変形性股関節症の治し方はある?やってはいけないことや負担をかけない寝方を紹介
立ち上がったときや歩き始めたとき、階段の昇り降りをしたときなどに股関節が痛い場合、「変形性股関節症」の可能性が考えられます。
重症化すると日常生活にも大きな影響が出ることから、早期の検査と治療が求められます。
本記事では、変形性股関節症とはどういった病気なのか、主な症状や治療の方法、症状を悪化させないための注意点もご紹介します。
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変形性股関節症とは
変形性股関節症とは、股関節の軟骨が摩耗することで関節の痛みや炎症、変形が生じる疾患です。
股関節は、腰の部分にある骨盤に太ももの大腿骨で形成されており、丸みを帯びた大腿骨の先端部分が骨盤に繋がっています。
正常な股関節は骨盤側に軟骨があり、大腿骨のスムーズな動きをサポートしていますが、体重過多や長時間の立ち仕事などによって軟骨がすり減ることがあります。
これにより、大腿骨と骨盤の骨同士が軟骨を介さずに擦れ合うことで、炎症や痛みが生じるのです。
変形性股関節症は特に女性の発症リスクが高く、なかでも40歳から50歳代にかけて加齢とともに症状が現れるケースが多い傾向が見られます。
ただし、骨盤の形状には個人差があり、もともと大腿骨の先端部分をカバーする範囲が狭いと股関節が不安定となり、性別や年齢を問わず発症するリスクが高まります。
変形性股関節症の症状
変形性股関節症を発症すると、どのような症状が現れるのでしょうか。
初期の状態に見られるのは、椅子やベッドなどから立ち上がったとき、あるいは歩き始めたときに感じる鼠径部(足の付け根部分)の痛みです。
さらに悪化していくと、安静にしている状態でも痛みが続き、夜間に寝られないほどの痛みが生じるケースもあります。
また、股関節の痛みを抑えるために足を動かさないでいると、股関節周辺の筋力も低下していき、さらに不安定な状態になります。
その結果、股関節そのものの可動域も徐々に狭くなり、日常生活にもさまざまな影響が出ることも少なくありません。
たとえば、以下などといった症状が典型的です。
- 座った状態や立った状態で一人で靴下を履くことができない
- 長時間の立ち仕事や歩行が困難になる
- 階段の昇り降りの際に手すりにつかまらなければ歩行ができない
関連記事:股関節の痛みで悩んでいる人必見|変形性股関節症の注意点を解説
変形性股関節症の治療法
変形性股関節症の症状が進行している場合、根治させるためには基本的に人工股関節置換術とよばれる外科手術を医師から勧められることが一般的です。
ただし、痛みを軽減するという意味においては、初期段階ではそれ以外の手術も選択肢として考えられます。
- 股関節唇縫合術+臼蓋形成術
- 回転骨切り手術
- 人工関節置換術
これらの手術について解説しましょう。
股関節唇縫合術+臼蓋形成術
変形性股関節症になる前に、股関節が脱臼せずに安定化させるために寄与している股関節唇が損傷したことがきっかけで、徐々に変形性股関節症に進行していく場合が多く見受けられます。
変形性股関節症に進行していく前に、まず関節唇を縫合します。
そして、関節唇が痛む原因となっている異常な骨の出っ張りや、生まれつき小さい股関節の受け皿(臼蓋)に、骨盤の骨を一部取って移植する臼蓋形成術が行われるようになってきました。
回転骨切り手術
回転骨切り手術とは、その名の通り骨盤の一部をくり抜いて回転させて固定する手術のことです。
骨盤の一部をくり抜くということは、骨盤側の股関節の受け皿が大腿骨をカバーできる範囲を増やすことも意味します。
これにより、股関節にかかる負担を軽減し痛みを緩和できます。
基本的には股関節の受け皿側が狭く、変形性股関節症の初期の頃に用いられる手術法のため、適応になることは少ないでしょう。
さらには、臼蓋形成術と比べ骨盤の骨を大きくくり抜くため、術後の股関節痛は強くなりがちで、手術の難易度も比較的高いものになっています。
人工股関節置換術
人工股関節置換術とは、損傷した股関節を人工の股関節に置き換え、正常な機能を取り戻す手術で、変形性股関節症で最も一般的に行われている手術です。
人工股関節は主に金属や特殊な樹脂でできており、これを外科手術によって置き換えることで痛みの根本原因を解消できます。
全身麻酔による手術でリハビリが必要ということもあり、特に症状が進行し日常生活に影響が見られる場合に行われることが多い治療法です。
手術後の痛みや、術後の感染症のトラブル、人工関節のインプラントの耐用年数の課題があります。
変形性股関節症を手術しないで治すことはできる?
変形性股関節症により痛みを感じるものの、外科手術はハードルが高く感じられる方も多いでしょう。
手術以外の方法で痛みを緩和するには、主に以下などの方法があります。
- 保存療法
- 再生医療
- 体外衝撃波
これらの治療法いについて解説しましょう。
保存療法
保存療法とは、外科手術を行わない治療法のことです。
具体的には、再生医療や体外衝撃波治療のほか、運動療法や薬物療法、温熱療法、さらには体重コントロールも含まれます。
たとえば、運動療法やリハビリを行うことで股関節の可動域が徐々に広がったり、体重コントロールによって股関節にかかる負荷を軽減することにもつながるでしょう。
ただし、すべてのケースにおいて保存療法が安全とは限らず、間違った運動療法によって状態を悪化させるリスクがないかなど、慎重に見極める必要があります。
再生医療
再生医療とは、ヒトが本来もっている自己修復力を活用し、損傷した組織の機能を取り戻す治療法です。
主に、自己の血液を用いたものと、幹細胞を用いたものの2つに分類されます。
変形性股関節症に対しては、患者様自身の血液から多血小板血漿(PRP)とよばれる成分を抽出し、さらに成長因子のみ抽出し濃縮したものを股関節内に注射する方法があります。
これにより、股関節内に生じている炎症と痛みを長期的に緩和でき、長期的な進行を予防してくれることが期待できるのです。
体外衝撃波治療
体外衝撃波治療とは、医療用に用いられる低出力の衝撃波を患部に照射する治療法です。
痛みを伝える神経内の伝達物質を減少させ、これによって痛みを緩和する効果が見込めるでしょう。
また、これと同時に細胞に対して刺激を与えることで組織修復効果も見込め、継続的に治療を行うことで炎症を鎮められる効果も期待できます。
体外衝撃波には、拡散型(正しくは圧力波)と集束型の2種類がありますが、拡散型は出力も弱く股関節の深さまで十分に効果を発揮できませんが、集束型が深部まで効果を発揮してくれます。
関連記事:股関節の左や右だけが痛むのはなぜ?痛みがおこる場所と原因を解説
変形性股関節症を悪化させるNG行為
変形性股関節症を発症した場合、股関節に無理な負担をかけてしまうと症状を悪化させる原因になります。
やってはいけないNG行為として以下などが挙げられます。
- 重量物を扱う
- 関節に負荷のかかる激しい運動
- 体重を過度に増やす
- 禁忌肢位をとる
これらのNG行為をご紹介しましょう。
重量物を扱う
重いものを持ち上げたり、運んだりといった重量物を扱う行為は避けましょう。
腰から股関節にかけての負担が増大し、症状を悪化させるリスクが高まります。
股関節に負荷のかかる激しい運動
走ったり止まったりを繰り返す、または急な方向転換をすることの多いサッカーやバスケットボールなどの運動も股関節に大きな負担をかけるため避けましょう。
また、重量物を扱うのと同様の理由で、無理な筋力トレーニングも禁物です。
体重を過度に増やす
体を動かすことなく室内にこもってばかりいると、体重が増えて股関節に負担をかけてしまいます。
食事の内容を見直すなど適切な体重管理を行い、体重が増えないよう注意しましょう。
禁忌肢位をとる
禁忌肢位とは、絶対にやってはいけない体勢や姿勢、動きのことです。
変形性股関節症における禁忌肢位とは股関節に負担をかける動作全般のことであり、具体的には以下の3つが挙げられます。
- しゃがむ
- 正座
- あぐら
股関節に負担をかけない寝方とは?
ベッドに横になって安静にしているにもかかわらず、股関節に痛みを感じることもあります。
これは本人も気づかないまま股関節に負担がかかっているためであり、負担をかけない寝方を心がけることが大切です。
具体的な寝方を「仰向けの場合」と「横向きの場合」でご紹介しましょう。
仰向けの場合
仰向けで寝ると、股関節が伸びた状態になることで痛みを感じやすくなります。
このような場合には、股関節の前側を緩めることで股関節の痛みを緩和できます。
軽く足を曲げると腰や股関節が楽に感じる方も多いはずです。
そこで、この姿勢を維持するために、膝の裏にクッションを入れておく方法がおすすめです。
クッションを入れて固定することで、眠りに入ってからも同じ姿勢を維持でき、痛みで目が覚めるといったこともなくなるでしょう。
横向きの場合
横向きの状態で寝たときには、上に位置する足の外側が引っ張られ、股関節の外側が伸びた状態になることで痛みを感じやすくなります。
これを改善するためには、両膝でクッションを挟み込むような姿勢を維持することが大切です。
クッションがあることで股関節の外側が緩み、痛みも緩和されます。
変形性股関節症ならイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックまでご相談ください
股関節に慢性的な痛みを抱え、今回ご紹介した変形性股関節症が疑われる場合には、一度イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックへご相談ください!
当院では関節専門外来を設置しており、膝や肩、股関節などに生じるさまざまな疾患を治療することができます。
変形性股関節症に悩む方に対しては、症状に応じて再生医療や体外衝撃波治療といった最新の治療法から、理学療法士のリハビリなどを行いながら痛みを緩和できます。
重症化している場合には外科手術を行い、希望があれば連携病院での手術および当院での術後リハビリが可能です。
「手術に不安を感じるものの、少しでも痛みを緩和したい」「日常生活に支障をきたすほど痛みが強く、すぐにでもなんとかしたい」という方は、一度当院へのご相談をお勧めします。
まとめ
立ち上がったときや歩くときに股関節が痛む、股関節の可動域が狭くなり日常生活に支障をきたすようになったという方は、変形性股関節症の可能性が考えられます。
特に40歳以降の女性は発症リスクが高い傾向が見られます。
しかし、性別や年齢を問わず発症する可能性があることから、まずは専門のクリニックで検査を受け適切な治療を行うことが大切です。
また、変形性股関節症が疑われる場合、無理に股関節を動かしたり負荷を与えたりすると悪化するおそれがあります。
重いものを持ち上げる行為や激しい運動は避け、安静に過ごすことを心がけましょう。
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藤沢駅前 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長 渡邉 順哉
経歴
●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長