理学療法士 皮膚運動について
フランスの理学療法では、創傷治癒 や美容において研究が進んでいるが、運動学的見地からの情報が少ない。
皮膚の運動において重要なことは、「皺線 ・緊張線・連続性」である現時点で え考えられている。
皺線は、皮下の筋の走行と関連があると言われ筋の走行に直角方向に生じるものとされている。
特に手術後の傷をあまり目立たくするためには皮切部位に皺線が重要。
皺線に沿った瘢痕組織は生理的な膠原線維配列と同じ方向に治癒するために目立たなくなると考えられている。
皮膚のように関節運動に柔軟に対応している場合、それは骨運動に追随していると考えられている。
皮膚が動く方向は皺が寄りにくい方向であった。
実際に皺は生じるのであるが、寄ることが少なくなる方向に移動するのである。
つまり皮膚には運動する方向があることになる 。
徒手にて皺のよる部分に対して伸張刺激を数十秒行うことで関節運動がやりやすくなる。
あるいはテ ーピ ン グ をすることも可能である。
テープは伸縮性、非伸縮性どちらでもよいが貼る際に皺が寄らないように、上腕で肩から肘方向へ 。
体幹側では肩から体幹中央へという方向性が重要である。
次に緊張線は局所の皮膚をつまみ寄せたときにできる皺を観察して指の間にできる細かい皺が平行による方向を指す。
弛緩した際のものであるため関節可動域の最終域で緊張線の方向が異なるように観察できる。
皮膚と皮下組織の相対的な位置関係が変化するために生じ、皮下の組織がその誘導された方向に動きやすいという特徴がある。
皮膚の運動学的特徴についてはまだ整理されているとは 言えないが今のところ次のように考えられている。
まず、緊張線について皮膚が伸張された肢位における緊張線が重要であると考えられている。
特に関節可動域最 終域で皮膚が伸張されていることを考慮し運動時に操作するポイントとする。
今後、臨床および研究両側面から皮膚の運 動をさらに深く追求されていくと考えます。
術後に関節が動かなくなったり術後の切開瘢などが気にならなくなるような治療技術の進歩が期待できる。
またそれを患者さまに還元できると理学療法士の需要もさらに高まると考えた。
理学療法士 肩関節 治療について
人の肩関節は四足獣と比較して明らかに異なる。
肩甲骨は胸郭の左右への扁平化とともに後方へ移動し、上肢は背側へも動くようになった。
荷重関節であった肩関節が、その役割から開放されたとき,劇的な変化を遂げたことは間違いない。
筋の役割も大きく変わり、前鋸筋などは体幹を吊り下げる機能から、上肢を重力に逆らって挙上するための肩甲骨の上方回旋に寄与するようになった。
祖先の形態とその機能を少しずつ変化させて適応しながら、このように大きな可動域を持つ関節となった。
筋による肩関節の安定化を考える場合には、回旋筋腱板の機能は重要である。
筋力のバランスが崩れて inner muscle が outer muscle よりも相対的に弱化すると、上腕骨頭が十分に関節窩に引き付けられず、不安定性を助長することになる。
外旋筋群はinner muscle が中心であるので、どの肢位での外旋運動でも棘下筋を強化することが可能である。
下垂位(第 1 肢位)での外旋運動では、抵抗をかけずとも最終可動域まで動かすことにより、筋力強化に十分な筋収縮を得られることが明らかにされている。
肩甲上腕リズムに関して、肩甲骨の上方回旋を促すためには僧帽筋の各線維と前鋸筋のバランスよい筋活動が必要となる。
多くの場合、僧帽筋上部線維の活動が過多となり、挙上運動が優位になることが多い。
そこで、活動を抑えた状態で中部線維、下部線維、前鋸筋の活動を高める運動を行うことが必要となる。
筋力強化だけでは不十分であり、そのうえに運動学習を促す必要性がある。
今後、肩甲上腕リズムの改善を目的とした選択的筋力トレーニング、さらには運動学習が患者さまの治療において重要となる。
肩関節が複雑な機構であるのも、重力との闘いの末に勝ち得た結果といえる。
この神秘的ともいえる機構を再建するために、理学療法士に何が出来るのか、日々臨床のなかで今回の講習治療経験を活かしていきたい。
理学療法士 野球動作のバイオメカニズムについての勉強会
野球は、日本で最も人気のあるスポーツのひとつです。
野球の動作には投・打・走・守・輔などがみられますが、このうち投球動作は野球を構成する最も重要な動作です。
野球の投球動作には、守備位置別にみると異なる運動課題(目的)が要求されます。
すなわち、投手には打者をアウトにするためにストライクゾーンに直球や変化球を正確にかつ速く投げることが、捕手、内野手および外野手には打者走者をアウトにするために他の野手に、すばやい動作でボールを正確にかつ速く投げることが要求されます。
このように野球の投球動作は、状況に応じた複数の課題が組み合わされていることがわかります。
投球障害肩・肘は,投球過多による軟部組織の過度な緊張や疲労を要因とし、その状態でも繰り返し投げ続けることにより発症する身近な問題です。
投球動作のバイオメカニクスでは、投球障害リスクの最小化および投球パフォーマンスの最大化を定量的にめざす。
投球障害に至った投手はそうとはならなかった投手よりも、投球動作中の関節にかかる大きなトルクが加わわり、関節に加わる力やトルクの大きさを関節への負担(障害リスク)の大きさととらえる。
そのため、投球動作中の関節に加わる力とトルクをできる限り低減させ、球速やコントロール、あるいはその両者を維持する/向上させる投球動作を探索することが、投球動作のバイオメカニクスの道筋として重要です。
投球障害肩肘と関連づけられている投球動作中の力とトルクの多くは、「コッキング相から加速・減速相」に当てはまる。
(特にコッキング相後半と減速相からフォロースルー相前半には,肩関節と肘関節に大きな多様な負担が加わる)
リハビリでは、オーバーヘッドスポーツ(野球やバレーボールなど)における下肢・体幹・肩甲胸郭関節での運動連鎖では下肢の柔軟性低下・体幹の可動性低下が生じると肩甲胸郭関節(肩甲骨)などで過剰な代償が生じる可能性があるのです。
再発防止のためにはこれらの機能改善も必要と考えているためエクササイズで柔軟性の獲得は必須事項となります。
理学療法士 勉強会 肩甲胸郭関節
今回は、肩甲胸郭関節の基礎についてお話しします。
肩関節は肩甲骨・鎖骨・上腕骨・胸郭から構成され、解剖学的肩関節と機能的肩関節に分けられます。
- 解剖学的肩関節
肩甲上腕関節・胸鎖関節・肩鎖関節 - 機能的肩関節
第二肩関節・肩甲胸郭関節
肩甲胸郭関節は肩関節運動において非常に重要な働きを行います。
皆さんもご存じの通り、肩屈曲時の肩甲上腕リズムでは2:1の割合で肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節が動きます。
肩を180°屈曲する場合では肩甲上腕関節が120°動き、肩甲胸郭関節が60°動くということになります。
このことを考慮すると、最終域までの可動性を出すためには肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節どちらもアプローチしていくことが重要だとわかります。
肩関節周囲炎において肩甲胸郭関節へのアプローチは炎症期の時期に積極的に行います。
肩関節周囲炎には炎症期・拘縮期・回復期という経過があり、炎症期では以下が必要になります。
- 患部(肩甲上腕関節・第二肩関節)の安静
- 患部外(肩甲胸郭関節・肩鎖関節・胸鎖関節)の機能向上
患部外の運動時に患部にストレスをかけないように介入していくことがポイントとなります。
また、術後のリハビリでも患部には安静度があるため肩甲胸郭関節へのアプローチを行います。
肩甲胸郭関節の動態は、肩鎖関節軸と胸鎖関節軸によって起こります。
肩甲胸郭関節動態を見ていくうえで胸骨・鎖骨・肩甲骨・胸郭の動きを知る必要があります。
①鎖骨
まずは鎖骨の動態についてです。
挙上時の鎖骨の動態を三次元的に見ると、挙上・後退・後方回旋が生じており、僧帽筋の上部線維が主動作筋として働きます。
反対に拮抗筋として働く筋として鎖骨下筋・大胸筋鎖骨部線維・三角筋前部線維があります。
挙上時に鎖骨の動きが制限されている際は拮抗筋へのアプローチをしていく必要があります。
②肩甲骨
次に肩甲骨の動態についてみていきます。
肩甲骨は肩関節挙上に伴い上方回旋・後傾・外旋します。
上方回旋の主動作筋は僧帽筋(上部線維・中部線維・下部線維)・前鋸筋下部筋束であり、拮抗筋は小胸筋・肩甲挙筋・小菱形筋・大菱形筋になります。
外旋の主動作筋は僧帽筋中部線維・前鋸筋中部筋束・小菱形筋・大菱形筋、拮抗筋は小胸筋・大胸筋。
後傾の主動作筋は僧帽筋下部線維・前鋸筋下部筋束、拮抗筋は小胸筋・烏口腕筋・上腕二頭筋短頭になります。
この肩甲骨の動きの中でいずれも、拮抗筋として小胸筋があることがわかります。
このことから挙上動作において小胸筋の短縮は悪影響を及ぼす可能性があると考えられます。
挙上動作時に肩甲骨にフォーカスして見ていくと上方回旋・後傾・外旋が生じ、主動作筋である僧帽筋・前鋸筋の賦活化、肩甲骨動態すべての拮抗筋として働く(制限となる)小胸筋の柔軟性・伸張性の向上を狙ったアプローチをしていくことが重要となります。
③胸椎・胸郭
最後に胸椎・胸郭について見ていくと、肩関節挙上に伴い胸椎は伸展、胸郭は挙上します。
胸椎はTh3~6が動き、Th5が最大に可動します。
Th5の可動域向上のためにはTh6を固定した状態で胸椎伸展運動を実施していくとTh5の伸展を誘導することができます。
また、キャット&ドッグも運動療法として取り入れていくことで胸椎・胸郭の可動性向上が見込めます。