膝の再生医療は効果なし?保険適用はいつから?
膝に強い痛みがあり、歩いたり走ったりするのが辛い場合、膝関節の内部に炎症が生じている可能性があります。
これを治療するためにはさまざまな方法がありますが、日常生活に支障をきたす心配がないのが「再生医療」です。
再生医療について調べてみるとネガティブな意見を目にすることもありますが、それは本当なのでしょうか。
気になる再生医療の費用や保険適用の可否についても詳しくご紹介します。
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膝の再生医療とは?
再生医療とは、患者様自身から取り出した細胞や人工的に培養した細胞などを利用し、病気やケガによって損傷した組織の再生を促す治療法です。
たとえば、採取した組織から幹細胞を抽出し、それを培養したものや血液から血小板を抽出したものを再び体内に注射するといった治療法があります。
このような治療方法は、外科手術に比べて、患者様にかかる負担を大幅に低減できます。
膝の代表的な疾患である変形性膝関節症においても、再生医療は有効な治療法です。
抽出・培養した、自らの血小板や幹細胞を患部に注射することで、痛みを緩和します。
変形性膝関節症の治療は、比較的症状が軽度の場合には、運動療法や食事療法による体重コントロール、リハビリなどが選択されるケースが多いです。
しかし、症状が進行し膝関節の変形が見られる場合には、外科手術や再生医療が用いられるケースが多いのです。
関連記事:膝の痛みの場所別原因まとめ|突然ズキズキ痛むのは危険?
膝の再生医療の種類
一口に再生医療といってもさまざまな種類があります。
膝の再生医療において選択肢となる再生医療の種類は以下の通りです。
- PRP(多血小板血漿)療法
- APS(自己タンパク質溶液)療法
- 成長因子療法
- 幹細胞治療
- 骨軟骨柱移植術
- 自家培養軟骨移植術
各治療法についてご紹介しましょう。
PRP(多血小板血漿)療法
PRPとは 多血小板血漿 ともよばれ、私たちの血液のなかに含まれる血小板を濃縮させた体液です。
患者様本人から少量の血液を採取し、遠心分離によって多くの血小板を抽出し、PRPとして膝関節内に注入することで、炎症が緩和し痛みの改善が期待されます。
通常、何度も治療が必要になります。
白血球の量で、部位による使い分けられる場合もあります。
APS(自己タンパク質溶液)療法
APS療法も、患者様自身から採取した血液を使用する再生医療です。
従来のPRP療法を、より高濃度に濃縮させ関節向けに特化した治療法です。
これを膝関節内に注入することで、炎症を引き起こす原因物質のバランスを整え、症状を軽減できます。
PRP療法の中でも一度で十分に効果が期待できるのが大きな特徴です。
成長因子療法
PRPの血小板の殻を取り除き、細胞成分を取り除いて、APSでも大きな効果を発揮する血小板に含まれる成長因子のみ高濃度で抽出し、関節に注射する治療法です。
APSと同様に1回の治療で十分に効果を期待できますが、細胞成分を取り除いているため、PRP療法のように注射後の痛みや腫れといった副作用がほとんどないのが大きな特徴です。
まとめて2回分など一気に注射をすることも可能です。
幹細胞治療
幹細胞治療は、体内から少量の脂肪や滑膜を取り出し、そこの組織に含まれる幹細胞を数個から数千万~1億個程度まで培養し、膝関節内に注入する治療法です。
主に腹部から脂肪を取り出すことが多く、幹細胞を注入することで損傷した膝軟骨を再生させたり、病気の進行を抑える効果が期待できます。
幹細胞治療は再生医療のなかでも代表的な治療法のひとつです。
骨軟骨柱移植術
骨軟骨柱移植術は、自分の膝の正常な骨と軟骨組織を細い円柱状に何本もくり抜き、膝関節内の軟骨が損傷した部分に移植する治療法です。
正常な骨を物理的に移植するため高い効果が期待できますが、医学的なリスクの観点から大きな骨をくり抜くことはできません。
また、前述までの治療法とは異なり、関節鏡手術で皮膚を切る範囲は狭いものの、入院し全身麻酔で手術が必要になります。
やや治療のハードルが高くなるのと、技術的に優れた整形外科医を見つけるのに苦労します。
また、広範囲の軟骨損傷には不向きな治療法です。
自家培養軟骨移植術
自家培養軟骨移植術とは、患者様自身から少量の軟骨組織を採取し、それを培養してシート状にしたものを、膝関節内に移植して縫いつける治療法です。
シート状の移植なので、欠損が比較的大きい場合でも治療に対応できる可能性があります。
しかし、こちらも骨軟骨柱移植術以上に、技術的に信頼のおける整形外科医を探して手術を受けるのはかなり大変です。
入院期間も長く、手術でも皮膚を大きく切るといったように、再生医療の中でも最も大掛かりな治療法といえます。
膝の再生医療のメリット
変形性膝関節症をはじめとした膝関節の疾患は、再生医療以外にも、外科手術や保存療法などさまざまな治療法があります。
そのなかで、再生医療を選ぶことでどういったメリットがあるのでしょうか。
- 拒否反応が起こりにくい
- 日帰りで処置を受けられる
- 治療直後から普段通り生活できる
- 治療痕が残りにくい
再生医療のメリットを詳しく紹介しましょう。
拒絶反応が起こりにくい
薬物療法や外科手術の場合、治療後に重篤な副反応が出たり、後遺症が残ったりといったリスクを伴います。
しかし、再生医療では自分自身の血液や組織、あるいは骨・軟骨の一部を採取して活用するため、上記のような拒絶反応が起こりにくく安全性が高いというメリットがあります。
日帰りで処置を受けられる
PRP療法やAPS療法、成長因子療法、幹細胞治療など手術を伴わない再生医療は、自分の血液や組織を取り出し、再び注射をするという治療法のため負担が少ないです。
入院せずに最短で1~2回の通院で治療を受けることができます。
仕事などで忙しく長期間の休暇が取得しにくい方や、入院が難しい状況の方でも、安心して選択できる治療法といえるでしょう。
治療直後から普段通り生活できる
移植手術以外の再生医療では入院が一切必要なく、注射を打った後は普段通りの生活に戻ることができます。
仕事が忙しく休暇が取得できない方はもちろん、家族に負担をかけたくないという方にとってもメリットの大きい治療法といえるでしょう。
治療痕が残りにくい
PRP療法やAPS療法、成長因子療法、幹細胞治療は注射をするだけで処置が完了するため、大きな治療痕が残らず目立ちません。
関連記事:膝の痛みで悩んでいる人必見|症状別にわけた原因と治療方法を解説
膝の再生医療の費用相場
膝の再生医療を受ける場合、気になるのは費用の問題です。
クリニックによっても費用は異なる場合がありますが、どの程度の相場なのでしょうか。
今回はPRP療法とAPS療法、成長因子療法、幹細胞治療の費用相場をご紹介します。
PRP療法:1回あたり3万円~
PRP療法は健康保険が適用とはならず全額負担の自由診療です。
1回の治療にかかる費用は片側の膝で3万円程度、両膝の場合は5万円程度が相場となっており、4週間程度のスパンを空けて3回程度治療を受ける必要があります。
そのため、少なくとも9万円から15万円程度の費用がかかります。
しかし、膝の状態によっては治療の回数が増える可能性もあるでしょう。
APS療法・成長因子療法
APS療法や成長因子療法もPRP療法と同様、健康保険が適用されず自由診療です。
治療にかかる費用は30~40万円程度が相場となっており、両膝を治療する場合にはその倍の治療費がかかります。
ただし、PRP療法とは異なり1回の治療で済むため、通院の回数は少なくて済みます。
幹細胞治療
幹細胞治療では細胞を実際に取り出し、1カ月間掛けて数個の幹細胞を最大1億個くらいまで培養して関節に戻すため、200~400万円程度の費用がかかります。
これは、手術を伴う再生医療である、自家培養軟骨移植術と同等程度になっています。
関連記事:膝の下が痛い人必見!原因や痛みやすい人の特徴や治療法を解説
膝の再生医療の保険適用はいつから?
膝の再生医療には数十万円単位の高額な費用がかかることから、今後健康保険の適用対象になる見込みはないのか疑問に感じる方も多いでしょう。
上記でも紹介した通り、PRP療法、APS療法、成長因子療法、幹細胞治療など手術を伴わない再生医療は現時点では自由診療となっており、いつ頃保険が適用されるかは未定の状態です。
医療費を抑制したい国の狙いからすると、今後もこれらの再生医療が保険適応になる可能性は限りなく低いと予想しております。
膝の再生医療は効果なし?デメリットは?
膝の再生医療について調べてみると、特にPRP療法とAPS療法は入院することなく手軽に受けられる反面、「効果はない」といったネガティブな意見を目にすることもあります。
また、メリットばかりではなくデメリットがあることも事実です。
- 自由診療のため治療費が高め
- 安定した効果を得られない場合がある
- 持続的な治療が必要
入院を必要としない再生医療を選択するにあたって、覚えておきたい注意点を詳しくご紹介しましょう。
自由診療のため治療費が高め
上記でも紹介した通り、PRP療法とAPS療法、成長因子療法、幹細胞治療は、健康保険が適用されず自由診療となります。
全額自己負担のため、少なくとも数万円から数百万円と、保険診療と比べると高額な治療費がかかり、経済的な面で治療を躊躇する方も少なくありません。
しかし、安かろう悪かろうという言葉があるように、安い治療にはそれなりの訳があります。
保険診療には、何十年も前に保険診療として認められてから、何も進歩していない整形外科医療ばかりが残っています。
ここ20年以内に整形外科医療として国内に入ってきた治療法は、痛み止めなどの薬剤を除いてほとんどが保険適応されていないのが現状です。
歯科医療で自費治療を受けないと、たいして新しい良い治療法が受けられないのと同じで、整形外科についても同じような状況になってきたと思います。
安定した効果を得られない場合がある
人工関節手術などに比べると、再生医療は効果の現れ方に、やや個人差が現れやすい傾向にあります。
治療後比較的早い段階で効果を実感できる方もいれば、しばらく時間が経過してから徐々に効果が現れる方、効果が現れたものの短期間でもとの状態に戻ってしまうという方もいます。
すべての方が十分に満足できる効果が見込めるとは限らない点は、十分理解しておく必要があるでしょう。
継続的な治療が必要
PRP療法は、少なくとも4週間程度のスパンを空けながら3回以上の治療が必要です。
APS療法、成長因子療法、幹細胞治療も基本的に一度の治療で済みますが、もとの状態に戻ってしまったときには再び治療を行わなければなりません。
しかし、これは人工関節手術などでも数%は再手術のリスクもありますし、術後のリハビリはかなり努力が必要になります。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックの再生医療外来
膝の再生医療にはさまざまな治療法があり、患者様の状態に応じて最適な治療法を選択する必要があります。
そのためには、膝関節の治療実績が豊富で、多様な治療法に対応しているクリニックを選ぶことが重要といえるでしょう。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックでは、今回ご紹介したPRP療法やAPS療法についても実績があります。
現在は成長因子療法と集束型体外衝撃波治療を組み合わせた、「関節回復APS-FSW療法」という独自の治療法も開発して提案させて頂いています。
成長因子療法療法と集束型体外衝撃波を組み合わせることで、即効性と長期持続効果が期待できます。
膝の強い痛みが持続している方は、再生医療外来のあるイノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックに一度ご相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
膝関節は日常生活において負担がかかりやすい部位であり、加齢や体重の増加、立ち仕事、スポーツなどが原因で負傷することがあります。
多くの場合、膝関節の内部にある軟骨がすり減り、骨同士が接触することで強い痛みを生じさせ、さらに悪化すると関節そのものが変形し、歩行が困難になることもあります。
このような状態になる前に、膝に慢性的な違和感や痛みを感じた場合には、できるだけ早めにクリニックを受診しましょう。
今回ご紹介した再生医療は、手術をすることなく日帰りで治療を受けられるものも多いため、治療に不安を感じている方にもおすすめの方法といえます。
イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニックのアクセスマップ
藤沢駅前 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長 渡邉 順哉
経歴
●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長