肩鎖関節脱臼
疾患概念
肩甲骨の肩峰と鎖骨遠位端で構成される肩鎖関節が、怪我により脱臼してしまうことがあります。
誘因・原因
強く接触するようなスポーツで肩を下にして転倒したときに多くなります。
症状・臨床所見
鎖骨外側端が頭側に突出し、これを圧迫すると整復(正しい位置に骨が戻ること)されるが手を離すと脱臼位に戻るpiano key signを認めます。前方脱臼は肩関節の過度の外転・外旋などによって起こり、脱臼骨頭は肩甲骨関節窩前方・烏口突起下に位置します。後方脱臼は肩関節の過度の内転・外旋位強制で生じ、骨頭は肩甲骨関節窩後方に位置します。前方より頻度は低くなっています。
検査・診断・分類
レントゲンで肩鎖関節を確認します。脱臼の程度は、健側を撮影して左右を比較します。Ⅰ型は烏口鎖骨靭帯が正常でずれの少ない骨折で、安定しているため、保存療法の適応となります。Ⅱ型は烏口鎖骨靭帯の損傷があり、ずれの大きい不安定型骨折で手術の適応となります。Ⅲ型は肩鎖関節内骨折で、関節症性変化をきたしやすくなっています。
柔道やラグビーなどで転倒して肩を強打した場合に起きることが多く、烏口鎖骨靭帯の断裂が脱臼の程度と関係します。治療は、ロックウッド分類に基づきⅠ型、Ⅱ型は保存的に、Ⅳ型以上は手術的に治療されることが多く、Ⅲ型は疼痛や美容(外見)上の理由から手術が選択されることがあります。
Ⅰ型(捻挫) :肩鎖靭帯が部分的に損傷しているものです。
Ⅱ型(亜脱臼) :肩鎖靭帯が断裂し、烏口鎖骨靭帯が部分的に損傷しているものです。
Ⅲ型(脱臼) :肩鎖靭帯・烏口鎖骨靭帯がともに断裂し、鎖骨が前方にずれているものです。
Ⅳ型(後方脱臼):肩鎖靭帯・烏口鎖骨靭帯がともに断裂し、鎖骨が後方にずれているものです。
Ⅴ型(高度脱臼):肩鎖靭帯・烏口鎖骨靭帯がともに断裂し、鎖骨が完全にはずれているものです。
Ⅵ型(下方脱臼):鎖骨の端が下にずれいているもので、非常にまれです。
治療
Ⅰ型、Ⅱ型は三角巾での保存加療、Ⅲ型は仕事やスポーツによって保存加療か手術加療を選択します。
Ⅳ型、Ⅴ型、Ⅵ型は保存加療ではよくならないため原則手術加療となります。