股関節の左や右だけが痛むのはなぜ?痛みがおこる場所と原因を解説
加齢や運動不足、体重の増加など、さまざまな要因によって股関節に痛みが生じることがあります。
なぜ股関節の痛みが起こるのか、主な原因や考えられる疾患などを解説するとともに、痛みを和らげるために効果のある運動やストレッチ方法について解説します。
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股関節に痛みがおこる場所と原因
股関節の痛みは、主に太ももの付け根部分にあたる鼠径(そけい)部に発生します。
股関節の痛みを訴える患者の多くは女性で、考えられる原因としては発育障害による後遺症や、幼少期から青年期の発育段階において股関節の形成不全が起こったことなどが挙げられます。
このような成長過程における原因以外にも、加齢にともない股関節が変形したり、軟骨が固くなったりして柔軟性を失い、痛みを感じることもあります。
加齢にともなう股関節の痛みは、過去に特段大きな病気をした経験がなくても発症することがあります。
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股関節の痛みで考えられる疾患
股関節の痛みが生じたとき、どのような疾患が考えられるのでしょうか。
代表的なものをいくつか紹介しましょう。
①変形性股関節症
変形性股関節症とは、冒頭でも紹介した発育段階における股関節の形成不全によって起こる疾患です。
生まれつき、または成長過程で股関節がずれたまま大人になると、体重の増加にともない股関節に大きな負荷がかかるようになります。
その結果、股関節部分にある軟骨が摩擦や負荷によってすり減っていき、やがて骨同士が直接擦れ合うようになり激しい痛みを伴います。
また、変形性股関節症が悪化すると激しい痛みによって運動障害を招くこともあり、日常の基本動作である歩行や起立、階段の昇り降りなども困難になる場合が少なくありません。
関連記事:変形性股関節症を悪化させないためにやってはいけないこととは?
②関節リウマチ
関節リウマチとは、股関節を含む体のさまざまな関節部分に炎症を引き起こし、痛みを伴う疾患のことです。
特に中高年の患者に多い疾患ですが、なぜ発症するのか明確な原因やメカニズムは判明していません。
関節リウマチを発症すると腫れや痛み、患部の発熱といった症状が初期段階で現れますが、その後進行していくと関節が脱臼したり変形したりすることもあります。
③骨頭壊死
骨頭壊死とは、骨そのものに血液が十分に行き渡らなくなり、骨細胞が衰え、最悪の場合壊死していく疾患です。
私たちの十分な強度を維持するために、骨は血液からさまざまな栄養素を補給しています。
しかし、何らかの原因によって十分な血液が行き渡らなくなると、必要な栄養素を補うことができず植物のように枯れていってしまいます。
股関節に発症する骨頭壊死は「大腿骨頭壊死」ともよばれ、初期段階で股関節の痛みや炎症を伴います。
時間の経過とともに痛みが悪化している場合には、できるだけ早めに医師の診察を受ける必要があるでしょう。
股関節の左や右だけが痛むのはなぜか
股関節は左右の鼠径部が同時に痛むこともあれば、左右いずれかが痛むこともあります。
左右のいずれか一方だけが痛むのはさまざまな原因が考えられますが、たとえば骨盤の歪みや先天的な股関節の変形・異常、さらには過去に怪我を負った後遺症などで体重を支えるバランスが崩れていることなどが考えられるでしょう。
股関節の痛みが左右どちらか一方のみに現れるのは決して珍しいものではありません。
しかし、痛みが生じているということは、体に何らかの異常が出ているサインでもあるため、早急に医師の診察を受けるようにしましょう。
関連記事:形性股関節症を悪化させないためにやってはいけないこととは?
股関節の痛みで40代以降の女性に多い理由
股関節の痛みの主な原因である変形性股関節症は、特に40代以降の女性に多いとされています。
実は股関節の変形や異常は、幼少期や青年期からすでに発症しているケースが多いのです。
しかし、成長過程であることから股関節に多少負担がかかっても違和感や痛みは感じにくく、気付かないことがほとんどです。
また、成人してからも20代、30代のうちは股関節にある軟骨が摩擦や衝撃をある程度吸収してくれるため、痛みを感じにくい傾向があります。
加齢とともに骨への負担が徐々に積み重なっていき、軟骨がすり減った状態になったときに痛みを訴える患者が多いのです。
ただし、股関節の歪みや体重、日常生活の運動量なども個人差があるため、20代や30代といった若い女性でも股関節の痛みを発症する可能性は十分あります。
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股関節の痛みを和らげる運動やストレッチ方法
股関節の痛みを発症したとき、仕事や診察時間の都合などですぐに病院を受診できないこともあるでしょう。
そのような場合、少しでも痛みを緩和するためにはストレッチや運動が有効です。
股関節のストレッチ①
右足のみ立膝をつき前方に体重をかけた状態で、左の足を後方に伸ばし10秒ほどキープします。
その後、反対側の足に替えて同様に10秒キープします。
足を伸ばす際には深呼吸をしながらキープするのがポイントです。
なお、痛みを感じる場合は無理をせず、徐々に体重をかけていきましょう。
股関節のストレッチ②
床に座った状態で両足を開き、左右の足の裏を合わせます。
深呼吸をしながら足を体に引き寄せるようにして20秒ほどキープします。
このとき、背筋をしっかりと伸ばしながらキープすることを心がけましょう。
もし、股関節が固く座った状態で足の裏を合わせられない場合には、仰向けに寝た状態でストレッチをしてみてください。
整形外科での検査方法
股関節に痛みが感じられる場合、多くは変形性股関節症ですが、それ以外にも関節リウマチや骨頭壊死、さらには股関節が骨折しているケースもあります。
正確な診断には検査が不可欠ですが、どういった方法で検査は行われるのでしょうか。
整形外科で行われている検査方法は主に以下の3つです。
①レントゲン
レントゲンはX線を用いたポピュラーな検査方法であり、骨に異常がないかを調べることができます。
触診によって痛みを感じる場所や炎症の状況、発熱などを見ながら、レントゲン検査を行う部位を決定します。
②エコー
エコー検査とは超音波を使った検査方法です。
筋肉や靭帯などに異常がないかを調べる際に用いられ、レントゲンとは異なり放射線による被爆のリスクがないため病室でも手軽に利用できるメリットがあります。
③MRI
レントゲン検査やエコー検査の結果、さらに詳しい検査が必要と判断された場合にはMRI検査が用いられます。
MRI検査は私たちの体を輪切りしたような断面状を調べることができ、レントゲンよりもさらに詳細なデータを得られます。
関連記事:変形性股関節症は手術せずに治せる?|再生医療とはどんな治療なのか
整形外科での股関節の痛みの治療方法
検査によって正確な診断が得られたら、股関節の痛みを解消するための治療に入っていきます。
整形外科で用いられる主な治療方法としては以下が代表的です。
リハビリ・運動療法
体重増加や運動不足によって股関節の痛みが生じている場合には、理学療法士の指導のもとリハビリや生活習慣の改善指導などが行われます。
ただし、リハビリや運動療法は症状が軽度な場合や手術からの回復具合にもよって変わるため、医師や理学療法士の判断が不可欠です。
超音波治療
超音波治療とは、特殊な医療器具で患部に超音波を当て、異常がある組織を修復させる治療方法です。
主に筋肉や靭帯などの異常が認められる場合に用いられることが多く、関節リウマチにも効果が期待されます。
ヒアルロン酸注射
股関節の痛みを緩和する目的として、ヒアルロン酸注射が選択される場合もあります。
ヒアルロン酸だけを処方するというよりも、鎮痛薬と一緒に投与することによって、組織の回復と抗炎症作用によって股関節の機能を回復させます。
再生医療
再生医療とは、損傷した組織の一部を回復させる治療方法のことです。
自分自身の組織や血液から抽出された成分を注射するため副作用のリスクが低いことがメリットです。
再生医療には脂肪幹細胞治療やPRP療法、PFC-FD療法などが存在します。
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体外衝撃波治療
体外衝撃波治療とは、その名の通り患部の上から衝撃波を与える治療法です。
1回あたりの長時間がわずか10分程度と短いことが特徴で、一定期間にわたって複数回治療を行います。
さまざまな炎症を回復する効果が期待されるほか、初期段階の骨壊死にも有効とされています。
関連記事:体外衝撃波治療の効果とデメリットは?|適応疾患や頻度についても解説
ハイドロリリース
ハイドロリリースとは筋膜リリース注射ともよばれ、癒着した筋膜を剥離することで痛みや痺れを緩和する治療法です。
エコー検査をしながら痛みの原因箇所を特定し、注射をする部位を特定することが一般的です。
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手術
リハビリや注射、再生医療といった治療法でも改善が見込めない場合、最終的には手術が用いられることもあります。
たとえば、変形性股関節症の治療にあたっては、「内反骨切り術」や「外板骨切り術」、「人工股関節置換術」などが適用されます。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックは患者に合わせたオーダーメイド治療を提供
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックでは、これまで股関節の痛みに悩む数多くの患者様に向けた治療を行ってきました。
レントゲン検査だけでなく、エコーやMRIによる精密検査に対応しているほか、今回紹介してきたような再生医療や体外衝撃波、ハイドロリリースなどの最新鋭の医療にも対応しています。
さらに、理学療法士のパーソナルリハビリも提供しており、股関節の治療に特化した医療機関のひとつです。
まとめ
股関節の痛みは、特に中高年の女性に多く現れる症状ですが、若年層でも発症する可能性は十分あります。
原因はよく分からないものの、一時的な痛みだろうと考えていても、徐々に症状が悪化することも多く、検査や治療を受けたときには病状が進行しているケースもあります。
少しでも股関節に違和感や痛みを感じたら、できるだけ早めに整形外科を受診しましょう。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックのアクセスマップ
藤沢駅前 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長 渡邉 順哉
経歴
●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長