大腿骨頭すべり症
疾患概念
思春期に大腿骨近位成長軟骨板で離開が起きて、骨端(骨の端)が頸部に対して後方に転位する疾患です。股関節の痛みと可動域制限を生じます。
原因・要因
思春期の男児、肥満児が多く、しばしば両側性であることから何らかの分泌異常の関与が考えられます。
症状
急性例は、多くの場合は外傷をきっかけに発症し、強い股関節痛を生じます。慢性例では、股関節痛、大腿痛あるいは膝関節痛を訴え、運動などによって痛みが憎悪します。
検査・診断・分類
単純X線検査で骨端核の位置を確認します。正面像で内側に転位しているものをトレソーワン徴候、側面像で後下方へ転位しているものをケイプナー徴候とよびます。高度のすべりでは股関節を曲げると自然に下肢が開排していくために、患肢の大腿前面を腹につけることができなくなります(ドレーマン徴候)。経過によって急性型、慢性型、慢性の経過中に急性悪化が起きたものに分類されます。
治療
すべりの程度が中等度(後方傾斜角30°)以下であれば、ピンニングを行って頸部と骨頭をそのままの位置で固定します。高度のすべり(30°以上)がある慢性型では、大腿骨近位部での骨切り術が行われます。
内反股・外反股
内反股
・内反股は、頸体角が正常よりも減少して直角もしくは鋭角に近くなるものをいいます。
・先天性内反股、くる病、ベルテス病、大腿骨頸部内側骨折などで生じます。
・多くはトレンデレンブルグ徴候陽性となり、跛行の症状が出現します。
・下肢機能軸(ミクリッツ線)が内側に移動するため、内反膝(O脚)になりやすい傾向にあります。
外反股
・外反股は頸体角が正常よりも拡大し、大腿骨頸部が垂直に近づくものをいいます。
・先天性股関節脱臼、多発性外骨腫、乳児化膿性股関節炎、くる病などのほか、二分脊椎、脳性麻痺、ポリオなどの麻痺性疾患でもみられます。
・下肢機能軸(ミクリッツ線)が外側に移動するため、外反膝(X脚)になりやすい傾向にあります。
・内反股・外反股ともに将来、変形性股関節症になる可能性が高く、手術治療になることが多いです。
・棘果長(SMD)に左右差を認め、転子果長(TMD)に左右差を認めるとき、大腿骨頭の位置の異常、大腿骨頸部骨折、脱臼や大腿骨頭角の異常(内反股、外反股)が考えられます。