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リハビリ理学療法士

理学療法士 肩関節 治療について

人の肩関節は四足獣と比較して明らかに異なる。

肩甲骨は胸郭の左右への扁平化とともに後方へ移動し、上肢は背側へも動くようになった。

荷重関節であった肩関節が、その役割から開放されたとき,劇的な変化を遂げたことは間違いない。

筋の役割も大きく変わり、前鋸筋などは体幹を吊り下げる機能から、上肢を重力に逆らって挙上するための肩甲骨の上方回旋に寄与するようになった。

祖先の形態とその機能を少しずつ変化させて適応しながら、このように大きな可動域を持つ関節となった。

筋による肩関節の安定化を考える場合には、回旋筋腱板の機能は重要である。

筋力のバランスが崩れて inner muscle が outer muscle よりも相対的に弱化すると、上腕骨頭が十分に関節窩に引き付けられず、不安定性を助長することになる。

外旋筋群はinner muscle が中心であるので、どの肢位での外旋運動でも棘下筋を強化することが可能である。

下垂位(第 1 肢位)での外旋運動では、抵抗をかけずとも最終可動域まで動かすことにより、筋力強化に十分な筋収縮を得られることが明らかにされている。

肩甲上腕リズムに関して、肩甲骨の上方回旋を促すためには僧帽筋の各線維と前鋸筋のバランスよい筋活動が必要となる。

多くの場合、僧帽筋上部線維の活動が過多となり、挙上運動が優位になることが多い。

そこで、活動を抑えた状態で中部線維、下部線維、前鋸筋の活動を高める運動を行うことが必要となる。

筋力強化だけでは不十分であり、そのうえに運動学習を促す必要性がある。

今後、肩甲上腕リズムの改善を目的とした選択的筋力トレーニング、さらには運動学習が患者さまの治療において重要となる。

肩関節が複雑な機構であるのも、重力との闘いの末に勝ち得た結果といえる。

この神秘的ともいえる機構を再建するために、理学療法士に何が出来るのか、日々臨床のなかで今回の講習治療経験を活かしていきたい。