上腕骨顆上骨折
基本情報
小児の骨折のなかでは最も多く、3~8歳の幼児から学童児に多いです。受傷時に神経の麻痺や血流障害を伴いやすいく、骨折が変形したままであると、将来的に肘の変形(内反肘・ないはんちゅう)を残します。
重度の血流障害はフォルクマン拘縮(下記参照)という著しい後遺症を残す危険性があり、固定した後は十分注意が必要です。
原因
ほとんどが鉄棒や滑り台などからの転落で、その際、手をついて肘が伸展される伸展位型が95%です。伸展位型では橈骨神経や正中神経といった肘を通る太い神経が骨折部で圧迫されやすく、骨片転位が著しいと上腕の動脈が損傷されることがあります。
症状・診察所見
肘周辺の痛みを伴い、怪我をしてから徐々に腫れが強くなります。
検査・診断
両側のレントゲン撮影を行い、骨折していない側と比較します。血流障害やしびれ、手指の運動麻痺がないかチェックし、血流障害については手指の色、手首の脈の強さを確認します。腫れが著しい場合、著しい後遺症を残すフォルクマン拘縮を疑う必要があります。
治療
肘を曲げた状態でギプス固定を行います。経過観察中、骨が再びずれた場合は、全身麻酔下で変形した骨を正しい位置に戻し、全身麻酔の手術を行います。骨を正しい位置に戻すことが循環障害、骨折のズレを防ぐと考えられ、金属ピンによる手術(経皮的ピンニング)が多くの病院で行われています。術後はレントゲン写真で仮骨が認められ、ずれにくくなる頃、怪我してから約4週間頃でギプスを外し肘の曲げ伸ばしのリハビリを開始します。痛みがあるところを無理やり関節の曲げ伸ばしをする行為は、筋肉内まで骨ができ、関節がかなり固くなるため、注意する必要があります。
合併症
神経の麻痺は一般的に回復しやすいですが、怪我して3カ月経過したのに改善がみられない場合は、手術(神経剥離術)を行います。骨折の治して固定した位置が悪い場合は、高い確率で肘が内側に曲がって治ってしまう内反肘変形という後遺症を残します。関節の動き、見た目、肘の安定感が問題となる場合は、自然には矯正されないので、手術(矯正骨切り術)の適応となります。