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再生医療とは?適応となる整形疾患や費用について

関節の痛みや炎症、靭帯や筋肉などの損傷に対する新たな治療法として再生医療が注目されています。

ニュースなどで耳にしたことがある方も多いと思いますが、具体的にどういった治療法なのでしょうか。

今回は再生医療の概要や、どういった整形疾患に適応できるのか、気になる費用の相場なども詳しく解説します。

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再生医療とは

再生医療とは、私たち人間がもっている自己修復力を活かし、細胞や組織などの機能を取り戻したり再生したりする治療法です。

具体的には、患者本人から未成熟な細胞を取り出し培養するか、自己の血液に含まれている成長因子を含んだ血小板を抽出して、再び患者の体内に注入します。

一部を除きほとんどの再生医療では入院する必要がなく患者への負担も最小限で済むのが特徴といえます。

ヒトの組織はつねに新陳代謝を繰り返しており、たとえば古い角質は時間の経過とともに自然と剥がれ落ちていき、新しい皮膚に生まれ変わっています。

これは皮膚に限ったことではなく、毛髪や爪、さらには骨や血液なども同様です。

このような再生する力を活かすことで、ケガや病気によって失われた組織や臓器などを取り戻せる可能性があるのです。

再生医療は医学の世界で近年注目度が高まっており、次世代を担う新たな治療法として確立されつつあります。

関連記事:膝の再生医療にかかる費用や名医の探し方|保険適用はされる?

再生医療に利用される主な細胞

再生医療では未成熟な細胞が用いられると説明しましたが、具体的にどういったものがあるのでしょうか。

幹細胞

幹細胞とは、さまざまな細胞に形を変える性質をもった特殊な細胞のことです。

ひとつの幹細胞が分裂した後、木の枝が伸びるようにさまざまな細胞に変化していくことから幹細胞とよばれます。

幹細胞にはいくつかの種類があり、それぞれ性質が異なります。

 特徴
体性幹細胞体内のさまざまな組織に存在する幹細胞

限定された種類の細胞にのみ変化

分裂回数は限定的

ES細胞胚(受精卵が分裂したあとの細胞)から作られる幹細胞

あらゆる種類の細胞に変化

無限に分裂する

iPS細胞ヒトの⽪膚から採取した細胞をもとに人工的に作られた幹細胞

あらゆる種類の細胞に変化

無限に分裂する

間葉系幹細胞

間葉系幹細胞はMSCともよばれ、骨や軟骨組織のほか、血管や心筋細胞などに変化する特徴があります。

1970年に初めて発見され、ヒトの脊髄や脂肪組織、へその緒などに存在することが分かっています。

現在では脊髄損傷などの治療を目的として、間葉系幹細胞を活用した再生医療向けの製剤が開発・製品化されています。

造血幹細胞

造血幹細胞とは、血液に不可欠な赤血球や白血球、血小板のもとになる細胞であり、骨髄内に存在しています。

がん治療などを目的として造血幹細胞を使った再生医療が用いられることもあります。

神経幹細胞

神経幹細胞とは、脳に存在する幹細胞のひとつで、脳細胞などに成熟していく細胞です。

神経幹細胞の再生医療は、事故などによる脊髄損傷やアルツハイマーなどの新たな治療法として期待されています。

再生医療の種類

再生医療は治療の目的や部位、疾患などに応じてさまざまな治療法が選択できます。

どういった種類があるのか、代表的なものをいくつかご紹介しましょう。

幹細胞治療

幹細胞治療は、幹細胞がもつ自己再生能力によって、損傷した組織を修復・再生する治療法です。

先述した通り、幹細胞はさまざまな細胞に変化することができるため、幅広い疾患に適用できる強みがあります。

具体的には、関節などの疾患の治療法のほか、美容でのアンチエイジングにも用いられ、再生医療の中でも注目されています。

幹細胞治療は後述のPRP療法と比べても高額であるため、他人の幹細胞を培養する過程でできる、成長因子をたくさん含む上澄み液を使ったエクソソームという治療法が普及しつつあります。

PRP(多血小板血漿)療法

PRP療法は多血小板血漿療法とよばれ、患者自身の血液から血小板を濃縮した血漿とよばれる成分を抽出し、患部に注入する治療方法です。

血小板には成長因子が多く含まれており、これが組織の修復と再生を促進します。

主にスポーツ外傷や慢性疼痛、関節疾患、美容医療など幅広い分野で利用されており、プロスポーツ選手の中にもPRP療法を受けた事例も多々あります。

自身の血液を使用するため副作用やアレルギーのリスクが低いことも大きな魅力のひとつです。

最近は、治療後の痛みの原因となりやすい血球を取り除き、成長因子だけを凝縮させたものを注入する成長因子療法が普及しつつあります。

自家培養軟骨移植

自家培養軟骨移植とは、患者自身から採取した軟骨を培養・増殖させた後、損傷した部位に移植する治療法です。

主に軟骨損傷や変形性関節症などの治療に用いられるケースが多いです。自己組織を使用するため、移植後に免疫拒絶反応などが現れるリスクが低く、優れた治療効果が期待できます。

ただし、大がかりな手術が必要になることと、ごく一部の大きな病院でしか行われておらず、普及していないのが現状です。

関連記事:膝に水が溜まるとはどういう状態?原因や症状について解説

再生医療の適応となる整形外科疾患

再生医療の実用化が進んでいる診療科目のひとつが整形外科です。

どのような疾患に対して再生医療が適応となるのか、代表的な例をご紹介します。

変形性関節症

変形性関節症はさまざまな関節に起きますが、特に下半身の膝関節や股関節の痛みで悩む方が多いです。

加齢や運動のしすぎ、急激な体重増加などによって関節に負担がかかると、関節内部にある軟骨がすり減り炎症を起こすことで、激しい痛みを引き起こすことがあります。

このような疾患を変形性関節症とよび、治療をしないまま放置しておくと関節そのものが変形する可能性もあります。

変形性関節症の治療はリハビリや痛み止めで痛みが改善しない場合は人工関節置換術などの外科手術に移行する場合が多いですが、幹細胞治療や自家培養軟骨移植などの再生医療を選択することで、損傷した軟骨の再生を促し、痛みを解消し関節の機能を回復できる可能性があります。

靭帯損傷

激しいスポーツによるケガや転倒などによって生じることの多い靭帯損傷も、幹細胞治療やPRP療法または成長因子療法の適応疾患となります。

幹細胞治療やPRP療法・成長因子療法は損傷した靭帯の修復を促し早期再生を図るほか、患部の炎症を抑え組織の修復を助ける働きが期待できます。

これにより、本来であれば数カ月以上を要する治療・リハビリ期間を短縮できる可能性があるのです。

筋損傷

筋損傷とは、肉離れや筋挫傷などのように筋肉の一部が損傷・断裂する疾患のことです。

筋損傷の治療においてなかなか良くならない場合、PRP療法または成長因子療法を行うことで早期の回復につながる場合もあります。

骨折

骨折の治療にあたっては、患部を安静にし骨の癒合を待つことが大前提となります。

しかし、部位や骨折の仕方によっては骨癒合にも時間を要するため骨折の治療は長期化する傾向があります。

そこで、幹細胞治療やPRP療法または成長因子療法によって骨の再生を促すことで、骨の癒合が早まり治療期間を短縮できる可能性があります。

再生医療のメリットとデメリット

整形外科での治療法としては、リハビリテーションや保存療法、薬物療法、外科手術などが一般的ですが、再生医療を選択することでどういったメリットが期待できるのでしょうか。

また、反対にデメリットとして考えられることも合わせて解説しましょう。

メリット

再生医療の主なメリットは以下の4点です。

痛みを改善し悪化を防いでくれる

幹細胞治療もPRP療法も関節内など患部の炎症を一旦鎮火することで中長期的な悪化を防ぐ効果が期待できる。

日帰りまたは通院での治療が可能

再生医療は細胞の抽出・培養また血液を加工して注射するといった治療法のため、外科手術のように長期間にわたる入院が必要ありません。

ほとんど傷跡が残らない

幹細胞治療は細胞を一部摘出するためわずかにメスを体にいれますが、手術のようにメスを入れることなく治療を受けられるため、完治後も手術痕が残る心配がありません。

PRP療法は採血のみなのでメスを入れる必要もありません。

アレルギー反応のリスクが少ない

PRP療法や自家培養軟骨移植では患者自身から抽出した血液・組織を培養するため、アレルギー反応のリスクが少なく安全性に優れた治療法といえます。

デメリット

デメリットとして考えられるのは主に以下の3点です。

対応可能な医療機関が限られる

再生医療には高度な知識や技術の他、施設の国の認可も求められることから、一部の医療機関でしか対応できない治療法となります。

自由診療のため治療費が高額

再生医療は一部を除き基本的に自由診療となっており、ごく一部の再生医療の手術を除き健康保険が適応できません。

治療内容や治療する部位、治療方法などによっても費用は変わりますが、保険適応になっている治療法に比べると治療費が高額になりやすい治療となります。

効果の現れ方や持続期間には個人差がある

再生医療は決して万能な治療法ではなく、患者本人の健康状態や損傷部位の範囲・程度などに応じて効果の現れ方が異なります。

そのため、まずは医師の診察を受けたうえで慎重に判断することが大切です。

再生医療にかかる費用はどのくらい?

再生医療を検討するうえで多くの方が気になるのが費用の問題ではないでしょうか。

先述した通り、再生医療の多くは自由診療となっていますが、整形外科の治療にかかる費用相場をいくつかご紹介します。

まず、関節の痛みや炎症といった軽度の疾患に対応するPRP療法の場合、かなり安価で提供している医療機関もありますが、何回も治療を繰り返す必要が生じたりして、安かろう悪かろうの可能性ものあります。

手足などの小さい関節の治療には15〜20万円程度、膝や股関節といった大きな関節の場合は30万円以上の費用がかかるところが現実的な治療費としては妥当かと考えます。

また、変形性関節症など欠損した部位の治療に有効な幹細胞治療の場合は、1回あたりの注射で数百万円の費用をが掛かる病院もあります。

関連記事:変形性股関節症は手術せずに治せる?再生医療とはどんな治療なのか

再生医療ならイノルト整形外科へお気軽にご相談ください

膝や股関節、肩など、さまざまな関節の痛みに悩まされており、再生医療を含めた治療を考えている方はイノルト整形外科へご相談ください。

当院では再生医療専門外来を設置しており、患者様一人ひとりと向き合い丁寧にカウンセリングを行ったうえで、疾患の状態や範囲に合わせて最適な治療法をご提案します。

また、治療後も患部に異常が見られないかを定期的にモニタリングし、異常や症状の変化が見られた場合には速やかに相談や再治療を受けることもでき安心です。

再生医療は対応可能なクリニックが限られているからこそ、本当に信頼できるところを選びたいもの。

イノルト整形外科には再生医療に関する知見が豊富な専門医が在籍しているため、安心して治療を受けることができます。

まとめ

痛みや長期間にわたるリハビリが不安という方にとって、再生医療はまさに理想的な治療法といえるでしょう。

しかし、再生医療は近年注目されはじめたばかりの新しい治療法であり、対応可能なクリニックも限られています。

また、疾患の種類や患部の状態によっては再生医療以外の治療が適している可能性もあることから、信頼性の高い整形外科クリニックを受診することが大切です。

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この記事の監修医師



藤沢駅前 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック  院長 渡邉 順哉


■詳しいプロフィールはこちらを参照してください。


経歴


●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長