膝に水が溜まるとはどういう状態?原因や症状について解説
加齢や体重の増加、膝の酷使などによって、膝に水が溜まり激しい痛みを伴うことがあります。
このような症状は決して珍しいものではなく、一度は耳にしたことがある方も多いと思います。
しかし、これを放置しておくと重症化し日常生活に支障をきたす危険もあるのです。
本記事では、膝に水が溜まるとはどういった状態なのか、症状や原因について詳しく解説します。
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膝に水が溜まるとはどういうこと?
そもそも、膝に水が溜まるとはどのようなことなのでしょうか。仕組みや水が溜まるメカニズムについて簡単に解説しましょう。
私たちの関節の内部には関節液とよばれる液体が存在しており、関節をスムーズに動かす役割を果たしています。
関節液を分泌しているのは滑膜とよばれる組織であり、滑膜は古くなった関節液を吸収・排泄する役割も果たしています。
しかし、何らかの理由によって滑膜に炎症が生じると、関節液の分泌と吸収のバランスが崩れてしまうのです。
「膝に水が溜まる」とは、関節液が過剰に分泌された状態のことであり、痛みや腫れなどの症状をもたらします。
膝関節に存在する関節液は通常1〜3ml程度ですが、最大で100ml以上も膝に水が溜まる場合もあります。
膝に水がたまる原因
膝に水が溜まるのは、滑膜に炎症が生じ関節液の分泌と吸収のバランスが崩れるためです。
その引き金になる原因として以下などの疾患が考えられます。
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 関節内遊離体(関節ねずみ)
- 痛風と偽痛風
- 関節リウマチ
- 前十字靭帯損傷
ここでは、これらの疾患について解説しましょう。
変形性膝関節症
変形性膝関節症とは、膝関節にある軟骨や半月板といった組織が摩耗する疾患です。
膝関節が本来の機能を発揮できなくなり、滑膜に物理的なダメージが加わって炎症を引き起こします。
変形性膝関節症を発症する原因は、半月板損傷や軟骨損傷、加齢や筋力の低下、体重過多、膝の酷使などさまざまなものが考えられます。
半月板損傷
半月板損傷は、膝の関節内にある半月板という組織が損傷する疾患です。
膝に大きな負担がかかる動きやスポーツのしすぎ、無理な体重移動だけでなく、加齢に伴い日常生活の動作だけで発症するケースも少なくありません。
滑膜の炎症も併発し、膝に水が溜まることがあります。
関節内遊離体(関節ねずみ)
関節内遊離体とは、関節の内部に軟骨や半月板のかけらが浮遊して動き回ることで様々な症状を引き起こす疾患です。
かけらの位置によって関節が固まったり、激痛が走ることもあれば、時間が経過すると痛みが消え去ることもあります。
欠片が滑膜に刺激を与えることで炎症が起こり、膝に水が溜まる原因になるケースも少なくありません。
痛風と偽痛風
尿酸の異常な蓄積によって起こる痛風や、関節内のピロリン酸カルシウムの結晶によって起こる偽痛風も滑膜の炎症の引き金となり、関節液が溜まります。
関節リウマチ
関節リウマチは免疫の異常によって、関節の痛みや腫れなどを引き起こす疾患です。
本来、自分の体の一部の滑膜にまで免疫細胞が攻撃してしまうことで炎症を引き起こし、膝に水が溜まる引き金になります。
前十字靭帯損傷
前十字靭帯損傷は、膝の安定性を維持するために重要な役割を果たす、前十字靭帯が損傷する疾患です。
スポーツ中に急激な方向転換や膝への外傷が原因で損傷することが多く、放置すると不安定性から膝に水が溜まる原因になります。
関連記事:膝の痛みの場所別原因まとめ|突然ズキズキ痛むのは危険?
膝の水が溜まったときの症状
膝関節の疾患にはさまざまなものがあり、現れる症状はそれぞれ異なります。
膝に水が溜まった場合、どういった症状が現れるのでしょうか。
- 膝の腫れや張り
- 違和感や異物感
- 動作時の痛み
- 安静時に痛みが出ることも
- 関節可動域の制限
ここではこれらの症状について解説しましょう。
膝の腫れや張り
特に多く見られる症状が膝関節の腫れや張りです。膝の形が通常よりも膨らんで見え、触れると柔らかく弾力があります。
また、腫れや張りがある部分に触れると、熱っぽさを感じることもあります。
違和感や異物感
膝の水がたまると、膝の内部に違和感や異物感を覚えることもあります。
まるで膝の内部に何かが詰まっているような感覚があります。
動作時の痛み
膝を動かしたり、負荷をかけたりすると、水が溜まった膝関節に痛みを感じることがあります。
特に、階段の昇り降りや椅子から立ち上がるとき、走ったときなどに症状が現れることが多く、痛みの程度も個人差があります。
安静時に痛みが出ることも
滑膜炎が悪化すると、水が溜まって腫れたり、動作時だけでなく安静時にも痛みが感じることがあります。
椅子に座っているときやベッドに横になっているときなど、つねに痛みが感じられ寝付けなくなるケースも少なくありません。
関節可動域の制限
膝に水が溜まると膝の可動域が制限され、膝を曲げたり伸ばしたりする際に、普段よりも動かしにくいと感じるようになります。
たとえば、膝を折り曲げる正座やしゃがむ姿勢ができなくなったり、さらに症状が悪化すると平坦な場所を歩行するのも困難になるケースもあるでしょう。
関連記事:関節リウマチの症状は膝に出ることもある?変形性膝関節症との違いとは
膝に水が溜まったときの治療法
膝に水が溜まり症状が悪化すると日常生活にも支障をきたす場合があることから、早めの治療が不可欠です。
どういった治療法があるのか、代表的な5つの方法は以下の通りです。
- 水を抜く
- 注射
- 手術
- 再生医療・体外衝撃波
- リハビリ
ここでは代表的な治療方法をご紹介しましょう。
水を抜く
痛みや腫れを軽減し、関節の可動域を改善するための応急処置として関節液を抜く方法があります。
膝関節内に針を刺し、採血の時のように関節液を抜きます。
短時間で処置は完了しますが、水を抜いただけでは関節液が溜まる原因は解決しません。
水を抜くのは根本的な治療にはつながらないため、あくまでも応急的な処置といえます。
注射
滑膜の炎症を抑えるために、関節内にヒアルロン酸やステロイド注射を打つことがあります。
水を抜くだけではなく、注射を打つことで炎症の緩和や関節の機能改善が期待されます。
ただ、ステロイドは炎症を落ち着かせてくれる代わりに、関節内の正常の組織も脆くさせてしまうリスクがあるのです。
そのため、最近はあまり使用することが推奨されていません。
再生医療のPRPや成長因子療法やエクソソームなどの治療法は、ステロイドのような副作用がなく強力に滑膜の炎症を抑え、関節液の溜まりを防ぐ効果が期待されます。
手術
変形性膝関節症や半月板損傷などが重症化し、他の治療法では効果が見込めないと医師が判断した場合には、外科手術が検討されることもあります。
手術の方法は、さまざまです。
変形性膝関節症や関節リウマチに対しては、人工関節置換術などを行います。
半月板損傷に対しては関節鏡を使った縫合術や切除術、前十字靭帯損傷に対しては再建手術などがあります。
再生医療・体外衝撃波
再生医療とは、患者様自身から抽出した細胞を培養し、損傷した組織を修復する最新の治療法です。
基本的には自由診療となるため保険は適用できませんが、外科手術に比べるとメスを入れる必要がないため患者様の負担は少なくて済みます。
また、体外衝撃波も再生医療と同様に、最新の治療法のひとつです。
体外衝撃波は、高エネルギーの特殊な衝撃波を照射して慢性的な炎症を改善し、組織の修復を図ることができます。
ただし、すべての患者様に再生医療や体外衝撃波は適用できるとは限らず、症状の進行度合いや状態に応じて見極めが必須です。
リハビリ
水を抜いた後や他の治療法と併用して、リハビリテーションが行われることがあります。
リハビリでは、筋力や関節の可動域を回復し、膝の機能を改善するために筋力トレーニングやストレッチが行われます。
関連記事:【膝の違和感】膝を伸ばしたときに出る痛み以外の症状と原因について解説
太りすぎで膝に水が溜まる?
「膝に水が溜まるのは太り過ぎが原因である」ということを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
上記でも紹介した通り、膝に水が溜まる原因はさまざまですが、そのひとつに体重過多も含まれています。
体重がわずか1kg増えただけでも、膝にかかる負担は3〜7倍にまで増えるといわれています。
そのため、短期間に体重が3kg、5kg増えただけでも膝は負荷に耐えきれなくなるのです。
そして軟骨や半月板が損傷したりして炎症を起こし、関節に水が溜まることもあるります。
膝に水がたまったときの自然治癒までの期間は?
「膝に水が溜まったとしても、時間の経過とともに自然治癒するのではないか?」と考える方もいます。
これまでもご紹介した通り、膝に水が溜まるのは滑膜の炎症が原因であるため、炎症そのものが治らないと膝の水も自然治癒することはありません。
たとえば、「膝の水を抜くとクセになる」という口コミを耳にしたことがある方も多いと思いますが、これは炎症の根本原因を治療せず応急処置を繰り返しているためです。
根本原因を治療せず水抜きを繰り返しているだけでは、一向に膝に水が溜まるのは改善しません。
膝に違和感や痛み、腫れなどがあり、水が溜まっている可能性がある場合には、できるだけ早めに整形外科を受診し治療をスタートさせることが大切です。
関連記事:PRP療法の注射が膝や股関節に効果的な理由とは?副作用はある?
膝に水が溜まったらイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックへご相談ください
膝に水が溜まるという症状は決して珍しいものではなく、多くの整形外科で診察や治療が可能です。
しかし、治療法にはさまざまな種類があり、特に外科手術や再生医療、体外衝撃波などは対応できる整形外科クリニックも限られています。
膝関節の状態を正確に診断し、最適な治療法を選択するためにも、できるだけ多くの治療法に対応しているクリニックを選ぶことがおすすめです。
イノルト整形外科では関節専門外来を設置しており、変形性膝関節症や半月板損傷、前十字靭帯損傷、関節リウマチなどさまざまな疾患の治療に対応しています。
また、再生医療や体外衝撃波治療など最新の治療法も選択できるため、膝関節の痛みや違和感を感じている方はお気軽にご相談ください。
まとめ
膝に水が溜まるのは関節内部に炎症が生じているのが直接的な原因であり、炎症を抑えることが根本的な治療につながります。
水を抜くことで一時的に痛みは低減しますが、根本的な解決にはならず再発するおそれもあります。
長年にわたって膝関節の痛みに悩まされている方や、膝に水が溜まる症状を繰り返している方は、症状が悪化し日常生活に支障をきたすかもしれません。
できるだけ早めに信頼できる整形外科を受診し、治療を始めましょう。
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藤沢駅前 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長 渡邉 順哉
経歴
●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長