【整形外科医監修】鵞足炎を早く治す方法|原因・自分でできるケア・受診の目安を解説
※本記事は、整形外科専門医・イノルト整形外科 統括院長 渡邉順哉医師の監修のもと執筆しています。
「膝の内側が痛くて走れない」「階段を下りるたびにズキッとする」といった症状が続くと、運動を続けてよいのか、病院へ行くべきなのか迷う方は少なくありません。
膝の内側の痛みの原因の一つに、鵞足炎(がそくえん)があります。鵞足炎は使いすぎだけでなく、筋肉の柔軟性や膝の向きなど、複数の要因が重なって起こることが多い状態です。
そこで本記事では、原因の仕組みから、自分でできるケア、受診の目安、整形外科での治療までを、整形外科医の監修のもとご紹介します。

Contents
鵞足炎とは?膝の内側が痛む仕組み
鵞足炎を早く治すには、まず痛みが起きている場所と仕組みを知ることが出発点になります。初めに、鵞足の構造と主な症状、似た症状が出る病気との違いから解説します。
鵞足炎の定義と痛みが出る場所
鵞足炎とは、膝の内側のやや下にある「鵞足(がそく)」と呼ばれる部分に炎症が起こり、痛みが生じる状態です。
鵞足は、太ももから伸びる縫工筋・薄筋・半腱様筋の3つの腱が、すねの骨(脛骨)の内側にまとまって付着する部分を指します。3本の腱が並ぶ形がガチョウの足に似ていることが、名前の由来とされています。
鵞足の付近には、腱と骨のこすれを和らげるクッションの役割をもつ滑液包(かつえきほう)があり、膝の曲げ伸ばしを繰り返すと、腱や滑液包に摩擦が加わり、この負担が積み重なって炎症が起こった状態が鵞足炎と考えられています。
なお、痛みが出るのは、膝のお皿の内側から数cm下あたりが一般的です。
鵞足炎で現れる主な症状
鵞足炎の代表的な症状は、膝の内側のやや下に出る痛みです。症状の程度には個人差があり、運動時だけ痛む段階から、日常生活に支障が出る段階まで幅があります。
主な症状は以下のとおりです。
鵞足炎の主な症状5項目開く閉じる
- 鵞足のあたりを指で押すと痛む
- 階段の上り下り、とくに下りるときに痛む
- 走る、ジャンプする、しゃがむなどの動作で痛みが強まる
- 膝の内側に腫れや熱っぽさがある
- 進行すると、安静にしていても痛む
初期は運動中や運動後に痛む程度でも、負担をかけ続けると安静時にも痛むようになることがあります。
ただし、これらの症状は鵞足炎以外の病気でもみられます。症状だけで自己判断せず、気になる場合は医師の診察を受けることをおすすめします。
膝の内側が痛む他の病気との違い
膝の内側の痛みは、鵞足炎のほかにもいくつかの病気で起こります。痛む場所や痛みが出るきっかけに違いがあり、代表的なものを比較すると以下のようになります。
| 病名 | 痛みが出やすい場所 | 起こりやすい場面・特徴 |
|---|---|---|
| 鵞足炎 | 膝の内側のやや下(すねの骨の上部内側) | 運動の繰り返しで徐々に痛む押すと痛む |
| 変形性膝関節症 | 膝の内側の関節部分 | 中高年に多い立ち上がりや歩き始めに痛む進行すると膝の変形がみられる |
| 内側半月板損傷 | 膝の内側の関節のすき間 | ひねる動作で痛む引っかかり感や、膝が急に動かなくなる(ロッキング)ことがある |
| 内側側副靱帯損傷 | 膝の内側の側面 | 転倒や接触などで膝が内側に倒れる力を受けたあとに痛む不安定感が出ることがある |
なお、変形性膝関節症と鵞足炎が同時に起こっている場合もあり、痛む場所だけで病気を見分けるのは難しく、正確な診断には、医師による診察や画像検査が必要になります。
膝の内側の痛みが続く場合や、どの病気による痛みか判断に迷う場合は、まずは整形外科で相談してみてください。
鵞足炎の主な原因|鵞足に負担が集中する3つの要因
鵞足炎は一つの原因だけで起こるとは限らず、「負担の量」「筋肉の状態」「身体の条件」の3つが重なって発症することが多いとされています。
ここでは、それぞれの要因と、鵞足炎になりやすい人の特徴を解説します。
膝の曲げ伸ばしの繰り返しと急な運動量の増加
鵞足炎のもっとも代表的な原因は、膝の曲げ伸ばしを繰り返すことによる使いすぎ(オーバーユース)です。
鵞足に付着する3つの腱は、膝を曲げる動きや、すねを内側にひねる動きに関わっています。そのため、膝を何度も曲げ伸ばしするたびに腱と骨、腱同士がこすれ、負担が蓄積していきます。
とくに、ランニングやサッカー、バスケットボール、バレーボールなど、走る・跳ぶ・方向転換する動作が多いスポーツで起こりやすい傾向があります。
また、練習量や走る距離を急に増やした時期や、しばらく休んでいた運動を再開した直後は、身体が負荷に慣れていないため発症のきっかけになりやすいといえます。
そのほか、スポーツをしていない方でも、しゃがむ・立ち上がるといった動作の多い仕事で膝を酷使している場合は、同じように負担が積み重なることがあります。
太ももの筋肉の柔軟性や筋力の低下
鵞足につながる筋肉は、太ももの裏側や内側を通っています。これらの筋肉が硬くなると、膝を動かすたびに腱が強く引っ張られ、鵞足部への摩擦やストレスが大きくなります。
- 筋肉太ももの裏側や内側の筋肉が硬くなる
- 腱膝を動かすたびに腱が強く引っ張られる
- 鵞足鵞足部への摩擦やストレスが大きくなる
柔軟性が低下する背景には、運動前後のストレッチ不足や準備運動をせずに急に走り出す習慣、加齢による筋肉の硬さなどがあります。「スポーツをしていないのに鵞足炎になった」というケースでは、こうした柔軟性の低下が関係していることも少なくありません。
さらに、太ももやお尻まわりの筋力が落ちると膝を安定して支えにくくなり、フォームが崩れて鵞足に負担が偏る原因となることがあります。柔軟性と筋力の両方が、鵞足への負担の大きさを左右するという構造になっています。
膝の向きや体重など身体の条件
運動量や筋肉の状態に加えて、身体の条件も鵞足炎の起こりやすさに影響すると考えられています。主な要因は以下のとおりです。
鵞足炎に影響する身体の条件6項目開く閉じる
- 走る、しゃがむときに膝が内側に入る動き(ニーイン)
- O脚やX脚など、膝の向きのくせ
- 足に合わない靴や、クッション性の低い靴の使用
- アスファルトなど硬い路面での運動
- 体重の増加による膝への負担
- 変形性膝関節症など、膝の関節そのものの変化
膝が内側に入る姿勢や脚の形のくせがあると、膝を曲げ伸ばしするたびに鵞足部が引き伸ばされ、負担が集中しやすくなります。
また、変形性膝関節症で膝の形が変わってくると、周囲の腱にかかる力のバランスも変わるため、鵞足炎を併発する場合があります。
鵞足炎になりやすい人の特徴
鵞足炎になりやすい人には、以下のような特徴があります。
鵞足炎になりやすい人の特徴7項目開く閉じる
- ランニングや球技など、膝の曲げ伸ばしが多いスポーツをしている
- 最近、練習量を増やした、または運動を再開したばかり
- 運動前後にストレッチをほとんどしない
- 太ももの裏や内側が硬いと感じる
- 走るときやしゃがむときに膝が内側に入りやすい
- 体重が増えてきた
- 中高年で、膝の関節に変形があると指摘されたことがある
当てはまる項目があるからといって、必ず鵞足炎になるわけではありません。
しかし、複数の要因が重なるほど鵞足への負担は大きくなりやすいため、痛みが出始めた段階で自分の身体の状態や運動習慣を見直すことが、早い回復につながります。
ご自分の痛みがどの要因から来ているのか分からない場合は、整形外科で身体の状態を確認してもらうのも一つの方法です。

鵞足炎を早く治すために|自分でできるケア・避けたい行動
鵞足炎を早く治すために意識したいのは、痛みの段階に合わせて「休む」「冷やす」「伸ばす」「負担を減らす」ケアを使い分けることです。
ここでは、段階ごとの考え方から、具体的なストレッチの方法、避けたい行動までご紹介します。
痛みの段階に合わせてケアを変える
鵞足炎のケアは、痛みが強い時期に無理にストレッチや運動をすると、かえって炎症を長引かせる可能性があるため、そのときの痛みの強さによって優先すべきことが変わります。
段階ごとの目安は以下のとおりです。
痛みの段階ごとのケアの目安3段階開く閉じる
- 1痛みが強い時期主な状態歩く・階段で痛む押すと強く痛む熱っぽさがある優先したいケア痛みが出る運動を休むアイシング
- 2痛みが落ち着いてきた時期主な状態日常生活ではほとんど痛まないが、運動すると痛む優先したいケアストレッチ軽い筋力トレーニング
- 3運動を再開する時期主な状態運動しても痛みがほとんど出ない優先したいケア負荷を少しずつ戻す靴やフォームの見直し
痛みが出始めたばかりの軽い段階であれば、こうしたセルフケアで症状が落ち着く場合もあります。
ただし、回復までの期間は、軽い場合で数週間、長引いている場合は数か月かかることもあり、痛みの程度や原因への対処の仕方によって個人差があります。
なお、セルフケアを続けても改善しない場合や、痛みが強くなる場合は、自己判断で続けず整形外科を受診してください。
痛みが強い時期は運動量を減らして安静にする
痛みが強い時期にもっとも優先したいのは、鵞足への負担を減らすことです。ランニングやジャンプ、階段の駆け上がりなど、痛みが出る動作はいったん控えましょう。
痛みを我慢して運動を続けると、炎症が治まらないまま負担が重なり、回復が遅れる原因となることがあります。
また、部活動や大会を控えている場合も、痛みのある状態で練習量を維持するより、一時的に運動量を減らすほうが、結果として早い復帰につながりやすいケースもあります。
一方で、まったく動かさない期間が長くなると、太ももの筋力が落ちて膝を支えにくくなります。痛みのない範囲での歩行や日常生活の動作は続け、痛みが落ち着いてきたら少しずつストレッチや軽い運動を取り入れていくようにしましょう。
アイシングで炎症による痛みをやわらげる
運動後に痛みが出たときや、膝の内側に熱っぽさがあるときは、患部を冷やすアイシングで炎症による痛みをやわらげる効果が期待できます。
アイシングの手順は以下のとおりです。
- 1氷のうや保冷剤を用意する
- 2皮膚に直接当てず、薄いタオルで包む
- 3膝の内側のやや下、痛む部分に当てる
- 410〜15分程度を目安に冷やす
なお、熱っぽさが引いて痛みが慢性的になってきた時期は、入浴などで温めて筋肉の緊張をゆるめるほうが楽に感じる場合もあります。
冷やすか温めるか迷うときは、医師や理学療法士に相談すると安心です。血行障害や感覚の障害がある方も、アイシングの前に医師へ相談してください。
痛みが落ち着いてから始めるストレッチ
日常生活で痛みをほとんど感じなくなってきたら、鵞足につながる太ももの裏側と内側の筋肉をストレッチで伸ばしていきます。
前述したように、これらの筋肉の硬さは鵞足への負担を大きくする要因の一つです。柔軟性を取り戻すことで、回復を後押しし、再発の予防につながることがあります。
ストレッチを行う際は、以下の点を意識してください。
ストレッチで意識したいこと5項目開く閉じる
- 反動をつけず、ゆっくり伸ばす
- 「気持ちよく伸びている」と感じる程度で止める
- 呼吸を止めずに行う
- お風呂上がりなど、身体が温まっているときに行う
- 毎日少しずつ続ける
太ももの裏を伸ばすストレッチ
太ももの裏側(ハムストリングス)は、鵞足を構成する半腱様筋を含む筋肉群です。仰向けで行うと、腰に負担をかけずに伸ばせます。
- 1仰向けに寝て、伸ばしたい側の足裏にタオルをかける
- 2タオルの両端を手で持ち、膝を伸ばしたままゆっくり脚を持ち上げる
- 3太ももの裏が伸びていると感じる位置で20〜30秒ほどキープする
- 4ゆっくり脚を下ろし、2〜3回繰り返す
なお、膝を無理にまっすぐ伸ばそうとせず、少し曲がっていても構いません。
太ももの内側を伸ばすストレッチ
太ももの内側には、鵞足を構成する薄筋や縫工筋が通っています。座ったまま行えるため、日常に取り入れやすいストレッチです。
- 1床に座り、両足の裏を合わせる
- 2両手で足先を持ち、かかとを身体に無理のない範囲で近づける
- 3背すじを伸ばしたまま、上体をゆっくり前に倒す
- 4太ももの内側が伸びていると感じる位置で20〜30秒ほどキープする
なお、膝を手で無理に押し下げると、膝の内側に負担がかかるため避けてください。
ストレッチを中止する目安
ストレッチは、痛みを我慢して行うものではありません。以下のような場合は、いったん中止してください。
- ストレッチ中に膝の内側の痛みが強くなる
- ストレッチをした翌日に痛みが残る、または強くなっている
- 膝の内側の腫れや熱っぽさが増している
- しびれなど、いつもと違う感覚がある
中止しても痛みが続く場合は、ストレッチの方法や強さが合っていない可能性や、鵞足炎以外の原因が隠れている可能性もあります。医師や理学療法士に相談し、ご自分の状態に合った方法を確認するようにしてください。
インソールや靴・運動のフォームを見直す
鵞足炎が起こる背景に、靴や運動フォームの問題が関わっている場合は、その見直しが負担の軽減につながります。
靴は、足のサイズに合っていて、かかとがしっかり安定するものを選びましょう。すり減った靴底やクッション性の低い靴を使い続けていると、着地の衝撃や足のねじれが膝へ伝わりやすくなります。
また、足のアーチや着地のくせによっては、インソール(靴の中敷き)を使うことで鵞足への負担を減らせる場合もあります。
運動時は、走る・着地する・しゃがむといった場面で、膝がつま先より内側に入っていないかを意識してみてください。
なお、膝のサポーターやテーピングは一時的に負担を和らげる目的で使われることがありますが、サポーターで膝を長期間固定し続けると、膝まわりの筋力が落ちやすくなる点に注意が必要です。使用する場合は、使う期間や場面について医師や理学療法士に相談するようにしてください。
早く治すために避けたい行動と再発予防
鵞足炎を早く治すには、良いケアを取り入れることと同じくらい、回復を妨げる行動を避けることが大切です。避けたい行動は以下のとおりです。
回復を妨げる、避けたい行動5項目開く閉じる
- 痛みを我慢して練習や運動を続ける
- 痛み止めを飲んで、痛みを感じない状態で運動を続ける
- 痛む部分を強く揉んだり押したりする
- 自己流で強く引っ張るようなストレッチをする
- 痛みが引いた直後に、以前と同じ運動量へ一気に戻す
また、鵞足炎は痛みが落ち着いたあとも、原因となった筋肉の硬さや運動習慣が変わらなければ繰り返すことがあります。再発を防ぐためには、以下のような日常の習慣を意識しましょう。
- 運動前の準備運動と、運動後のストレッチを習慣にする
- 練習量や走る距離は、数週間かけて少しずつ増やす
- 足に合った靴を選び、すり減ったら早めに替える
- 体重を適正な範囲に保つ
自分でのケアを続けても痛みが変わらない、繰り返してしまうという場合は、原因が別のところにある可能性も考えられます。一人で悩まず、整形外科で身体の状態を確認してもらうことをご検討ください。
鵞足炎を放置した場合のリスクと受診の目安
鵞足炎は軽い段階であればセルフケアで落ち着く場合もありますが、痛みを抱えたまま放置すると回復に時間がかかることがあります。
ここでは、放置した場合に起こりうることと、整形外科の受診を考えたい症状の目安を解説します。
放置すると起こりうること
痛みがあるのに負担をかけ続けると、炎症が治まらないまま悪化していく可能性があります。初期は運動時だけだった痛みが、歩く、階段を上り下りするといった日常の動作でも出るようになり、進行すると安静にしているときや夜間にも痛むことがあります。
- 初期運動時だけ痛む
- 悪化日常の動作でも痛む歩く、階段を上り下りする
- 進行安静時や夜間にも痛む
また、痛む膝を無意識にかばうことで歩き方やフォームが崩れ、反対側の膝や股関節、腰など、別の部位に負担が広がる原因となることもあります。崩れたフォームのまま運動を続けると、鵞足への負担がさらに偏るという悪循環につながりかねません。
さらに、炎症が長引くと慢性化し、いったん痛みが引いても再発を繰り返しやすくなると考えられています。早い段階で負担を減らし、原因に合ったケアを始めることが、結果として回復までの期間を短くすることにつながります。
整形外科の受診を検討したい症状
以下のような症状がある場合は、自己判断でセルフケアを続けるのではなく、整形外科の受診をおすすめします。
整形外科の受診を検討したい症状8項目開く閉じる
- セルフケアを2週間程度続けても痛みが改善しない
- 痛みがだんだん強くなっている
- 安静にしているときや夜間にも膝が痛む
- 膝の内側の腫れや熱っぽさが強い
- 膝の曲げ伸ばしがしにくい
- 転倒やスポーツ中のけがなど、きっかけがはっきりしたあとから痛む
- 膝に引っかかる感じがある、急に膝が動かなくなることがある
- 膝がぐらつくような不安定感がある
とくに、けがのあとからの痛みや、引っかかり感・不安定感がある場合は、冒頭でご紹介した半月板損傷や靱帯損傷など、鵞足炎以外の病気が隠れている可能性もあります。
また、上記に当てはまらなくても、痛みが気になって運動や仕事に集中できない、いつまで休めばよいか分からないといった場合も、受診を検討してよいタイミングです。
早めに原因を確認しておくことで、休む期間や運動を再開する時期の見通しが立てやすくなります。
何科を受診すればいい?
膝の内側の痛みで受診する場合は、整形外科が窓口になります。
整形外科では、医師が問診や触診で痛む場所や動作を確認したうえで、必要に応じて超音波(エコー)検査やレントゲン、MRIなどの画像検査を行います。
画像検査を組み合わせることで、鵞足炎なのか、変形性膝関節症や半月板損傷などほかの病気なのか、あるいは複数の状態が重なっているのかを確認できます。
鵞足炎と似た症状でも、原因となっている病気によって適したケアや治療は異なります。自分に合った対処法を知るためにも、まずは医師の診察で痛みの原因を確かめることが、早い回復への近道といえます。
整形外科で行う鵞足炎の診断と治療
整形外科では、診察と画像検査で痛みの原因を確かめたうえで、状態に応じた治療を組み合わせていきます。ここでは、診察の流れから、基本となる保存療法、痛みが長引く場合に検討される治療までをご紹介します。
診察と検査の流れ
整形外科での診察は、一般的に以下の流れで進みます。
- 1問診いつから、どのような動作で痛むか、運動歴やけがの有無などを確認します
- 2触診鵞足部を押したときの痛みや腫れ、熱っぽさを確認します
- 3動きの検査膝の曲げ伸ばしやひねりで痛みが出るか、膝の安定性に問題がないかを確認します
- 4画像検査必要に応じて、超音波(エコー)検査やレントゲン、MRIで腱や滑液包、関節の状態を確認します
超音波検査では、腱や滑液包の炎症の様子をその場で確認できる場合があります。レントゲンやMRIは、変形性膝関節症や半月板損傷など、鵞足炎以外の病気が隠れていないかを確認するうえで役立ちます。
検査の結果をふまえて、痛みの原因と、その方の生活や運動の状況に合わせた治療方針を医師が提案します。
基本となる保存療法
鵞足炎の治療は、多くの場合、手術を行わない「保存療法」から始めます。炎症をおさえて痛みをやわらげることと、鵞足に負担がかかる原因を改善することの両面から治療を組み立てるのが基本的な考え方です。
代表的な保存療法は、リハビリ・薬物療法・装具療法の3つです。
理学療法士によるリハビリ
リハビリでは、理学療法士が身体の柔軟性や筋力、歩き方や走り方などを評価し、鵞足に負担が集中している原因に合わせて運動療法を行います。
太もも裏や内側の筋肉のストレッチ、膝を安定させるための筋力トレーニング、フォームの修正などが中心となり、自宅で続けるセルフケアの指導も受けられます。
痛みや炎症をやわらげる目的で、超音波や電気を使った物理療法を組み合わせる場合もあります。
リハビリは原因となる身体の使い方にアプローチするため、痛みの改善だけでなく再発予防も目的としており、通院の頻度や期間は、痛みの程度や回復の状況によって異なります。
また、運動療法のあとに一時的な筋肉痛や疲労感が出ることもあるため、気になる症状は担当の理学療法士へ伝えてください。
外用薬・内服薬・注射による治療
炎症や痛みが強い時期には、薬を使って症状をやわらげます。湿布や塗り薬などの外用薬、消炎鎮痛薬の内服薬が一般的です。
外用薬では皮膚のかぶれやかゆみ、内服薬では胃の不快感や胃腸障害などの副作用が起こる場合があります。持病のある方や、ほかに飲んでいる薬がある方は、事前に医師へ伝えてください。
痛みが強い場合には、鵞足部への注射が検討されることもあります。注射では、注射部位の痛みや内出血、まれに感染が起こる可能性があります。
なお、ステロイドを含む注射は炎症をおさえる効果が期待できる一方で、繰り返し使用すると腱や皮膚への影響が懸念されるため、回数や間隔は医師が慎重に判断します。
ただし、薬はあくまで痛みや炎症をやわらげるためのものであり、痛みが軽くなった状態で以前と同じように運動を続けると、再び悪化することがあるため、リハビリと組み合わせて原因に対処していくことが望ましいです。
インソールなどの装具療法
足のアーチの崩れや着地のくせが鵞足への負担につながっている場合は、インソールを使って足元から膝にかかる力のバランスを整える方法があります。
インソールは足の形や歩き方に合わせて選ぶ必要があり、合わないものを使うと、かえって足や膝、ほかの部位に負担がかかる場合があります。使い始めに違和感がある場合は、調整について医師や理学療法士に相談してください。
なお、前述したとおり、膝のサポーターで長期間固定し続けると膝まわりの筋力が落ちやすくなります。装具は一時的な補助として、リハビリと並行して使うことが基本です。
痛みが長引く場合に検討される治療
保存療法を続けても痛みが改善しにくい場合や、慢性的な痛みが続いている場合には、ほかの治療法が検討されることがあります。
どの治療が適しているかは、痛みの原因や状態、生活スタイルなどによって異なるため、医師の診察で適応を判断します。
再生医療
再生医療は、患者様ご自身の脂肪や血液などを採取・加工し、患部に注入する治療です。鵞足炎そのものよりも、変形性膝関節症など膝の関節の状態が痛みに関わっている場合に、手術以外の選択肢として検討されることがあります。
主な治療法には、以下のようなものがあります。
主な再生医療の治療法4種類開く閉じる
- 幹細胞治療ご自身の脂肪などから幹細胞を取り出し、専用の施設で培養したうえで関節内に注入する
- 成長因子療法ご自身の血液から、組織の修復や炎症に関わる成長因子を抽出・濃縮し、患部に注入する
- 幹細胞上清液(エクソソーム)幹細胞を培養した際に得られる上澄み液を用いる治療で、ご自身ではなく他者に由来する細胞から作られたものを使用する
- 集束型体外衝撃波治療体外衝撃波治療のうち集束型を、ほかの再生医療と組み合わせて行う
いずれも採取した組織や血液の培養・加工に1〜4週間程度の期間がかかり、注入後は数か月かけて経過をみていきます。
なお、痛みの変化の現れ方には個人差があり、期待した効果が得られない場合があり、状態や治療計画によっては、複数回の治療を行うこともあります。
起こりうるリスク・副作用としては、注入後の関節の腫れや痛み、熱っぽさなどがあり、数日程度続く場合があります。幹細胞治療では、脂肪を採取した部位の痛みや内出血、まれに感染が起こる可能性もあります。
適応の判断にはMRIなどによる精密な検査が必要となるため、治療を検討する場合は、まず医師の診察で膝の状態を確認してください。
また、持病のある方や、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方、感染症にかかっている方などは、受けられない場合や注意が必要な場合があります。
ハイドロリリース
ハイドロリリースは、超音波(エコー)で患部を確認しながら、生理食塩水などを筋膜などの組織の間に注入し、組織の滑りを改善することで痛みの軽減を図る注射治療です。筋膜リリース注射とよばれることもあります。
筋肉や筋膜の硬さが痛みに関わっていると考えられ、保存療法で痛みが続いている方が対象となることがあります。注射後すぐに痛みが軽くなる場合もあれば、数日から1週間ほどかけて変化が出てくる場合もあり、効果の現れ方には個人差があります。状態をみながら、1週間ほどの間隔で複数回行うこともあります。
治療後、日常生活は当日から送れる場合が多いとされています。
起こりうるリスクとしては、針を刺す際の痛み、注射部位の内出血や出血、まれに感染や神経の損傷などがあります。
また、注射部位に皮膚のトラブルや感染がある方、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、受けられない場合や注意が必要な場合があるため、事前に医師へ相談してください。
ハイドロリリース治療については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
体外衝撃波治療
体外衝撃波治療は、皮膚の上から患部に衝撃波を当て、慢性的な痛みの軽減を図る治療です。メスや注射を使わずに行える点が特徴です。
衝撃波を広い範囲に当てる「拡散型」と、エネルギーを狙った部位に集中させる「集束型」があり、どちらを用いるかは症状や部位によって医師が判断します。照射にかかる時間は、拡散型で数分程度、集束型で10分程度が目安です。
主に、保存療法で改善しにくい慢性的な痛みが続いている方が対象となります。効果の感じ方には個人差があり、一般的には間隔をあけて複数回の照射を行います。治療後は日常生活への大きな制限は少ないとされていますが、激しい運動の再開時期は医師の指示に従ってください。
起こりうるリスク・副作用としては、照射中の痛み、照射部位の赤み、腫れ、内出血などがあります。
また、妊娠中の方、照射部位に感染や腫瘍がある方、血液をサラサラにする薬を飲んでいる方などは、治療を受けられない場合や注意が必要な場合があるため、事前に医師へ相談してください。

鵞足炎でお悩みの方はイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックにご相談ください
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックでは、膝の内側の痛みに対して、まず整形外科専門医が診察と画像検査を行い、痛みの原因を確認するところから始めます。
超音波検査やMRIなどを用いて、鵞足炎なのか、ほかの膝の病気が関わっているのかを確かめたうえで、治療方針をご説明します。
鵞足炎は身体の柔軟性や筋力、膝の使い方が関わることの多い状態のため、当院では理学療法士によるリハビリにも力を入れています。痛みの軽減だけでなく、ストレッチや筋力トレーニング、フォームの見直しなど、再発を防ぐためのセルフケアの指導も行っています。
痛みが長引いている場合には、状態に応じてハイドロリリースや体外衝撃波治療などを選択肢としてご提案することもあり、治療は患者様のご希望や生活スタイルもうかがいながら、医師と相談して決めていきます。
「セルフケアを続けても膝の内側の痛みが変わらない」「鵞足炎かどうか分からず不安」という方は、まずはお気軽に当院までご相談ください。

まとめ
鵞足炎は、膝の内側のやや下にある鵞足に炎症が起こり、痛みが生じる状態です。運動による使いすぎだけでなく、太ももの筋肉の柔軟性や筋力の低下、膝の向きや体重といった身体の条件が重なって起こることが多いといえます。
軽い段階であれば、セルフケアで症状が落ち着く場合もあります。一方で、セルフケアを続けても改善しない、安静時や夜間にも痛む、けがのあとから痛むといった場合は、鵞足炎以外の病気が隠れている可能性もあるため、整形外科での診察をご検討ください。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックでは、整形外科専門医による診察と画像検査で痛みの原因を確かめたうえで、患者様のご希望をうかがいながら治療方針を一緒に考えていきます。
「膝の内側の痛みがなかなか良くならない」「鵞足炎かどうか一度診てもらいたい」という方は、まずはお気軽に当院までご相談ください。
この記事の監修医師
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉
経歴
- 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
- 平成23年 東邦大学 医学部卒
- 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
- 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
- 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
- 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
- 平成30年 渡辺整形外科 副院長
- 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
- 令和6年 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長

