骨粗鬆症で食べてはいけないものとは?骨を強くする食べ物や飲み物を紹介
骨が脆くなり骨折のリスクが高まる骨粗鬆症は、閉経後の女性に多く発症しやすい疾患のひとつです。
骨粗鬆症の発症を完全に抑えることは難しいですが、発症や重症化のリスクを少しでも低減するためには食事が重要なポイントとなります。
今回は、骨粗鬆症で食べてはいけないもの、反対に食べたほうが良いものを詳しくご紹介します。
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骨粗鬆症の原因
私たちの骨は、体内で少しずつ古い骨が削られると同時に新しい骨が生成され、新陳代謝を繰り返しています。
通常は古い骨が取り壊される「骨吸収」と、新しい骨が作られる「骨形成」がバランスよく保たれています。
しかし、さまざまな原因によってこのバランスが崩れることがあります。
その結果、骨の量が減ったり、質が悪くなったりすることで、骨が脆くなってしまう「骨粗鬆症」という疾患が発症します。
骨の新陳代謝のバランスが崩れる原因はさまざまですが、特に代表的なのが「エストロゲン」とよばれるホルモン物質の減少です。
エストロゲンは女性ホルモンのひとつであり、骨吸収を抑える役割も果たしています。
しかし、年齢を重ねるとエストロゲンの分泌量が減少し、骨吸収のスピードが速くなってしまうのです。
そのため、骨粗鬆症は閉経を迎えた更年期以降の女性が最も発症しやすくなります。
骨粗鬆症の予防には食事が大切
エストロゲンの分泌量が減少するのは自然なことであり、それ自体を防ぐことは難しいものです。
しかし、毎日の食事に気をつけることで、骨粗鬆症の予防や進行を抑えることにつながる可能性はあります。
特に、カルシウムが不足していたり、栄養バランスそのものが偏った食生活を送っていると、骨に必要な栄養が不足し骨が作られにくくなってしまいます。
丈夫な骨をつくるにはカルシウムが必要というのは事実ですが、だからといってカルシウムばかりに栄養が偏ってしまうのも問題なのです。
ビタミンやミネラル、たんぱく質など特に不足しがちな栄養を意識しながら毎日の食生活を見直してみましょう。
関連記事:骨粗鬆症の診断基準について|どんな検査をする?費用についても解説
骨粗鬆症で食べてはいけないものとは?
骨粗鬆症の予防や重症化を防ぐという観点では、摂取すべきではない食品があります。
リン酸化合物を多く含むもの
リンという物質はカルシウムと同様に骨を形成する成分であり、欠かせない栄養素のひとつです。
しかし同時に、リンを摂取しすぎるとカルシウムと結合しを体外に排出する性質もあり、せっかく摂取した栄養素が無駄になってしまいます。
リンの化合物であるリン酸塩はさまざまな食品に含まれている成分ですが、過剰に摂取してしまうと骨粗鬆症を発症・悪化させる原因となります。
リン酸塩が特に多く含まれている、ハムやソーセージなどの加工肉やインスタント食品などは摂取しすぎないよう注意しましょう。
食塩を多く含むもの
濃い味付けのものには食塩が多く含まれています。
私たちの体内では塩分濃度を一定に保つために、食塩を摂りすぎると血圧が上がり高血圧症が発症したり悪化しやすくなるのです。
高血圧は骨吸収を促進してしまい骨が脆くなってしまう報告もされていたり、腎機能が悪くなることで、ビタミンDの活性が悪くなり、骨粗鬆症に繋がりやすくなります。
従って、塩分の多い食事に偏らないように注意しましょう。
アルコール類
アルコールは骨を作る細胞を破壊してしまうため、骨が作られにくくなってしまうことに加え、酸化ストレスも増大させるために骨が脆くなってしまいます。
そのため、日常的にアルコールを摂取している方や、一度の飲酒で大量のアルコールを摂取する方は特に注意が必要です。
一切アルコールを摂取すべきではない、ということではありませんが、飲み過ぎには注意が必要です。
厚生労働省では、女性の場合は1日平均で20g程度のアルコール摂取量に抑えることを推奨しており、これはビールの場合約500ml、日本酒であれば1合にあたります。
カフェインを多く含むもの
利尿作用を及ぼす食品はアルコール以外にもカフェインが挙げられます。
特に、朝起きた後や仕事の合間などに毎日コーヒーを飲む方の場合、カフェインの摂りすぎによって尿と一緒にカルシウムが排泄されやすくなります。
骨粗鬆症の予防や重症化を防ぐのであれば、コーヒーは1日あたり3杯程度までに抑えたり、余分にカルシウムを食事から補充するようにしておきましょう。
また、コンビニやドラッグストア、自動販売機などでもさまざまなエナジードリンクが販売されていますが、大量のカフェインが含まれているため飲み過ぎには注意が必要です。
関連記事:骨粗鬆症の初期症状は気づきにくい?骨粗鬆症の原因も解説
骨を強くする食べ物や飲み物
上記とは反対に、骨粗鬆症予防のために積極的に摂取すべき食べ物は何があるのでしょうか。
カルシウムを多く含むもの
まずは骨形成にもっとも重要なカルシウムです。
カルシウムは骨や歯を形成するために欠かせない栄養素であると同時に、尿と一緒に排出されやすい性質ももっているため、積極的に摂りたい栄養素のひとつです。
1日の摂取量目安およびカルシウムを多く含む食品には以下のものがあります。
- 18歳以上の1日の摂取量目安:800mg
- 食品:牛乳、小魚、チーズ、ヨーグルト、ひじき など
- カルシウムのサプリ、カルシウムを多く含有させた健康食品など
コップ1杯あたりの牛乳に含まれるカルシウム量は約230mgのため、朝・昼・夜にそれぞれ牛乳を飲む習慣を心がけるのもおすすめです。
また、骨粗鬆症の治療中はカルシウムの1日摂取量が1200㎎程度必要になるとも言われており、普段以上に積極的にカルシウムと補う必要があります。
ビタミンDを多く含むもの
ビタミンDは腸管からカルシウムを吸収した後、それを血液とともに骨まで届ける栄養素です。
ビタミンDとカルシウムを一緒に摂取することで、効率よくカルシウムが体内に吸収されます。
- 18歳以上の女性1日の摂取量目安:10〜20μg
- 食品:鮭、イワシ、サンマ、シラスなど
- ビタミンDのサプリ
ビタミンDは特に魚類に多く含まれているため、肉だけでなく魚をメニューに一品取り入れるだけでもおすすめです。
ビタミンKを多く含むもの
ビタミンKは骨吸収を抑制するとともに、質の良い骨が作られるために必要な栄養素です。
ビタミンKが足りないと骨が作られるときに、折れやすい質の悪い骨ができやすくなります。
- 18歳以上の女性1日の摂取量目安:250〜300μg
- 食品:納豆、小松菜、モロヘイヤ、ブロッコリー など
ビタミンKは野菜類に多く含まれています。
スーパーで手軽に購入できる品目が多いほか、サラダやおひたし、炒めものなど調理の方法も多様です。
ビタミンB6・B12・葉酸を多く含むもの
ビタミンB6やB12、葉酸は丈夫で良質な骨を形成するために必要なコラーゲンの材料になる栄養素です。
- 18歳以上の女性1日の摂取量目安
ビタミンB6:1.1mg
B12:2.4μg
葉酸:240μg
- 食品
ビタミンB6:まぐろ、鮭、豚肉、玄米、バナナ など
B12:サンマ、牡蠣、牛レバー など
葉酸:ホタテ、鶏レバー、イチゴ など
たんぱく質を多く含むもの
骨の30%はたんぱく質の一種のコラーゲンでできています。
筋力を増やすことで骨を安定的にサポートし、骨折やケガの予防にもなります。
- 18歳以上の女性1日の摂取量目安:50g
- 食品:鶏肉、大豆、チーズ、ブロッコリー など
参考記事:【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?|西春内科・在宅クリニック
骨粗鬆症予防におすすめの食事メニュー
上記の食材を使用した、骨粗鬆症予防におすすめのメニューをご紹介します。
スピード朝食(スムージー・チーズトースト・ヨーグルト和え)
忙しい朝でも短時間で作れ、カルシウムはもちろんビタミンKや葉酸、ビタミンB6、たんぱく質などの栄養も満点な骨粗鬆症予防朝食メニューです。
今回は洋風のメニューですが、鮭や玄米、シラスなどを組み合わせた和朝食もおすすめです。
【材料】
- スムージー
小松菜、モロヘイヤ、バナナ、はちみつ、水
- チーズトースト
食パン、チーズ、マヨネーズ、ブラックペッパー
- ヨーグルト和え
ヨーグルト、イチゴ、バナナ、はちみつ、レモン汁
【作り方】
- スムージー
- 小松菜、モロヘイヤ、バナナをミキサーに入れやすいサイズにカットする
- カットした材料をはちみつ、水と一緒にミキサーにかける
- チーズトースト
- 食パンにマヨネーズを塗る
- 食パンにチーズを乗せてトースターで焼く
- お好みでブラックペッパーを振りかける
- ヨーグルト和え
- ヨーグルトにはちみつ、レモン汁を入れて混ぜておく
- フルーツを食べやすい大きさにカットし、ヨーグルトソースと和える
クリームシチュー
カルシウムが豊富な牛乳をたっぷり使った定番メニューです。
ブロッコリーやほうれん草など、青物野菜をたっぷり使うことでビタミンKとビタミンB6、葉酸、たんぱく質が摂取できます。
【材料】(4人分)
- 鶏むね肉 200g
- ブロッコリー 1/2株
- ほうれん草 1/2束
- じゃがいも 1個
- 人参 1/2本
- 牛乳 150ml
- 水 450ml
- シチューの素
【作り方】
- 鶏むね肉、ブロッコリー、じゃがいも、人参、ほうれん草を食べやすい大きさにカット
- 大きめの鍋に材料を入れて炒める
- 焼き目が付いたら水を入れ、柔らかくなるまで煮込む
- シチューの素を入れ、とろみがついたら牛乳を入れて5分ほど煮込む
骨粗鬆症の予防には運動もおすすめ
骨粗鬆症の予防にあたっては、食事の内容だけでなく運動も欠かせません。
運動をすることで骨に適度な負荷・刺激が加わり、骨を作る、骨細胞が活性化し骨密度が増すとされているためです。
物理的な負荷が大きいほど骨の強度も高まっていきますが、いきなり無理をすると転倒して骨折やケガのリスクを増大させるため、徐々に運動の強度を上げていくことが大切です。
特に初心者におすすめなのは、ウォーキングやジョギング、縄跳び(縄なしで飛んでもOK)です。
その際に、500gから1kg程度の軽めのダンベルを持った状態でトレーニングをすることで、適度な負荷がかかり効果が高まる可能性があります。
関連記事:骨粗しょう症にかかりやすい人の特徴や早期発見のメリットについて
まとめ
骨粗鬆症の発症を少しでも抑えるためには、加工食品やインスタント食品をなるべく控え、アルコールや塩分、カフェインなどの過剰摂取にも注意が必要です。
一方、カルシウムは体外に排出されやすく吸収されにくい栄養分でもあるため、丈夫な骨をつくるためにも積極的に摂取したほうが良いでしょう。
それ以外にもビタミン類や葉酸、たんぱく質などもバランスよく摂取することで、カルシウムの吸収効率が上がり骨粗鬆症の予防につながります。
適度な運動も心がけ、骨粗鬆症にかからないよう生活習慣を見直していきましょう。
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藤沢駅前 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長 渡邉 順哉
経歴
●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長