療法です。

人工股関節置換術や寛骨臼回転骨切り術、股関節鏡視下手術などが代表的で、これにより股関節の機能を回復し、従来の痛みのない日常生活に戻れる可能性があります。

生活習慣の改善

さまざまな治療法によって股関節の痛みが改善された後も、症状を再発させないためには生活習慣を見直すことが大切です。

たとえば、体重の管理や適度な運動、正しい姿勢を保つことはもちろんですが、重いものを持ちながらの階段の昇降は避けるなど、股関節にかかる負担を減らす工夫も必要です。

股関節の痛みならイノルト整形外科まで!

股関節の痛みの原因はさまざまで、症状が現れている部位や痛みの程度が同じであったとしても根本的な原因や疾患は異なるケースがあります。

外傷とは異なり、目で見ただけで正確な状態や原因を判断することは難しいため、早めに整形外科を受診することが大切です。

イノルト整形外科では、股関節をはじめとしたさまざまな部位の痛みを治療する関節専門外来や、運動によって生じたケガに特化したスポーツ整形外科、最新の治療法として注目されている再生医療に特化した専門外来を設置しており、高度な知見をもった専門医が治療を担当します。

今回ご紹介した保存療法はもちろんのこと、手術療法も必要に応じて適切な医療機関に紹介が可能なため、症状が深刻化した患者様にも最適な治療法をご提案できます。

症状が深刻化し「治らないのではないか」と不安を抱いている方や、他院で治療を受けたものの症状が改善されなかったという方も、まずは一度イノルト整形外科までご相談ください。

関連記事:PRP(多血小板血漿)療法とは?効果や費用について解説

まとめ

股関節の痛みは関節自体の変形や損傷が原因となっているケースもあれば、軟骨の摩耗や筋肉の硬直、腱の損傷などさまざまな原因が考えられ、痛みを放置しておくと重篤な疾患につながる可能性もあります。

特に女性の場合は、骨盤の形状や女性ホルモンの影響などにより、男性に比べて股関節の痛みを発症しやすい傾向が見られます。

慢性的な痛みに悩まされている方や、最近股関節に違和感を覚えるようになった方は、できるだけ早めに整形外科を受診することがおすすめです。

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この記事の監修医師


藤沢駅前 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック  院長 渡邉 順哉

■詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

経歴

●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長