変形性膝関節症の治し方|進行度別の治療法と日常生活の注意点
※本記事は、整形外科専門医・イノルト整形外科 統括院長 渡邉順哉医師の監修のもと執筆しています。

変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ることで関節に炎症や変形が生じ、痛みや動きの制限を引き起こす疾患です。
治療を行わずに放置すると、歩行が困難になるなど生活の質が大きく低下する可能性があり、進行度別に最適な治療法を選ばなければなりません。
本記事では変形性膝関節症の治し方について、進行度別の治療法はもちろん、日常生活でできる工夫やセルフケアについても併せてご紹介します。
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Contents
変形性膝関節症の治し方
まず、変形性膝関節症の代表的な治療法について解説します。
患者様の状態や生活習慣によっては、複数の治療を組み合わせる場合もあります。
薬物療法
軽度から中等度の変形性膝関節症に用いられるのが薬物療法です。
消炎鎮痛薬や外用薬を使用することにより、炎症を抑えて痛みの軽減を目指します。
薬物療法は胃腸障害などの副作用に注意が必要なため、医師の指導のもとで正しく行うことが大切です。
注射治療
膝関節に直接薬剤を注入する治療法です。
代表的なのが「ヒアルロン酸注射」であり、関節内の潤滑性をよくすることで痛みの緩和を目指します。
繰り返し注射することで関節保護の効果を持っており、症状改善がしやすい場合は再生医療が効きやすいといわれています。
また、炎症が強い場合には「ステロイド注射」が選ばれることもありますが、組織をもろくしてしまい、再発しやすくもなるので、諸刃の剣の治療薬になります。
いずれも効果は一時的なものですが、痛みをコントロールし、生活の質を上げるために役立ちます。
理学療法士の施術
膝関節の可動域を広げ、筋肉の柔軟性や筋力を高めることにより、症状の軽減を目指すものです。
ストレッチ・筋力トレーニング・関節の動きを改善する運動療法などが用いられます。
多くのケースで姿勢の悪さ・筋力の弱さ・身体の固さが膝に大きな影響を与えているため、根本的治療の一つとしてとても大事な治療です。
痛みの緩和だけでなく、継続によって症状の再発を防ぐことにもつながります。
ハイドロリリース
生理食塩水などを用い、癒着した筋膜や組織を剥がす手技です。
膝周囲の可動域改善や痛みの軽減に効果があり、副作用が少ない点も特徴的です。
体外衝撃波治療
患部に衝撃波を当てることにより、組織の修復を促す治療法です。
慢性的な痛みを訴える患者様に適しており、手術を避けたい方にとって大きな選択肢の一つとなります。
より効果的な集束型体外衝撃波治療と、やや安価な拡散型体外衝撃波(圧力波)治療があります。
再生医療
患者様ご自身の血液や細胞を用い、膝関節の修復を促す治療法です。
「幹細胞治療」や「PRP療法(多血小板血漿注入)」などが代表的で、最近では類似治療として「成長因子両方」や「エクソソーム」も導入されています。
炎症の抑制や組織の修復に役立ちます。
手術療法

保存療法で改善が見込めない場合は、手術が検討されます。
こちらも症状の段階に応じて、関節鏡手術・骨切り術・人工関節置換術などから選択します。
いずれも手術後のリハビリが不可欠であり、患者様の生活スタイルや年齢を考慮することも大切です。
関連記事:変形性膝関節症の症状と対処法|進行を防ぐために知っておきたいこと
変形性膝関節症の治療法の選択

変形性膝関節症は、進行度によって治療法の選択肢が変わります。
ここでは軽度・中程度・重度に分け、治療法とセルフケアについてご紹介します。
軽度の治療法
初期では膝の違和感や軽い痛みが中心です。
早期に対応することで進行を防ぎやすくなります。
【治療法】
- 内服薬(鎮痛薬や消炎鎮痛剤)
- 外用薬(湿布や塗り薬)
- 理学療法士による施術(ストレッチ・筋力トレーニング指導)
【セルフケア】

- 太ももの前側を鍛える大腿四頭筋トレーニング(スクワットなど)
- 正しい姿勢での歩行
- 膝を温めて血行を促進する
中程度の治療法
膝の腫れや動かしにくさが出てくる段階です。
痛みを抑えつつ、膝の機能を維持することが大切です。
【治療法】
- 内服薬
- 外用薬
- 理学療法士による施術(可動域改善・筋力強化プログラム)
- 体外衝撃波治療
- 再生医療(幹細胞治療・PRPなど)
- 手術(関節鏡手術・骨切り術)
【セルフケア】
- 膝に負担をかけない生活(階段昇降や正座を控える)
- 体重管理
- 膝サポーターの使用
重度の治療法
歩行困難や強い痛みが出る段階で、日常生活に大きな影響を及ぼします。
治療の中心となるのは外科的手術です。
【治療法】
- 内服薬
- 外用薬
- 理学療法士による施術(リハビリ中心)
- 再生医療
- 体外衝撃波治療
- 手術(人工関節置換術など)
【セルフケア】
- 医師や理学療法士の指導に基づいたリハビリの継続
- 杖や歩行補助具の使用
- 入浴や温熱療法で血流を改善
関連記事:変形性膝関節症の原因とは?初期症状や進行度についても解説
変形性膝関節症を治療しなかった場合のリスク
治療を行わずに放置すると、膝の関節が変形し、歩行障害や関節の可動域制限が悪化します。
その結果外出や運動が困難になり、将来的な寝たきりの状態につながる恐れもあります。
また、痛みによる活動量の低下が、肥満や生活習慣病を招く可能性も少なくありません。
早期に治療を開始することが、長期的な膝の健康維持のためには必要不可欠です。
変形性膝関節症の日常生活での注意点
日常生活での工夫が、治療効果を高め、症状の進行を防ぐカギとなります。
膝に負担をかけない
長時間の立ち仕事や正座・重いものの持ち運びは膝に負担がかかります。
体重をコントロールすることも重要で、肥満を避け、適正体重内に留めることが大切です。
バランスの取れた食事
カルシウムやビタミンD・タンパク質を意識的に摂取することで、関節や骨の健康を維持できます。
痛みを感じたときの対応
痛みが強いときは無理をせず安静を心掛けましょう。
セルフケアで痛みをなくすことは難しいため、悪化する前に早めの受診が必要です。
関連記事:膝の痛みで病院に行くタイミングとは?治療と再発予防のポイントを解説
変形性膝関節症でお悩みの方はイノルト整形外科まで
変形性膝関節症は、放置によって悪化し、歩行や生活の質に大きな影響を与えます。
まずは信頼できる整形外科専門医へ早めに相談し、自分に合った治療を受けましょう。
イノルト整形外科では、患者様一人ひとりの症状に合わせた診断と治療方針の提案を行っています。
運動療法・薬物療法・リハビリや様々な自費治療など、まずは保存療法での改善を目指せるため、すぐに手術を受けるのが不安な方も安心です。
また、イノルト整形外科には整形外科医・理学療法士など多くの専門家が在籍しており、チーム体制で治療と回復のサポートが可能です。
変形性膝関節症でお悩みの方は、ぜひ一度イノルト整形外科にご相談ください。
まとめ
変形性膝関節症は進行性の疾患ですが、早期に治療を開始し、日常生活での工夫を取り入れることで、進行を遅らせることができます。
膝の痛みや違和感がある場合は、決して我慢せず、適切な医療機関を受診するところから始めましょう。
この記事の監修医師

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉
経歴
- 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
- 平成23年 東邦大学 医学部卒
- 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
- 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
- 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
- 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
- 平成30年 渡辺整形外科 副院長
- 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
- 令和6年 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長