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変形性膝関節症の運動療法|痛みを和らげるトレーニング法と続け方のポイント

※本記事は、整形外科専門医・イノルト整形外科 統括院長 渡邉順哉医師の監修のもと執筆しています。

変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減って関節に負担がかかり、痛みや違和感が現れる疾患です。

運動療法によって膝周囲の筋力を高めることで、関節の安定性を保ち、痛みの軽減が期待されます。

痛みを和らげるためのトレーニング

膝への負担を減らしながら筋力をつけるためには、「ウォーミングアップ」・「筋力トレーニング」・「有酸素運動」の3つを組み合わせることが大切です。

また、運動療法を始める際は、医師や理学療法士に相談し、自分の状態に合った方法を確認してから行いましょう。

ウォーミングアップ(準備運動)

ウォーミングアップは、痛みを感じない範囲で無理せず行いましょう。

膝の曲げ伸ばし(寝て行う方法)

  1. 仰向けに寝て、片方の膝を立てる。
  2. もう片方の脚は伸ばしたまま、ゆっくりと膝を曲げ、かかとをお尻に近づける。
  3. 痛みを感じないところまで曲げたら、ゆっくりと元に戻し、左右それぞれ10回程度繰り返します。

ベッドなど滑りやすい場所で行うと、急激に膝が動いてしまうため注意が必要です。

太ももの前の筋肉の活性化

  1. 仰向けに寝るか、椅子に座って脚を伸ばす。
  2. 膝の下に丸めたタオルを入れる。(なくてもOK)
  3. 膝の裏を下に押し付けるように太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)に力を入れ、膝のお皿を太ももの方に引き上げるように意識し、膝の裏やタオルを床に押し付ける。
  4. 5秒〜10秒キープし、ゆっくりと力を抜く。
  5. これを10回程度繰り返す。

太ももの裏側(ハムストリングス)のストレッチ

  1. 椅子に座り、片足を前に伸ばしてかかとを床につける。
  2. 背筋を伸ばし、股関節から体をゆっくりと前に倒す。
  3. 太ももの裏に軽い伸びを感じる位置で、20〜30秒キープ。
  4. これを左右とも行う。

膝の痛みが強い場合は無理をせず、痛みのない範囲で行うか、もしくはこのストレッチは飛ばして早めに整形外科専門医に診察してもらいましょう。

太ももの前側のストレッチ

  1. 壁や椅子に手をついて立つ。
  2. 片方の足首を手でつかみ、かかとをお尻に近づけるようにゆっくりと引き寄せる。
  3. 太ももの前側に軽い伸びを感じる位置で、20〜30秒キープ。
  4. これを左右とも行う。 

バランスを崩しやすい場合や、痛みが強い場合はこのストレッチを避けましょう。

関連記事:変形性膝関節症の治し方|手術や薬と筋力トレーニング・再生医療も解説

太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛えるトレーニング

大腿四頭筋セッティング(クアドセッティング)

  1. 仰向けに寝るか、床に座って両脚を伸ばす。
  2. 膝の下(膝の裏)に、丸めたタオルやクッションを置く。
  3. 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)にギュッと力を入れ、
    タオルを床に押しつけるように膝を伸ばす。
  4. 太ももの前が硬くなっていることを確認し、その状態を5秒〜10秒キープ。
  5. ゆっくりと力を抜く。
  6. 10~20回を1セットとして、無理のない範囲で2~3セット行う。

痛みが強い場合にもできるトレーニングです。

膝のお皿を、太ももの付け根に向かって引き上げるイメージで行うと効果的です。

膝伸ばし運動(レッグエクステンション・座って行う)

  1. 椅子に深く腰かけ、背筋を伸ばします。(手は椅子の座面や肘掛けに添えて安定させる。)
  2. 片方の脚を、膝がまっすぐになるまでゆっくりと持ち上げて伸ばす。
  3. 太ももの前が緊張しているのを感じながら、その状態を5秒〜10秒キープ。
  4. ゆっくりと元の位置に戻す。
  5. 左右それぞれ10~15回を1セットとし、無理のない範囲で2~3セット行う。

椅子に座って行うため、膝に体重をかけず安全に大腿四頭筋を鍛えられます。

膝にやさしい有酸素トレーニング

有酸素トレーニングは、やり方やレベルを間違えるとかえって膝へ負担がかかります。

医師や理学療法士のアドバイスのもと、適切な方法で行いましょう。

エアロバイク(フィットネスバイク/自転車)

【エアロバイクを行うときのポイント】

  • 痛みがあるときは5分くらいがよい
  • 痛みが出ないことを確認しながら行う
  • 慣れてきたら10分~15分ほど行う
  • 負荷は最も軽く設定し、会話ができる程度の余裕のあるペースでゆっくりこぐ

エアロバイクは、膝に負担をかけにくい運動の一つとしてよく用いられます。

水中ウォーキングまたは水泳

【水中ウォーキングのポイント】

  • 水深は一般的に、胸から腰程度の水深で行うと、適切な負荷と浮力が得られる
  • 背筋を伸ばし、ゆっくりとしたペースで歩くこと

【水泳をする場合のポイント】

  • クロールや背泳ぎなど、膝を大きく曲げ伸ばししない泳法がおすすめ
  • 膝への負担が少ない浮力を使う運動(ビート板など)を選ぶとよい
  • 膝を使う平泳ぎは避ける

水中で行う運動は、体重による負荷を軽減できるため、膝の痛みがある方でも比較的取り組みやすい運動方法です。

関連記事:変形性膝関節症の症状|痛みの特徴など初期症状のセルフチェック

変形性膝関節症の方がトレーニングを続けるためのポイント

トレーニングは「たくさん行えば効果が出る」と思われがちですが、変形性膝関節症の方は、適切なタイミングと運動量を守ることが大切です。

以下のポイントを踏まえ、症状が悪化しないように注意しながら行いましょう。

痛みの有無を基準にして無理をしないこと

第一に、痛みの有無を目安にし、無理をしないことが大切です。

トレーニング中や運動後に鋭い痛みが出た場合は、すぐに中止するか、内容を見直して膝への負荷を減らさなければなりません。

痛みを我慢して続けると、膝への負担が増え、症状が悪化するおそれがあります。

専門家の指導のもとで低負荷で続けること

運動は独断で始めず、医師や理学療法士などの専門家へ相談し、自分に合った負荷や回数を決めてもらいましょう

指導を受けた低負荷の運動から始めることで、膝への過剰な負担を避け、安全に筋力や柔軟性を高められます。

徐々に慣れてきた段階で、専門家の指導を受けながら、徐々に運動量を増やしていくとよいでしょう。

完璧を目指さず習慣化していくこと

効果を焦って急に運動量を増やすのではなく、無理のない範囲で少しずつ習慣化していくことが重要です。

週に数回、1日10分など短い時間から継続することを目標に、休む日を取り入れながら運動を生活の一部にしていきましょう。

関連記事:膝の痛みで病院に行くタイミングとは?治療と再発予防のポイントを解説

変形性膝関節症でお悩みの方はイノルト整形外科まで

膝の痛みや違和感は、生活の質に大きく影響します。

「年齢のせい」と諦めず、気になる症状がある場合は早めに専門医に相談することが大切です。

イノルト整形外科痛みと骨粗鬆症クリニックでは、保存療法をはじめ、運動療法や再生医療まで幅広い治療法を用意しています。

医師や理学療法士の指導のもとで運動を行うことで、安心して取り組むことができます。

院内の診察はもちろん、電話やWEBフォーム、LINEなどからも簡単に予約や相談が可能です。

専門医と一緒に自分の膝に合った運動プランや治療法を見つけ、無理なく日常生活を取り戻しましょう。

まとめ

変形性膝関節症の運動療法は、膝への負担を軽減しながら、筋力を徐々に高めていくことが目的です。

「ウォーミングアップ」・「筋力トレーニング」・「有酸素運動」を無理なく継続し、痛みが強い場合は、無理せず運動を中断し、必要に応じて専門家に相談しましょう。

専門家の指導のもとで運動を習慣化し、膝の安定性や生活の質改善を目指しましょう。

この記事の監修医師

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉

経歴

  • 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
  • 平成23年 東邦大学 医学部卒
  • 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
  • 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
  • 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
  • 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
  • 平成30年 渡辺整形外科 副院長
  • 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
  • 令和6年  イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長