大腿骨骨折のリハビリはいつから?寝たきりを防ぐ急性期から生活期までの流れ
※本記事は、整形外科専門医・イノルト整形外科 統括院長 渡邉順哉医師の監修のもと執筆しています。

大腿骨(だいたいこつ)骨折は、太ももの付け根にある骨の屈曲部や関節付近が折れてしまう骨折です。
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を背景に持つご高齢の方、特に女性に多く見られ、転倒などのちょっとした衝撃によって「立つ」「歩く」といった日常生活の基本動作が困難になります。
大腿骨骨折を経験された患者様やご家族にとって、最も大きな不安は「これから元の生活に戻れるのか」「歩けるようになるのか」ということではないでしょうか。
この骨折は、手術後の適切なリハビリテーション(以下、リハビリ)を早期から行えるかどうかによって、その後の回復や生活の質(QOL)が大きく左右されます。
この記事では、リハビリがいつから始まり、どのような内容をどれくらいの期間行うのか、そして退院後の継続方法までを回復の流れに沿ってわかりやすく紹介します。
Contents
大腿骨骨折のリハビリが重要な理由
大腿骨骨折後のリハビリは、手術によって固定または人工物に置き換えた関節や骨の周囲にある筋力を回復させ、再び日常生活を取り戻すために不可欠なプロセスです。
手術が無事に成功したとしても、ベッドの上で動かない状態(寝たきり状態)が長く続くと、筋力の低下や関節の強張り(拘縮)が急激に進行します。
そのため、術後早期から適切なリハビリを開始することが極めて重要とされています。
ただし、リハビリによる身体機能の回復スピードや到達点には個人差があります。
骨折前の歩行能力やご年齢、持病の有無などによって異なるため、必ずしも全員が「骨折前と全く同じ状態」に戻るとは限りません。
それでも、早期から正しくリハビリを取り組むことが、寝たきりを防ぎ、ご自身が望む生活に少しでも近づくための大きな手助けとなります。
大腿骨骨折のリハビリの内容
大腿骨骨折のリハビリは、時期や回復の段階に応じて目的と内容が変わっていきます。まずは全体の流れを把握しておきましょう。
| 時期 | 開始の目安 | 主なリハビリ内容 |
| 急性期 | 手術翌日~ | 起き上がり立ち上がり、歩行器訓練 関節を動かす訓練 |
| 回復期 | 術後2週間ごろ~ | 杖または歩行器による歩行練習 筋力強化 日常動作の練習 |
| 生活期 | 退院後 | 外来・訪問・通所リハビリ 自宅での運動 |
手術後すぐに始める急性期のリハビリ
手術を実施した病院(急性期病院)では、基本的に手術の翌日からリハビリが開始されます。
「術後すぐに動かして大丈夫なのか」と驚かれるかもしれませんが、早期離床(ベッドから起きて動くこと)は、寝たきりによる体力・筋力低下、全身の血栓症、肺炎、床ずれ(褥瘡)、認知機能の低下といった重大な合併症を防ぐために必要不可欠です。
この時期は、痛みの状態や全身の体調に十分配慮しながら、理学療法士のサポートのもとで以下のような訓練を行います。
- ベッド上での起き上がりや車椅子への移乗
- 立ち上がり訓練および平行棒や歩行器を使った歩行練習
- 股関節や膝関節の可動域訓練、健部(健康な足や腕)の筋力維持
痛みを極力コントロールしながら、無理のない範囲で早期に足を動かす感覚を取り戻していきます。
歩く力を取り戻す回復期のリハビリ
術後2週間ほど経過し、手術による強い痛みや全身状態が落ち着いてくると、回復期リハビリテーション病棟(または回復期病院)へ移動し、より集中的な練習に入ります。
この時期は「歩行能力の改善」と「身の回りの動作の自立」を目指し、毎日長時間の専門的なリハビリを実施します。
- 歩行練習:
平行棒内での歩行から始め、経過に応じて歩行器、最終的には杖を用いた歩行へと段階的にステップアップします。 - 筋力強化・バランス訓練:
体重を支える太もも(大腿四頭筋など)や腰・お尻まわりの筋力を鍛え、ふらつきを防ぐバランス練習を行います。 - 日常生活動作(ADL)練習:
トイレへの移動・排泄、着替え、入浴、階段の昇降など、自宅へ戻ることを想定した実践的な動きを繰り返し練習します。
退院後に行う生活期のリハビリ
退院した後も、リハビリは継続することが大切です。
大腿骨骨折後は、入院時の集中的なリハビリをもってしても、骨折前の状態まで完全に筋力や体力が戻り切らないことが多いためです。
退院後は、ご自身の生活空間(ご自宅など)を中心とした「生活期リハビリ」へ移行します。
- 整形外科クリニックでの「外来リハビリ」
- 介護保険を利用した「訪問リハビリ」や「通所リハビリ(デイケア)」
- 自宅で継続する「自主トレーニング・ストレッチ」
退院後の日常生活そのものをリハビリの場と捉え、安全に立つ・歩く動作の質を維持・向上させることが、活動範囲を維持するために重要となります。
大腿骨骨折のリハビリはいつまで続ける?
大腿骨骨折における手術からリハビリまでの全体的な回復期間は、おおむね6ヶ月間(約半年)がひとつの大きな目安とされています。
ただし、これはあくまで標準的な指標であり、受傷する前の歩行能力、ご年齢、持病や認知症の有無などによって実際の経過には個人差があります。
目標となる到達点も、個々の状態に合わせて「身の回りの動作(トイレや着替え、室内移動)が一人で安全にできること」に置かれます。
また、医療保険制度における大腿骨骨折後のリハビリテーション実施期間は、原則として「手術日または受傷日から150日(約5ヶ月)」が算定上限と決められています。(※要支援や要介護などの介護認定を受けていない場合はその後も維持リハビリは可能です。)
この150日の上限を迎えたあとや退院後は、必要に応じて公的介護保険制度を活用したリハビリサービスや、整形外科クリニックでの自費リハビリ・外来リハビリへとスムーズに移行し、身体機能を維持していくことになります。
参考:日本整形外科学会・日本骨折治療学会|大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン2021(改訂第3版)
退院後もリハビリは必要?
退院後もリハビリを継続することは極めて重要です。
退院は「治療のゴール」ではなく、新しい生活のスタートに過ぎないためです。
入院中とは異なり、退院後は意識的に動かない限り、1日の中で専門的な指導を受けて足を動かす時間が大きく減少してしまいます。
もし退院後に何も行わずに過ごしてしまうと、一度回復した筋力や歩行機能が徐々に低下してしまうでしょう。
身体機能が低下すると、歩行時のふらつきが増し、再び転倒して今度は「反対側の太もも」や「背骨」を骨折してしまうという悪循環(ドミノ骨折)に陥るおそれがあります。
最悪の場合、これがきっかけとなって自立した生活が難しくなり、寝たきり状態へ繋がってしまうケースも少なくありません。
退院後の生活を支える選択肢としては主に以下のようなサービスがあります。
- 外来リハビリ(整形外科通院):
理学療法士などの専門家が、歩行能力や筋力を「元に戻す・引き上げる」ことを目指してマンツーマンで指導を行います。 - 訪問リハビリ・通所リハビリ(介護保険):
ご自宅の環境に合わせた生活動作の確認や、現状の身体機能を「維持する」ことを中心にサポートします。
ご自身の目標や体調に合わせて、適切な通院・継続先を確保することが大切です。
退院後のリハビリと再発予防はイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックへ
大腿骨骨折を起こされた方の多くは、その背景に骨の密度が低下する「骨粗鬆症」を抱えています。
そのため、退院後に質の高いリハビリを継続して歩く力を守ることと同時に、再発を防ぐための根本的な骨粗鬆症治療を同時に行うことが大切です。
なお、骨粗鬆症の治療における中心は、専門医による「骨吸収抑制薬」や「骨形成促進薬」などの注射や内服を中心とした薬物治療です。
食事の改善や適度な運動も骨の健康維持には大切ですが、それら「だけ」で一度低下した骨密度を大幅に改善することは困難であるため、適切な医療介入が不可欠となります。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックでは、「何歳になっても自分の足で動ける」状態を目指し、退院後の患者様を総合的にサポートしております。
- 再発を防ぐ骨粗鬆症の専門診療:
精密な骨密度測定(DEXA法)や血液検査に基づき、医師が適切な薬物治療をご提案します。骨を内側から強くし、二度目の骨折を起こさないための予防に力を入れています。 - 一人ひとりに合わせた外来リハビリ:
理学療法士がマンツーマンで指導を行い、退院後の歩行能力や日常生活動作のさらなる改善をしっかりと支援します。 - 痛みを我慢させない先進治療の提案:
リハビリ中に生じる膝や腰などの関節痛、慢性的な痛みの緩和に向けて、体外衝撃波治療や再生医療といった選択肢も組み合わせ、スムーズな機能回復をサポートします。
「退院後のリハビリ先を探している」「二度と骨折したくないため骨の検査を受けたい」とお考えの患者様・ご家族様は、ぜひ一度イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックまでお気軽にご相談ください。
【FAQ】大腿骨骨折のリハビリに関するよくある質問
大腿骨骨折のリハビリについて、よくある質問に回答いたします。
Q:大腿骨骨折後はまた歩けるようになりますか?
A:適切な手術とリハビリを行うことで、再び歩けるようになる方も少なくありません。
ただし、回復の程度には個人差があります。
受傷する前の歩行能力や年齢、認知機能、リハビリへの取り組み方によって、回復の到達点は変わります。
骨折前は杖なしで歩けていた方が杖を使うようになるなど、歩行のレベルが一段階変わることが多いので、転倒前は歩行器で何とか歩いていた方は車椅子生活を強いられることも多いのが現状です。
また、術後1日でも早くリハビリを始め、退院後も続けることで、回復の可能性は高まります。
Q:自宅でもリハビリはできますか?
A:自宅での運動やストレッチは、回復を支えるうえで役立ちます。
ただし、自己判断で進めることには注意が必要です。
大腿骨骨折の手術後は、骨折の状態や手術法によって、足にどこまで体重をかけてよいかという荷重制限が決められている場合がありますが、多くの場合は翌日から全体重を掛けて立ったり歩行の練習が可能になります。
リハビリでの注意事項を守らないと脱臼したり再度転倒して再骨折につながったりするおそれがあります。
自宅で行う運動の内容は、必ず医師や理学療法士の指導に沿って進めることが大切です。
Q:リハビリで痛みは強くならないですか?
A:リハビリは、痛みや体調に配慮しながら段階的に進めていきます。
手術直後は痛みへの不安が大きいものですが、担当の理学療法士が、痛みの少ない起き上がり方や立ち上がり方から練習を始めます。
強い痛みを我慢して無理に進めるものではないため、痛みが気になる場合は、その都度理学療法士に伝えながら取り組んでいきます。
Q:リハビリの費用や期限はどうなりますか?
A:医療保険を使った大腿骨骨折後のリハビリは、原則として手術日または受傷日から150日が標準的な算定期間とされていますが、患者様の状態や医師の判断によっては、期間を過ぎても継続できる場合があります。
この期間を過ぎても継続が必要な場合は、退院後に近所の整形外科クリニックの外来リハビリでの自費リハビリや、介護保険を利用したサービスへと移行します。
また、入院や手術にかかる費用については、高額療養費制度を利用することで自己負担を抑えられる場合があります。
費用面で不安がある場合は、医療機関の窓口やソーシャルワーカーに相談してみてください。
まとめ
大腿骨骨折のリハビリについて、重要なポイントを整理します。
- 早期開始がカギ:
手術の翌日からリハビリが始まり、寝たきりによる体力・筋力の低下を防ぐことが重要。 - 段階的なプロセス:
急性期(手術直後)、回復期(集中的な歩行・生活練習)、生活期(退院後の維持・改善)へと段階を踏んで進む。 - 目安期間:
リハビリの全体的な期間は約6か月が目安となるが、個人の状態や骨折前の体力によって到達点は異なる。 - 退院後が本番:
退院後も外来リハビリなどで運動を継続しないと、筋力が再低下して転倒・再骨折・寝たきりに繋がるリスクが高まる。 - 骨粗鬆症の治療が必須:
再骨折を防ぐには、食事や運動だけでなく、医師による専門的な薬物治療で骨粗鬆症そのものを根本改善することが不可欠。
大腿骨骨折後の「本当の回復」と「将来の安心」を手に入れるには、退院後もリハビリを怠らず、再発の原因となる骨粗鬆症へアプローチし続けることが大切です。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックでは、患者様一人ひとりの状態に寄り添った丁寧な外来リハビリと、専門的な骨粗鬆症治療を一貫してご提供しております。
「退院後の歩行に不安がある」「もう二度と骨折したくない」とお悩みの方は、ぜひお気軽に当院までご相談ください。
この記事の監修医師
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉
経歴
- 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
- 平成23年 東邦大学 医学部卒
- 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
- 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
- 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
- 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
- 平成30年 渡辺整形外科 副院長
- 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
- 令和6年 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長
