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変形性膝関節症の治し方|手術や薬と筋力トレーニング・再生医療も解説

※本記事は、整形外科専門医・イノルト整形外科 統括院長 渡邉順哉医師の監修のもと執筆しています。

膝の痛みや違和感が続き、「階段の昇り降りが辛い」「正座ができない」と感じる場合は、変形性膝関節症のサインかもしれません。

放置すると軟骨が徐々にすり減り、歩行に支障をきたす場合があります。

本記事では変形性膝関節症の治療法として、保存療法から手術・再生医療まで、症状の進行度に応じた治療の選択肢を解説します。

変形性膝関節症は自力で治せる?

変形性膝関節症は、自力だけで完全に改善することは難しいとされています。

膝関節の軟骨は一度すり減ると自然に再生しにくいため、放置しても元通りになることはないのです。

ただし、運動療法や生活習慣の改善によって、痛みを軽減したり進行を遅らせたりすることは可能です。

早期の段階で整形外科を受診し、自分に合った治療を始めることが、進行を抑えるための第一歩になります。

関連記事:両ひざの変形性膝関節症の特徴|診断基準や進行を防ぐためのポイントとは?

手術をしないで症状を改善する「保存療法」

手術を行わずに症状の緩和や進行抑制を目指す治療法を「保存療法」といいます。

運動療法と薬物療法の2種類があり、症状の程度に応じて組み合わせて行います。

運動療法

膝を支える筋肉を鍛え、関節への負担を軽減する目的で行われます。

特に太ももの前側にある大腿四頭筋を強化すると、膝が安定し、痛みの軽減につながります。

【筋力トレーニングの例:太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)の強化】

  • 脚上げ体操
    仰向けや椅子に座った状態で、膝を伸ばしたままゆっくりと脚を持ち上げ、数秒キープしてからゆっくりと下ろします。
    1日10回程度から始めるのがおすすめです。
  • タオルつぶし 
    膝の下に丸めたタオルを置き、それを押しつぶすように膝の裏に力を入れます。
    数秒キープして力を抜く動作を10回ほど繰り返します。

【ストレッチの例・関節可動域訓練】

  • 太ももの前側の筋肉のストレッチ
    横向きに寝て上側の足首を持ち、かかとをお尻に近づけるように曲げます。
    太ももの前側が伸びたと感じたら、そのまま20~30秒キープします。
  • 膝の曲げ伸ばし(可動域訓練)
    座った状態で、かかとを床に滑らせるようにゆっくりと膝を曲げ伸ばしします。
    痛みが出ないことを確認しながら、無理のない範囲で行うことが大切です。

【膝への負担が少ない有酸素運動の例】

  • 水中ウォーキング・スイミング
    水の浮力で膝への負担が少なく、膝を痛めずに全身を動かせる運動です。
  • エアロバイク
    サドルの高さを調整し、膝を深く曲げすぎないようにしながら5~10分程度行います。

薬物療法

痛みや炎症を抑えることで、日常生活を送りやすくすることを目的に行われます。

内服薬(飲み薬・坐薬)

【非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)】

  • 炎症を抑え、痛みを和らげるために最も一般的に使用される薬です。
  • 長期使用による胃腸障害(胃潰瘍など)に注意が必要です。
  • COX2阻害薬は、従来のNSAIDsより胃腸への負担が少ないNSAIDsもあります。

【アセトアミノフェン】

  • 主に鎮痛作用があり、NSAIDsに比べて副作用(特に胃腸への負担)がほとんどない薬です。
  • 高齢者、子供のほか胃が弱い人などにもよく使われますが、やや鎮痛効果は弱くなります。

【オピオイド鎮痛薬】

上記の薬で痛みが改善せず、強い慢性痛がある場合に限り使用されます。

外用薬(湿布・塗り薬)

【NSAIDs含有の外用薬】

  • 湿布(テープ剤、パップ剤)、塗り薬(ゲル、クリームなど)があります。
  • 患部に直接作用して、炎症と痛みを和らげます。
  • 全身への影響が少ないため、比較的副作用のリスクが低いのが特徴です。

関節内注射薬

【ヒアルロン酸製剤注射】

  • 関節の滑りを良くし、衝撃を和らげるために関節内に直接注入します。
  • 比較的軽度〜中等度の症状で使用されることが多く、痛みの軽減が期待されます。

【ステロイド製剤注射】

  • 炎症や腫れ、痛みが非常に強い場合、短時間で抑える目的で使用されます。
  • 関節内を脆くさせる諸刃の剣となるため、基本的にはあまり使わない方が良いです。

関連記事:変形性膝関節症の症状と対処法|進行を防ぐために知っておきたいこと

手術による治療方法

保存療法で改善が見られない場合や、関節の変形が進行している場合は、手術による治療が検討されます。

【軽度〜中程度】関節鏡視下手術

膝を小さく切開し、内視鏡を膝関節内に挿入して関節内を観察します。

傷ついた軟骨の破片を取り除いたり、関節の表面を滑らかに整えたりといった目的で行われます。

傷口が小さく、入院期間が短いのも特徴的です。

【軽度〜中程度】高位脛骨骨切り術

膝関節の下にある脛骨を部分的に切り、角度を調整して膝の内側と外側の荷重バランスを改善する手術です。

特に内側(または外側)のみの軟骨がすり減っていて、前十字靭帯が切れていないタイプに有効で、自分の関節を温存できる点がメリットです。

【重度】人工膝関節置換術

軟骨や骨が大きく損傷している場合には、人工関節に置き換える手術を行います。

末期まで進行してしまった変形性膝関節症にも行うことができる手術ですが、膝に対する手術によるダメージは大きいため、術後の痛みは一時的に強くなりがちです。

人工関節は合金や樹脂でできており、痛みの大幅な軽減とともに歩行の安定性がアップします。

手術技術やリハビリの進歩により、多くの方で日常生活動作の改善が報告されています。(回復には個人差があります)

ただし、正座や膝に負担のかかりやすいスポーツは制限しなければならない場合があります。

再生医療による治療方法

近年は、従来の治療では改善しにくかったケースに対し、再生医療が注目されています。

自分の細胞や血液を利用し、軟骨や組織の修復を目指す新しい治療法です。

幹細胞治療

脂肪や骨髄に含まれる幹細胞を取り出し、関節内に注入して炎症を抑える再生医療です。

軟骨の再生が促される可能性があり、痛みや動かしにくさの改善が期待されます。

自分の細胞を使うため拒絶反応が少なく、手術に抵抗がある方にも選ばれています。

後述のPRP療法より軟骨再生や組織修復、鎮痛ともに高い効果が期待できます。

多血小板血漿(PRP)療法・成長因子療法

自分の血液から血小板を多く含む血漿(PRP)を抽出し、膝へ注入する再生医療です。

血小板に含まれる成長因子が炎症を抑え、軟骨の修復を促す働きがあるとされ、痛みの軽減が期待されます。

最近では、血小板の細胞の殻を取り除いて濃縮フリーズドライ化するPRPの進化版の成長因子療法が、注射後の痛みも少なく人気があります。

幹細胞上清液(エクソソーム)療法

幹細胞を培養する際に作られる上澄み液には、大量のエクソソームや成長因子が含まれており、組織の修復や炎症を抑えるのにとても効果的です。

幹細胞治療やPRP治療のように自己の細胞や血液を採取する必要がなく、若年者の質の良い多量のエクソソームや成長因子を関節内に注入することができます。

自家培養軟骨移植術

自分の膝から採取した健康な軟骨細胞を培養し、数を増やしてシート状にしてから損傷部へ手術で移植する治療です。

自己細胞を利用するため拒絶反応が少なく、自然な軟骨再生を目指せる一方、人工関節置換術の時と同じくらい大きく皮膚を切開することから手術による膝のダメージも大きく、入院期間や術後のリハビリにはとても時間を要します。

また、全国でも極一部の医療機関しか行っていない治療法です。

自家培養軟骨移植術をのぞくほとんどの再生医療が保険適用外となるため、費用が高額になりやすい点に注意が必要です。

関連記事:変形性膝関節症の治し方|進行度別の治療法と日常生活の注意点

変形性膝関節症でお悩みの方はイノルト整形外科まで

変形性膝関節症は、早期の段階で適切な治療を始めることで、進行を抑えて回復を早めることができます。

イノルト整形外科痛みと骨粗鬆症クリニックでは、保存療法から再生医療まで幅広い選択肢を取り揃え、一人ひとりの症状に合わせた治療を行っています。

膝の痛みでお悩みの方は、イノルト整形外科痛みと骨粗鬆症クリニックまでご相談ください。

電話やWEBフォーム、LINEからの予約にも対応しています。

まとめ

変形性膝関節症は長期的な管理が必要な疾患のため、早めの受診と適切な治療プランの選択が大切です。

「年齢のせい」とあきらめず、気づいた段階で専門医へ相談し、自分に合った治療を見つけましょう。

この記事の監修医師

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉

経歴

  • 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
  • 平成23年 東邦大学 医学部卒
  • 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
  • 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
  • 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
  • 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
  • 平成30年 渡辺整形外科 副院長
  • 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
  • 令和6年  イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長