理学療法士 勉強会 腰部
※本記事は、整形外科専門医・イノルト整形外科 統括院長 渡邉順哉医師の監修のもと執筆しています。
腰痛で悩まれて来院される患者様は多くいらっしゃいます。
腰痛とは側弯症や腰椎分離症など先天性の生じるものから、腰椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など加齢により生ずるものなどがある。
腰部の疼痛以外にも腰部由来による痺れ症状なども生じる。
痺れは主に下肢に生じ、下肢に生じないのが特徴である。
しかし、神経は筋の間を走行するため、筋の硬さによって、神経の絞扼が生じ痺れを引き起こすこともある。これは末梢神経症状である。
そのため腰部に病変がなくとも下肢に痺れ症状を引き起こすことも十分にありうる。
例としては梨状筋である。
梨状筋は坐骨神経や上殿神経、下殿神経が走行しており、坐骨神経の支配領域への痺れや中殿筋、大殿筋の萎縮、筋力低下を引き起こす可能性がある。
上肢の痺れでも末梢神経による症状は筋によって引き起こされることも考えられる。。
腰部痛の原因として柔軟性の低下が要因の一つになっている
腰椎と股関節の運動は互いに関与しており、腰部の可動性が低ければ、股関節が過可動になり、股関節の可動性が低ければ腰部が過可動となる。
これを腰椎骨盤リズムという。
腰部痛がある方は股関節の柔軟性の低下が生じている方が多い。また股関節疾患がある場合でも、股関節可動域制限が生じやすいため腰部への負担が増大し、疼痛を引き起こす。
そのため股関節の可動域の向上は必要である。
また柔軟性だけでなく、腹部の筋群と背部の筋群が協調的に働くことも必要である。
体幹の前屈では腰部の屈曲と股関節の屈曲が必要である。
しかし、ハムストリングスや大殿筋などの柔軟性が低下していれば、骨盤、股関節の可動性の低下が生じ、腰部の過可動が生じる。これが繰り返されると腰部への過負荷が蓄積され疼痛などを引き起こす。
体幹の伸展でも同様の考えで腸腰筋や大腿直筋の柔軟性が低下していると股関節の伸展制限
が生じ、腰部への過負荷が生じる。
上記の理由で股関節の柔軟性の向上が必要である。しかし、腰部の疼痛はどのような場面で生じるかによってアプローチする箇所が変わるため、股関節のストレッチを行っていればいいということでもないため注意が必要である。
また腰部の疼痛は姿勢の影響も大きく受ける。
近年デスクワークの仕事が多くなっており、テレワークなども多くなったため、通勤がなくなったことによる活動量の不足、自宅でのパソコン作業をする環境が整っておらず、姿勢によって腰部の負担が増大し疼痛を引き起こすこともある。
これは頸部にも同様のことがいえる。
長時間の同一の姿勢は腰部や頸部などに持続的に負担がかかり疼痛を引き起こしてしまう。
そのため、1時間に1回もしくは30分に1回など少し立って軽いストレッチをするなどが必要である。仕事に集中してしまうと忘れてしまうためタイマーなどの使用も推奨される。
この記事の監修医師

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉
経歴
- 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
- 平成23年 東邦大学 医学部卒
- 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
- 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
- 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
- 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
- 平成30年 渡辺整形外科 副院長
- 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
- 令和6年 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長