上腕骨近位端骨折
疾患概念
肩関節は非常に可動性の高い構造となっているため、骨折や脱臼が起こりやすい関節です。
肩周囲の骨折で鎖骨骨折と並んで多い骨折が上腕骨近位端骨折になります。
多くはありませんが、脱臼を伴うこともあります。
誘因・原因
多くは中年から高齢者が転倒により肩を強打したりすることで骨折します。
骨粗鬆症が原因となる場合も多く、骨粗鬆症関連の四大骨折の一つと言われています。
検査
ずれがはっきりしている骨折ではレントゲン検査だけで十分診断は可能です。
レントゲンではっきりしない場合や治療法の決定のために、超音波検査のほかCT検査やMRI検査を要する場合があります。
治療
骨折の状態によって治療法を決定します。
ずれの少ないものや脱臼を伴うものは、骨折のずれを元に戻し(整復)保持可能であれば、三角巾とバストバンドで固定を行います。
ずれの大きいものや整復後の骨折部の保持が困難な場合は手術となります。
治療の目的は肩関節機能の回復であり、多少の変性治療は許容されます。
手術を行っても、肩関節が水平程度までしか上がらないなど、関節の固さが強く残ることも少なくありません。
そこで近年、骨折の程度が著しい場合でも、関節面の適合や骨癒合を十分望める場合は手術を行わず
積極的なリハビリテーションで十分手術した場合以上の関節機能の回復が望める場合も増えてきました。
受傷後1週間程度から、療法士のリハビリテーションを積極的に行い、振り子運動などの固さを予防する体操を自宅でも十分に行ってもらいます。
手術が必要な場合は、金属プレートとネジで固定する方法やネジで串刺しにできる金属の筒を骨の中に入れる手術法や、稀ですが上腕骨の頭の部分を人工の金属に取り換える(人工骨頭挿入術)が行われます。
いずれの場合、この骨折を疑った場合は、治療期間中に整形外科医が早期から振り子運動を積極的に指導してくれるか、療法士のマンツーマンのリハビリテーションが毎週受けられるかによって、肩の機能がどこまで回復するかが決まるといっても過言ではないです。
そのため、それらが提供できそうな整形外科が近くにない場合は多少遠くても提供可能な整形外科への受診を強くお勧めします。