股関節の不調で膝が痛む?痛みの連動メカニズムとセルフケア
※本記事は、整形外科専門医・イノルト整形外科 統括院長 渡邉順哉医師の監修のもと執筆しています。
股関節の不調が原因となり、膝に痛みが出るケースは珍しくありません。
股関節に原因がある場合、膝の処置だけでは痛みを改善できない場合も考えられます。
本記事では股関節と膝の痛みがどのように関係しているのか、原因やセルフケアの方法・治療法を詳しく解説します。
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Contents
股関節の不調が膝の痛みを引き起こすことがある
股関節と膝関節は、下半身を動かす際に連動してはたらいています。股関節に不具合があると、その負担が膝関節に波及し、痛みとして現れます。
股関節の可動域が制限されたり、筋力の低下が見られたりする場合は特に注意が必要です。
特に歩行や立ち上がり動作・階段の昇り降りなど、日常生活のささいな動きに影響を及ぼす可能性もあります。
股関節と膝の痛みを同時に引き起こす主な原因
股関節と膝の痛みが同時に現れる場合、主な原因として挙げられるのは以下の4点です。
加齢による軟骨減少
加齢によって股関節や膝関節の軟骨がすり減ると、クッション機能が低下し、動作によるダメージが骨へ伝わります。
同時に靭帯のはたらきも弱まり、日常生活の簡単な動きでさえも大きな負担がかかるようになります。
姿勢の癖
片方の足ばかりに重心をかけたり猫背や座り方に癖があったりする方は、正しい姿勢に比べて関節への負担が高まります。
大人になってから姿勢を正すことは簡単ではなく、長年の癖が影響して身体のバランスが崩れている方も珍しくありません。
運動不足
運動不足によって股関節や膝関節の筋肉が衰えると、関節の安定性が低下し、動作による圧力を分散しにくくなります。
単なる日常の動作でも痛みが生じやすいほか、ダイエットなど急に思い立って激しい運動を始めることで、弱った股関節や膝に大きなダメージが及びます。
肥満
体重が重い方は、その分股関節や膝へ大きな負担がかかった状態です。
同時に運動不足状態であることも多く、弱った関節へ常に重みが加わり、痛みが生じやすくなります。
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股関節と膝の痛みをやわらげるセルフケア
以下のような簡単な体操やストレッチを取り入れることで、関節の柔軟性や筋力を保ち、痛みの予防や緩和につながります。
- 股関節回し:仰向けで膝を立て、両足をピッタリと付けた状態で左右にゆっくりと倒す。
- サイドレッグレイズ:横向きに寝た状態で上側の足をゆっくりと上げ下げする。
- ブリッジ運動:仰向けで膝を立て、身体がまっすぐになるまでお尻をゆっくりと持ち上げる。
セルフケアで改善しない股関節と膝の痛みは受診を検討
以下のような症状が見られる場合は、セルフケアを続けず、早めに医療機関を受診する必要があります。
痛みが長引く・強くなる
痛みが徐々に強くなる場合や、数週間経っても変わらずに痛む場合は、セルフケアでの改善が期待できません。
腫れや熱感がある
腫れや熱感は炎症のサインであり、放置するとさらに悪化する可能性があります。
歩くのが困難になるほどの痛み
日常生活に支障が出るほどの痛みは、専門的な判断と治療が必要です。
放置することで自然と痛む場所をかばうようになり、別の場所に痛みが出る可能性もあります。
短期間で急に悪化した場合
短期間での症状の悪化は、骨壊死や感染症が関係している可能性もあるため、早急な検査および治療が必要です。
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股関節と膝の痛みに対する主な治療法
イノルト整形外科では、股関節や膝の状態・痛みの程度などを総合的に判断し、以下のような治療が行われます。
理学療法士の施術
理学療法士はリハビリのプロフェッショナルであり、柔軟性や筋力の強化や姿勢や動作の改善などをメインに行う専門家です。
患者様一人ひとりに合わせたメニューを組み、リハビリを行います。
長期的にリハビリを行うことにより、股関節や膝関節が正しい状態で定着し、痛みの出にくい体作りを目指せます。
薬物療法(内服、外用)
痛みの一時的な緩和を目的とし、内服薬や外用薬を用いた薬物療法が行われる場合もあります。
内服薬は消炎鎮痛薬を用い、外用薬は湿布といった貼り薬や軟膏が処方されます。
ハイドロリリース
生理食塩水など身体に入れても害のない水を注入することにより、筋肉や腱の癒着を剥がし、可動域の改善や痛みの緩和を目指す施術です。
薬剤とは異なり身体に異物反応が起こりにくく、股関節・膝関節・肩・首・腰などさまざまな部位に適応します。
体外衝撃波治療(拡散型、集束型)
筋肉や腱に炎症が起きている場合や、運動不足などで筋肉が硬くなっている場合に用いられます。
痛みのある部位に圧力波や衝撃波をぶつけることで、痛みの改善を目指します。
一点に高いエネルギー波である衝撃波を集中させる「集束型体外衝撃波」と、広い面に圧力波を拡散させる「拡散型圧力波」があります。
再生医療(幹細胞治療、成長因子療法、幹細胞上清液療法)
自身の幹細胞を採取して培養したり、血液内の組織を修復させる成長因子を関節内に注入することで、組織の修復や炎症の抑制することで痛みを改善させる治療法です。
症状が軽度の方から重症な方まで幅広く適しています。
副作用が少ないですが、保険適用外で費用面が課題になりやすい治療法です。
手術療法
症状が重く上記の対策では不足すると判断した場合や、上記の治療を続けても改善が見られない場合は手術が選択されます。
変形した関節を人工のものへ交換する人工股関節置換術が一般的です。
関連記事:膝の痛みで病院に行くタイミングとは?治療と再発予防のポイントを解説
股関節と膝の痛みでお悩みの方はイノルト整形外科まで
イノルト整形外科では、股関節や膝をはじめとする関節の痛みに対し、一人ひとりに合った診療を行っています。
原因を特定するための診断方法はもちろん、今回ご紹介したようなさまざまな治療法を用意しており、患者様に合うオーダーメイドの治療をご提供します。
イノルト整形外科では第一に「保存療法」を目的とし、手術を回避しながら症状の緩和を目指します。
医師はもちろん、理学療法士やスポーツトレーナーなど、各方面のプロが協力しながらアプローチを行います。
股関節と膝の痛みは、治療が長期化することも十分に考えられます。辛い痛みや違和感がある場合は、早めに当院までご相談ください。
まとめ
股関節の不調が膝に影響することは珍しいことではなく、単に膝を治療するだけでは根本的な改善につながりません。
痛みの原因を正しく理解するとともに、整形外科で適切な検査と治療を受け、快適な日常生活を取り戻しましょう。
股関節や膝の痛みにお悩みの方は、ぜひイノルト整形外科へご相談ください。
この記事の監修医師

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉
経歴
- 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
- 平成23年 東邦大学 医学部卒
- 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
- 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
- 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
- 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
- 平成30年 渡辺整形外科 副院長
- 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
- 令和6年 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長