BLOGブログ

骨密度が正常なのに骨粗鬆症ってどういうこと?

いつもご覧いただきありがとうございます。

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック院長の渡邉順哉です。

こちらのページは沢山の方にアクセスを頂いており、ありがとうございます。

骨粗鬆症についてもう少し分かりやすく解説した「骨粗鬆症専門外来」のページもご用意しておりますので、こちらも合わせて是非ご覧ください。

▶︎イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックの骨粗鬆症専門外来

骨粗鬆症をもっと詳しく知りたい方はこちら!毎日、骨粗鬆症マニアの院長が呟いています。

https://twitter.com/Ih4C84qv4FUpm4B

当院の骨粗鬆症撲滅にかける想い

今回は、骨密度が正常なのに骨粗鬆症と診断される方が増えてきています。

現在もイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックが最も力を入れて取り組んでいるのが骨粗鬆症診療ですが、

さらに今後一番力を入れていきたいと思っているのも骨粗鬆症です。

何故、私が骨粗鬆症にこだわるかというと、本気で骨粗鬆症を日本から撲滅したいと思っているためです。

実は、骨粗鬆症による大腿骨骨折が先進国で増えている国がひとつだけあって、その国は日本なんです。

日本人の死因はガンが断トツトップですが、このガンの検診率は世界的にみても先進国の半数くらいで40%程度とかなり酷いと言われています。

実は、99%以上が骨粗鬆症が原因である大腿骨骨折の死亡率もガンとほぼ一緒です。

しかし、骨粗鬆症の検診率はどうでしょう?

一番良い県でなんと15%

神奈川県に関してはワースト3位の1%です。

骨粗鬆症は女性の場合、平均60代で、早い方だと40代からなってしまいます。

男性でも平均85歳頃には骨粗鬆症になります。

ガンと違い、誰でも年齢を重ねれば掛かってしまう病気、それが骨粗鬆症です。

こう聞くと、骨粗鬆症は加齢でしょ?なったもんは仕方ないんじゃないの?どうせ治せないんでしょ?

とおっしゃる意見を良く効きます。

これは、私は国や学会の啓蒙不足としか言いようがありません。

知らないものはしょうがない、そう思われるのも当然と思います。

しかし、骨粗鬆症は治療することで、十分骨折を予防することが出来ます。

特に骨粗鬆症になりそうな段階で見つけて、早期治療しておくことで、そんな大変な治療をせずに済むことが多いです。

例えば、ガンの場合、早期ガンであればその部分だけ内視鏡で小さく切り取って終わりですが、進行してから見つけても臓器丸ごと取り除く必要があったり、もう手遅れの場合があります。

 

骨粗鬆症も同じです。

よく背中が丸まってきて背が縮んできたら骨粗鬆症を調べましょうと啓蒙されていることがありますが、その時点では背骨が潰れ場合によっては重症な骨粗鬆症になっている状態です。

その状態から治療してもなかなか良くなりませんし、骨粗鬆症の治療にはかなり時間が掛かりますので、骨が強くなっていく過程でまた骨折を繰り返してしまい段々と動けなくなっていく方、全然珍しいことではありません。

こうなる方の多くは70代以降で、恐らく10年、20年前に何らかの兆候が認められるはずです。

例えば、血液検査では骨がどれだけ壊されやすい状態にある方、栄養状態が悪い方、卵巣や腎臓などの病気を患っている方など、これらは40~50代の頃にはすでに骨密度が下がり始めているケースが多いです。

そこで、精密検査さえしておけば、その時点で治療を開始していれば、背骨が潰れて背中が丸まったりせずに済むのです。

10年前に出会っていれば、今頃背骨はまっすぐのまま生活できていたのに、と悔やまれる方に大勢出会ってきました。

私は心の底から、こういった方を減らしていきたいと思っています。

▶︎イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックの骨粗鬆症専門外来

骨粗鬆症治療に必要な3つのこと

では、ただただ骨粗鬆症の検査を受けておけばいいんでしょうか?

ここで、私は注意してもらいたことがあります。

私はよく患者さんに骨粗鬆症の検査はしていますか?と聞きます

すると下のような答えが返ってくる場合があります

糖尿病で通院している内科でビタミンDは処方してもらっているが調べてはいない

足の骨を数年前に測って大丈夫でした

先日、手首で骨密度を調べて問題ありませんでした

毎年、腰と大腿骨の骨密度を調べてもらっていて、徐々に下がってきていますが、今のところ骨粗鬆症にはなっていないです

骨粗鬆症を本気で取り組んでいる私からすると、どれも不十分です。

何が骨粗鬆症に本気で向合うために必要なのものは以下の3つ。

  • 骨密度検査
  • 骨折の確認
  • 血液検査

これら3つについて解説します。

①骨密度検査

骨粗鬆症を診断するには、現在は腰の骨と大腿骨(股関節)の骨密度検査は必須です。

手首で調べる骨粗鬆症検査は腰の骨と大腿骨で調べる機械がない場合には手でも調べないよりは良いよというものです。

なぜ、手首ではなく、腰や大腿骨なのかというと、手首の骨折だけでは腰や大腿骨の骨折と比べると将来の寿命にはあまり大きな影響がないという統計データがあります。

より寿命に大きく影響する部位の骨密度を図りましょうというのが、骨粗鬆症の検査の大前提です。

ましてや、足で測る検査は、薬局などでお試し検査程度で調べるならまだしも、診断・治療には使わないようにと言われている検査になります。

(当院でも比較したところ、大腿骨・腰椎骨密度と足の数値は20-30%も違うケースも珍しくなく、当てにしてはいけないことが良く分かりました。)

未だに、検査機のコストなどの問題で、足や踵だけで検査する医療機関があることはとても残念に思います。

当院の骨密度検査結果の見方

 

②骨折の確認

いいえ、待って下さい。

もう一つ、骨粗鬆症の診断に必要なものは、骨折の確認です。

あまり知られていませんが、骨密度が正常でも、今までに骨折があるかないかで診断される場合があります。

まさに骨密度が正常な骨粗鬆症というものです。

大人になってから例えば肋骨や手首の骨や足首や肩の骨を折ったとしましょう。

骨折の経験がなければ、腰や大腿骨のいずれかの骨密度が70%を下回った時点で骨粗鬆症という診断となります。

しかし、このような骨折を起こした場合、骨密度が80%を下回ると骨粗鬆症という診断に基準が厳しくなります。

では、骨折の経験がないし、骨密度が正常だから大丈夫かというとまだ早いです。

実は、いつの間にか骨折というものが残っています。

これは、ほとんどが背骨に起きてきます。

骨密度が正常でも、背骨が潰れている場合があり、潰れ方が軽い場合は特に痛みもなく自然と潰れていることがあります。これはレントゲンを必ず撮るようにしないと分かりません。

レントゲンで、背骨の厚みが最低20%以上潰れていればその背骨は圧迫骨折という診断になります。

実は、一つでも圧迫骨折があれば、いくら骨密度が正常でも、骨粗鬆症という診断になります。

本来はここまでしないと本当は骨粗鬆症なのに、骨密度は大丈夫ということで経過観察になってしまっている方がとても多いのです。

 

さて、ではなぜ骨密度が正常なのに骨が弱くなり、背骨が潰れるのでしょうか。

これには骨質が関係していると言われています。

骨密度は骨量と言われ骨に含まれるミネラルの量を示しています。

例えれば、鉄筋コンクリートの建物のコンクリート部分に当たります。

これらは骨の強度の70%分と言われています。

要するに骨密度は骨の強度の70%しか担保できていませんよということです。

では残りの30%は何か?

それは骨質と言われ、コラーゲンの部分と言われています。

先ほどの鉄筋コンクリートでいう鉄筋部分です。

ビル(骨)で考えれば、簡単ですが、コンクリート部分(骨密度)だけ大丈夫でも鉄筋(骨質)がもろくなっていればビル(骨)は簡単に崩れて(骨折)しまいますね?

実はここ10年ほど前から世界的にこの骨質がとても注目されています。

骨粗鬆症にも3つタイプがあります。

  • A.骨密度低下・骨質正常型 50%
  • B.骨密度正常・骨質劣化型 30%
  • C.骨密度低下・骨質劣化型 20%

骨折しやすい順だとC⇨A⇨Bです。

骨粗鬆症の70%は骨密度が低下し、50%は骨質が劣化していることになります。

全体の30%は骨質だけ劣化し、骨密度は正常という、いわば骨密度正常の骨粗鬆症がなんと30%もあるのです。

実は大腿骨と腰の骨密度だけでは30%の骨粗鬆症の方を見逃していることが分かりました。

骨質劣化型の骨粗鬆症の方で、背骨の圧迫骨折に至っていれば骨粗鬆症と診断できますが、圧迫骨折になるまで骨質劣化型の骨粗鬆症を診断できないのは困りますよね?

そこで、開発されたのがTBS(海綿骨構造指標)という骨質を調べる解析ソフトです。

こちらの解析ソフトを現在の骨密度検査機に導入すると腰の骨の質を調べてくれます。

実はこのソフト数年前に発売されたのですが、導入に数百万円(大腿骨の骨密度検査機がもう一台買える費用)が掛かること。

保険適応になっていないため診療報酬が一切得られない。

といった理由で大腿骨の骨密度検査機を所有している医療機関でもほとんど導入していないのが現状のようです。

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックは私が何とか骨質が劣化した方を背骨などの骨折を起こす前に救いたいという思いから、高額で赤字覚悟の上、2021年2月に導入しました。

※導入直前までは、ソフトの費用を回収する目的で患者様から追加で別途費用を頂くことも検討していました。

しかし、結果として希望者が減ることで骨質劣化型の骨粗鬆症の方を見逃すことは本望ではないと考え、現在のところ無償で検査結果を提供させて頂いております。(今後は変更になる可能性があります)

1カ月半以上に渡り、骨質を解析してきた結果、概ね骨密度と骨質は同じような結果になる方が多かったです。

肋骨骨折などを起こしたのに骨密度が正常のため骨粗鬆症と診断されていなかった患者様の中には、骨質だけが著しく劣化している結果を認める方も少なくありませんでした。

実は、今までビスホスホネート製剤で骨粗鬆症の治療を長年続けてきたのに、以外にもTBSの結果から骨質が悪いのが発覚し、ビスホスホネート製剤は骨密度の上昇効果は良いのですが骨質は変えないか場合によっては劣化させてしまうケースもありました。

SERM製剤やビタミンK製剤、場合によってはビタミンB6のサプリなど、骨質を改善しうる薬への変更する判断材料になりました。

今回、TBSソフトを導入することにより、治療方針を決定するための判断材料が増えて、より患者様に合ったオーダーメイドな骨粗鬆症治療を提供することができるようになってきました。

 

③血液検査

さて長くなりましたが、まだ骨粗鬆症治療に必要な3つ目をお伝えしていませんでした。

それは、血液検査(骨代謝マーカー・ビタミンD・ビタミンK、カルシウム)です

私はもうこれらを無くして、骨粗鬆症治療は語れないと思っているくらい、無くてはならない検査だと考えています。

特に大事だと思っているのは、骨代謝マーカーのうち、骨をどれだけ壊しやすいかが分かる血液の項目があります。

骨は常に作ったり壊したりを繰り返していますので、どれだけ速いペースで骨を壊すのかどうかというのはとても重要になってきます。

実は、60歳くらいで骨年齢が100歳のような骨密度が極端に低い方は、この骨を壊すという速度がかなり速くなってしまっているケースがとても多いのです。

その原因の多くは、性ホルモンです。

女性は閉経や卵巣の摘出手術により、女性ホルモンが大幅に減ります。

これには個人差が大きく、大幅に減ると、減る前までは女性ホルモンが抑えていた骨を壊す細胞が活発になってきてしまいます。

男性も男性ホルモンが減ると同じような現象が起こります。

実は、この骨を壊す速度というのは、生活習慣など自力での調整はほぼ難しいですが、女性ホルモンに似た薬や、骨を壊す細胞を抑える薬を使うことで、十分に抑えることが出来ます。

その薬により、骨を壊す速度は正常まで抑えることができ、僅かながら徐々に骨密度は改善しやすくなります。

しかし、女性の場合この骨を壊す速度が速まるのは50代前後で来ますから、私はこの時点で定期的にこの検査を受けることを強く推奨しています。

早期に破壊しやすい状態を見つけて抑えた方が、よっぽど簡単な治療薬で済むからです。

途中で治療を止めると、また骨を破壊しやすい状態に戻ってしまうので、一生治療は必要ですが、骨年齢が100歳になってから治療するよりは断然らくちんです。

それ以外にもビタミンDは私も含め足りない方の方が多いのでとても大事です。

腸で食べ物からカルシウムを体内に吸収するビタミンDが足りないと、骨は弱くなりますし、免疫力も低下するのでコロナに罹る心配もあります。

こちらは不足状態に合わせてビタミンDの補充により解決できます。

ビタミンKも体内のカルシウムを骨にくっつけるのに必要なビタミンなので、一度調べておくのは大事です。

ビタミンDと比べると不足している方は少ないですが、足りていない場合は処方薬により骨の質を改善できます。

それ以外にもビタミンDが不足しているのに、血液中のカルシウムがやけに多い場合があります。

その場合は、副甲状腺ホルモンを大量に作ってしまう腫瘍が副甲状腺に出来ている場合があり、それにより骨が弱くなるため、場合によっては副甲状腺の腫瘍を摘出する手術が必要になる場合があります。

まとめ

まだまだ、骨質を調べる血液検査もあり、今後の課題として考えています。

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックを選んで来て頂ける方に、今後もより良い骨粗鬆症診療の提供を目指して参ります。

今回は今までで一番長い内容となりましたが、日本の骨粗鬆症診療を少しでも良くしていければと思い投稿してみました。

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック院長 渡邉順哉

▶︎イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックの骨粗鬆症専門外来

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックのアクセスマップ

 

痛くないけど肩が上がらないのはなんで?

いつもご覧いただきありがとうございます。

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック院長の渡邉順哉です。

 

さて、今回は珍しい病気、キーガン型頚椎症(頚椎症性筋萎縮症)の症例に出会いましたのでお話しします。

肩が痛くないけれど、上がらなくなってしまった。

実は珍しいですが、こういった症状で受診される方はたまにいます。

良くあるのが、肩が痛くて上がらない。

こちらは、五十肩(肩関節周囲炎)が一番多く、次に多いのが肩を挙げる腱が切れる腱板損傷、あとは石灰が炎症を起こして激痛になる石灰沈着性腱板炎です。

私も含め整形外科医は、初診のお話しで、多い病気順にここまで病気を絞り込んでいると思います。

 

しかし、今回の中年の男性の患者様は

昨日朝起きたら、痛みはないけれど肩が上がらない。とお話しされました。

 

痛くないのですか??と聞き返してしまいました。

痛くないのに、肩が挙がらない。

これは整形外科医としては、日常診療でのイレギュラーなワードです。

腱板損傷か??

 

肩を挙げる腱板が切れると、上げようにも挙がらず、反対の手で支えながら上げれば上がりますが、降ろすときに痛みが出たり、夜間の痛みが出たりすることがあります。

高齢者だと、自然に切れて痛みがない場合もありますが、今回は中年だったため自然に切れるということは滅多にないため、何でだろ??となります。

 

レントゲンは予想通り、肩は異常なし。

超音波検査でも、やっぱり腱板は切れていませんでした。

 

何でなんだろう・・・・?

頚髄症?いや両側、下肢にもくるはず・・・

 

痺れや痛みがないのに、肩が動かない?

痺れや痛みは感覚神経、動かすのは運動神経と別の神経が働いています。

運動神経だけやられる病気って・・・?

あっ、キーガン型頚椎症では!!??

頚椎症の神経症状といえば、首の骨の変形で首の後ろの神経の出口で肩や腕に行く神経が圧迫されることで、肩甲骨から肩や手にかけての痛みや痺れを起こす病気で、中年の男女にとても多い病気です。

実はこの頚椎症にはとっっっっっっっっっっっっっっっっっっても珍しいキーガン型というタイプがあります。

多分、頚椎症の1000人に1人くらいじゃないかという感覚です。

脊椎専門の整形外科医であれば、何度か手術をしたことはあるかもしれませんが、脊椎以外を専門にしてきた例えば私のような膝の専門の整形外科医は数年に一度会うか会わないかという疾患です。

頚椎症による神経症状といえば、痺れ・痛みの病気で、進行し過ぎると力が入らないこともありますが、

痛みも痺れもないとなかなか疑えず、キーガン型頚椎症は整形外科医でも見逃すことが多い病気です。

この患者さんでは、肘を曲げる筋力も一緒に下がっていて、これはキーガン型頚椎症の特徴でもあります。

実は、肩に行く神経は首の骨に入って脊髄神経に繋がるのですが、その骨の入口に入った所では、痛みや痺れなどを伝える後ろ側の後根の神経と筋肉を動かす前側の前根の神経とに分かれます。

これらの神経の前には首の骨と骨の間にある椎間板というクッションがあり、その椎間板が圧が高まって弱い部分から後ろに飛び出ししまい、神経を押してしまう、頚椎椎間板ヘルニアという病気を起こすことがあります。

ヘルニアは神経の前から飛び出してくるので、当然前の前根の神経がやられそうですが、後根の神経は一部太くなっているからなのかこちらが先に影響を受け、痛みや痺れを起こします。

しかし、稀に前根の神経だけ圧迫されることがあり、肩を動かすための筋肉に動けという電気刺激を与えている神経がやられるため、痛みや痺れはなく肩が挙がらないという症状だけが出ます。

基本的には、頚椎のMRIを撮影して、神経の圧迫具合を確認して、確定診断となります。

 

さて、ここでさっさとヘルニアを手術をすれば良いという考えに行きつく方もいらっしゃるかと思いますが、

首の手術は、腰の手術とは比べ物にならないくらい、合併症のリスクがあがります。

実は、背骨の後ろにある神経が通るトンネルである脊柱管は、首では狭く、腰では太くなっています。

しかし、逆にその脊柱管を通る神経自体の太さは頭に近いほど太く、腰に近づくにつれて分岐して細くなります。

腰ではトンネルは広いのに、通る神経は細いので余裕ですが、首は狭いトンネルに太い神経が通るので、ちょっとでも狭さが悪化するとさまざまなトラブルを起こします。

例えば、首の手術で、神経が通る骨のトンネル内で、大出血が起こると血の塊である血腫ができ、狭いので簡単に神経を押して、両肩が挙がらなくなる麻痺という合併症を起こすことがあります。

腰の手術は神経が細く、骨のトンネルが広いためこのようなトラブルはほとんどありません。

こういったリスクから、腰と比べると首の手術はなるべく避けた方が良いと思っている整形外科医は私だけではないと思います。(もちろんそういったリスクを超える有益性が明らかな症例に関しては手術はすべきだと思います。)

さまざまな論文から、このキーガン型頚椎症ではいきなり手術でなくとも、リハビリを行いながら経過をみていくと数ヶ月から1年程度で大幅な改善を望めるようです。

ただ、それだけ長期に渡り肩を動かしていないと、肩が固くなっていまうため、理学療法士などのリハビリで固くならない予防を行う必要があります。

腰椎椎間板ヘルニアは、手術しなくとも、1年程度でヘルニアが自然と小さくなり、症状も手術しない場合と同じくらいまで改善するという研究結果もあります。

恐らく、頚椎ヘルニアも時間の経過とともに縮小し、圧迫が改善され、挙がらないという症状も徐々に改善してくるようです。

 

骨の変形による頚椎症性神経根症は、今回のキーガン型頚椎症よりも圧倒的に多く、10人に1人くらいはいるのではないかと思ってしまします。

これだけは覚えてもらいたいのですが、この頚椎症は骨の変形によるものであり、普段の首の姿勢や過去の頭部をよく動かして首に負担の掛かるスポーツをしていた方などは結構40代で首の骨の変形による神経痛を起こします。

これだけは覚えてもらいたいのですが、首の手術は合併症が多いので、スマホ首などにならないように、もう少し普段から首を大事にして生活して頂きたいなと、整形外科医は思っております。

最後まで、ご覧いただき誠にありがとうございました。

 

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック院長 渡邉順哉

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックのアクセスマップ

 

 

ロコモティブシンドロームについて ~食事篇~

こんにちは。 藤沢の駅前にありますイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックです。

今回は先日お伝えいたしました日本の整形外科の学会が取り組んでいる、

ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトより【食生活でロコモ対策】をお伝えさせていただきます。

骨や筋肉の”素”は毎日の食事からと言われています。

きちんと食事をして、【ロコモ】に負けない身体作りを目指しましょう。

※の食材は骨や筋肉のために毎日摂取したい食材例です。( )内は1食分の量になります。

〇たんぱく質〇

骨の大切な材料になるので、十分に摂るようにしましょう。

肉、魚、牛乳、大豆などはアミノ酸バランスの良い良質なたんぱく源です。

  • 鶏むね肉(皮なし60g)
  • 鯖(1切れ)
  • 木綿豆腐(1/3丁)
  • 鶏卵(1個)

 

骨を強くするためには、カルシウムだけでなく、たんぱく質、ビタミンDやビタミンKも必要です。

しっかり摂ることを心がけましょう。

〇ビタミンD〇

腸でのカルシウムの吸収を高める働きがあり、 鮭などの魚やきのこ類に多く含まれています。

日光を浴びることで皮膚でも作られますが 不足しないよう食事でも心がけるようにしましょう。

  • 鮭(生/1切れ)
  • まいわし(生/2尾)
  • きくらげ(乾/2個)
  • まいたけ(1/4束)

 

〇ビタミンK〇

骨の形成や骨質の維持などに働きがあります。

納豆やキャベツ、ブロッコリーなどの緑色野菜に多く含まれています。

  • 糸引き納豆(1パック)
  • ブロッコリー(生/3~4房)
  • ほうれん草(1/4束)
  • 抹茶(小さじ1)

 

〇骨に良いそのほかの栄養素〇

マグネシウム、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、葉酸なども大切な栄養素です。

マグネシウム

  • 大豆製品
  • 海藻
  • 魚介類 など

ビタミンB₆

  • レバー
  • 鶏肉
  • カツオ
  • マグロ
  • ピーマン など

葉酸

  • ほうれん草
  • 春菊
  • いちご など

 

ちなみにプロテインは英語でたんぱく質を意味しています。

筋肉や骨を形成する素となるたんぱく質です。

運動習慣が多い人はたんぱく質の消費が多くなります。

そのため、たんぱく質を補うためにプロテインで補います。

また筋肉をつけたい人もよりたんぱく質が必要となるため、プロテインが効果的です。

現在は多くの種類のプロテインが販売されています。それぞれの種類によって効果や成分が異なります。

目的になったプロテインを使用することで体つくりをサポートしてくれます。

これらの栄養素を毎日の食生活で無理なく組み合わせて摂ることが大切です。

食生活の詳細なアドバイスについては、日本の整形外科の学会による ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトがございますので ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。

骨や筋肉の“素”は毎日の食事から。 きちんと食べて身体を温めて冬を乗り切りましょう!!

藤沢の駅前 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック スタッフより

参考記事:ロコモティブシンドロームとは?|予防や症状、原因について解説|西春内科・在宅クリニック

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックのアクセスマップ