膝の痛みの場所別原因まとめ|突然ズキズキ痛むのは危険?
膝の痛みはさまざまで、ズキズキした強烈な痛みや押しつぶされるような圧迫感がある痛み、さらには膝の外側や内側など特定の部分だけに症状が現れることもあります。
なぜこのような痛みが現れるのか、それぞれの部位に応じた考えられる疾患について詳しく解説します。
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膝の痛みの原因とは
膝に痛みを覚えたとき、考えられる原因は主に以下の5つがあります。
- 半月板や軟骨の損傷
- 関節組織の炎症
- 骨の損傷(骨折・亀裂など)
- 筋肉や腱の損傷・断裂または付着部炎
- 人体の損傷または断裂
ここでは、膝の痛みがある場合に考えられる主な原因について詳しく解説していきます。
半月板や軟骨の損傷
まず第一に疑わないといけなく、膝の痛みとしてとても頻度が高いものになります。
半月板とは、膝関節の中を一周取り巻いているクッションであり、膝にかかる体重を分散させ軟骨を守ると同時に、膝を安定的に固定する役割も果たしています。
半月板と膝関節の軟骨は、加齢や体重増加、外傷、激しい運動などによって損傷することが多いです。
特にバスケットボールやバレーボールなどジャンプをするスポーツ、サッカーやテニスなど急なターンやストップを繰り返すスポーツなども発症リスクが高い傾向があります。
関節組織の炎症
膝関節の内部が炎症することで痛みを覚えるケースもとても多いです。
炎症の原因はさまざまですが、特に多いのが変形性膝関節症です。
半月板損傷や膝の軟骨がすり減ることで関節液が大量に分泌され、これに含まれる物質によって炎症が悪化します。
関節組織の炎症を放置しておくと関節の曲げ伸ばし時に痛みが生じ、やがて関節そのものが変形するなどの後遺症が残るケースもあります。
関連記事:【膝の違和感】膝を伸ばしたときに出る痛み以外の症状と原因について解説
骨の損傷(骨折・亀裂など)
怪我をした際に、強烈な痛みや腫れを伴うときは骨折の可能性があり、治療をせず放置しておくと膝関節が変形するなどの後遺症が残るおそれもあります。
そのため、膝に強烈な痛みがある場合には医療機関を受診し、骨に異常がないか検査を受けることが大切です。
また、中年以降の場合、骨粗鬆症が原因で骨折しやすくなってしまっている場合もあります。
筋肉や腱の損傷・断裂または付着部炎
骨に異常が認められなくても、筋肉や腱などが損傷したり断裂したりすることで強烈な痛みを覚えることがあります。
いわゆる「肉離れ」は筋断裂の一種で、激しいスポーツをしたときや、膝に大きな負荷がかかったときなどに発症しやすいです。
ときには歩行が困難になるほどの痛みが生じることもあります。
また、スポーツなどで同じ動作を繰り返すことで、筋肉や腱が骨に付く付着部で炎症を起こす場合もあります。
靭帯の損傷または断裂
靭帯とは関節部分の骨をつなぐ役割を果たしている組織です。
スポーツ中の損傷がほとんどですが、内側側副靭帯や前十字靱帯の損傷が頻度的には多い靱帯損傷です。
靭帯が損傷すると「ブツッ」という大きな音がした後、強烈な痛みが走り競技続行が不能になったり、患部が腫れ上がってくることも少なくありません。
骨折にも似た症状が見られるため、早期にMRIなど精密検査と治療が必要です。
膝の痛みの場所から考えられる原因
一口に膝の痛みといっても部位に応じて痛みの特徴は異なります。
部位ごとに発症しやすい疾患と、どのような痛みが出るのかを解説しましょう。
膝の内側
膝を正面から見たとき、左右の内側部分のみに痛みが生じる場合に考えられるのが以下の疾患です。
内側半月板損傷
内側の半月板を損傷したときも、膝の内側に痛みが生じることがあります。
はじめのうちは違和感や突っ掛かり感、軽い痛みが現れ、放置すると徐々に半月板や軟骨が傷み、変形性関節症へと進行していくことも少なくありません。
変形性膝関節症
膝の関節内部にある半月板や軟骨が損傷し、痛みや腫れを引き起こす疾患を変形性膝関節症とよびます。
初期症状は膝の違和感や軽い痛みが続きますが、進行し重症化すると膝の関節そのものが変形することもあります。
加齢や体重の増加、スポーツなどによる怪我など、関節への長期間の負担により引き起こされるケースが多いです。
膝の内側のみに痛みを感じることが多いのは、もともと日本人はO脚が多く、膝の内側に負担が集中しやすいためです。
鵞足炎
鵞足とは、膝の内側で関節の隙間よりやや下側に位置する三つの筋肉(半腱様筋、半膜様筋、半腱様筋)の腱が付着する部位です。
鵞足炎は、この鵞足部での腱の付着部が炎症を起こす疾患であり、筋肉の柔軟性の低下やスポーツでの使い過ぎによって発生することがあります。
内側側副靭帯損傷
内側側副靭帯は膝の内側にある靭帯で、膝の安定性を維持する役割があります。
膝が外に曲げられるような強力な外力がかかった際に靭帯が損傷するケースが多く、膝の内側を押したときに痛みを感じたり、腫れ、熱感が現れることもあります。
膝の上
膝の上部(太ももに近い部分)に痛みが見られる場合、以下の疾患が考えられます。
大腿四頭筋の腱炎もしくは肉離れ
大腿四頭筋とは太ももの前面にある4つの筋肉で構成された部位であり、これらと関節部分をつなぐ腱が炎症を引き起こす疾患を大腿四頭筋腱炎とよびます。
痛みの特徴としては、強力な力で抑え込まれたような圧痛が見られることが多いです。
大腿四頭筋腱炎は「ジャンパー膝」ともよばれ、その名の通りバスケットボールやバレーボールなどジャンプをすることの多いアスリートが発症しやすい傾向が見られます。
また、着地などで急激に強力な外力が大腿四頭筋に加わった場合、肉離れを起こす場合があります。
膝の外側
膝を正面から見たとき、左右の外側部分のみに痛みが生じる場合に考えられるのが以下の疾患です。
外側半月板損傷
半月板は膝の内側と外側にそれぞれ1枚ずつ存在します。
このうち、外側の半月板は急激な回転運動や膝への外部からの圧力がかかった際に損傷することが多く、痛みや腫れ、関節の不安定感などが症状として現れます。
日本人の場合は内側の半月板損傷が多く外側半月板損傷の頻度は比較的少ないです。
外側半月板のみが単独で損傷することは少なく、前十字靭帯なども一緒に損傷するケースが多いです。
腸脛靭帯炎
腸脛靭帯とは、大腿骨から脛骨にかけて伸びる帯状の組織であり、この部分に炎症が起こる疾患を腸脛靭帯炎とよびます。
腸脛靭帯が膝の外側で脛骨に接触を繰り返すことで発症しやすく、特に長距離ランナーや自転車競技の選手などによく見られるため「ランナー膝」ともよばれます。
外側側副靭帯損傷
外側側副靭帯は、膝の外側に位置する靭帯で、膝の安定性を維持する役割があります。
膝外側側副靭帯損傷は、スポーツ中の怪我や膝に対する外部からの強い衝撃によって膝が内側に曲がる力がかかった際に発症しやすく、膝の外側の痛みや腫れが現れます。
膝の下
膝の下(脛に近い部位)に痛みを感じる場合、考えられる疾患は以下の通りです。
膝蓋腱炎
膝蓋腱は膝蓋骨(膝の骨の前面にある骨)から下脚に続く腱で、この部分に炎症を起こす疾患を膝蓋腱炎とよびます。
ジャンパー膝ともよばれ、膝の頻繁な曲げ伸ばしやジャンプなど過度な負荷がかかると炎症を起こしやすく、痛みや腫れが現れることがあります。
オスグッド・シュラッター病
オスグッド・シュラッター病は、膝蓋腱が膝蓋骨に結合する筋肉の柔軟性が失われ起こり、炎症が生じることによって引き起こる疾患です。
成長期の子どもに多く見られ、膝の皿のすぐ下部分に痛みや腫れが生じるケースがほとんどです。
膝蓋下脂肪帯炎
膝蓋下脂肪帯は膝蓋骨の下にある組織で、関節にかかる衝撃を吸収する役割を果たしています。
膝蓋下脂肪体炎を発症すると、膝を左右から押したときに痛みを感じたり腫れが見られ、膝への過度な圧力や急激な動きが原因となり組織に炎症を起こすことで発症します。
関連記事:膝の内側が痛い原因を解説|考えられる疾患や病院での治療法は?
膝の内部
膝関節組織の内部に痛みを感じる場合には以下の疾患が考えられます。
膝蓋大腿関節炎
膝関節の中で、いわゆる”膝の皿”とよばれる膝蓋骨と大腿骨とが接する部分を膝蓋大腿関節とよびます。
この部分の軟骨がすり減り炎症が起きる疾患が膝蓋大腿関節炎で、変形性膝関節症の一種です。
初期症状は軽い痛みや膝に引っかかりを感じたり、曲げ伸ばしの際に音が鳴ったりと違和感を覚えることが多いですが、重症化すると水が溜まり腫れてくることがあります。
立ったりしゃがんだり、高い段差を昇り降りするときに特に痛みを生じるのが特徴です。
前十字靭帯損傷
前十字靭帯は膝関節内にある靭帯で、大腿骨と脛骨を結び膝の安定性を維持する役割を果たしています。
多くの場合スポーツ中に、急激な方向転換や膝への衝撃が原因で発症し、直後から競技続行はできません。
主な症状として膝の腫れや痛み、膝が抜けるような不安定感があります。
ほとんどの場合、手術が必要になるため、整形外科でMRIの精密検査と治療が必要になります。
関節リウマチ
関節リウマチは、自己免疫性の炎症性関節疾患であり、免疫系の異常によって本来正常な組織が攻撃される疾患です。
体内のさまざまな関節に痛みや腫れが起こり、放置しておくと関節が徐々に炎症によって破壊されていく場合があります。
膝関節に現れるリウマチは、関節内部が痛むケースが多いです。
膝の後ろ
膝関節の後ろ側に痛みを感じる場合には以下の疾患が考えられます。
滑液包炎
滑液包とは関節の衝撃を緩和する特殊な液体を包んでいる袋であり、この部分に炎症を引き起こす疾患を滑液包炎といいます。
痛みのほかに腫れが見られることが特徴で、熱をもつケースも少なくありません。
滑液包炎は膝の酷使や外傷、膝に負担のかかる姿勢を繰り返すことで発症する場合がほとんどです。
ガングリオン
ガングリオンとは、関節包という関節を包んでいる膜の一部が、関節に加わった強い圧などによって風船状に膨らんでできます。
多くの場合は膝の後ろ側にできますが、違和感や腫れている感覚で気付き、まれに神経や血管を圧迫し痛みを生じる場合もあります。
後十字靭帯損傷
後十字靭帯も膝関節内に位置する靭帯で、前十字靭帯と同様に膝の安定性をサポートしています。
後十字靭帯損傷は、膝前方からの強打や強い直接の衝撃によって発症しやすいです。
発症頻度そのものは前十字靭帯損傷に比べると少なく、交通事故などスポーツ以上のかなり強い衝撃により発症します。
主な症状としては、膝の腫れや痛み、不安定感などがありますが、重度の場合は手術が必要となります。
膝が痛いときの対処法
膝に痛みを感じたとき、少しでも症状を軽減するにはどういった対処が有効なのでしょうか。
腫れや熱を持っていたらアイシング
膝の痛みと同時に腫れや熱感が見られる場合には、アイスパックや冷却パッドを患部に当て、十分冷やします。
患部を冷却することで血管が収縮し、炎症や痛みが軽減されることがあります。
特に急激に痛みや炎症が現れた場合には、できるだけ早くアイシングをすることが重要です。
痛みが出る肢位にならないよう固定
痛みが続く場合は膝を安静に保ち、患部を固定することも大切です。
その際には、膝を心臓よりも高い位置に保つと腫れにくくなります。
また、膝を安定的に固定するには一時的に膝に包帯を巻くことも有効です。
痛みが出る方に体重をかけない
患部に負荷をかけてしまうと、さらに症状が悪化するおそれがあります。
特に、痛みが出ている膝にはなるべく体重をかけないように心がけましょう。
痛みや症状の程度によっては、歩行時に松葉杖や歩行補助具を利用することもおすすめです。
関連記事:膝を曲げると突然痛い!原因と治し方を外側・内側別に徹底解説
まずは整形外科に受診
あくまでも、こちらで書いたことは一般的なお話しで、本当に何をすべきで何をしてはいけないかは、疾患によっても全く異なってきます。
従って、実際は膝に詳しい整形外科専門医が診察・検査することで正しく診断が可能です。
その結果として何をすべきかがはっきりしてきます。
痛みがそれほど強くなくても、膝に詳しい整形外科を受診することを強くお勧めします。
まとめ
膝の痛みの原因は加齢や体重増加、運動などさまざまで、部位によっても考えられる疾患は異なります。
また、最初は膝の関節に引っ掛かり感や違和感、軽い痛み程度が見られていたものの、治療せず放置しておくと重症化につながるケースもあります。
少しでも膝がおかしいと感じたら、できるだけ早めに膝に詳しい整形外科を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックのアクセスマップ
藤沢駅前 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長 渡邉 順哉
経歴
●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長