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閉経後骨粗鬆症の診断と治療

閉経後に骨粗鬆症になりやすくなるメカニズムとは? 

女性は閉経を迎えると、女性ホルモンの分泌が減少します。これにより骨粗鬆症を発症しやすくなるのです。

女性ホルモンのひとつ、エストロゲンは骨の健康を保つのに深く関与しています。簡単にいうと人間の骨は、古い骨を取り壊す「破骨細胞」と、新しい骨を作る「骨芽細胞」の働きによって、常に健康な状態に保たれています。通常、エストロゲンはこの2つの細胞に作用しています。

女性ホルモンの分泌量が減ると破骨細胞の働きが盛んになり、骨芽細胞の働きが追いつかなくなってしまいます。そのため、骨量や骨密度が減って骨がスカスのカになってしまいます。この状態を「閉経後骨粗鬆症」といいます。

骨の強度が低下するため、簡単に骨折しやすくなり、場合によっては何もせずとも折れることがあります。特に高齢者の場合、さらに骨粗鬆症が悪化していくため、背骨や大腿骨を骨折することでかなり高い確率で寝たきりになるリスクが高くなるので、注意が必要な状態です。

研究データにより、骨粗鬆症により背骨や大腿骨を骨折すると寿命が短くなることがわかっています。それは、背骨が圧迫骨折を起こしたり、大腿骨を骨折したりすると、健康寿命が縮まるからです。特に骨粗鬆症により大腿骨を骨折すると、がん以上に寿命が短くなるというデータもあります。

女性が閉経後に骨粗鬆症にならないための予防方法は?

まずは、適度な運動をすることです。運動は筋肉を鍛える効果だけでなく、骨に刺激を与えて強化したり、再生を促したりする効果もあります。元々運動習慣がない方は、無理のない範囲でウォーキングやジョギングなどから始めてみましょう。慣れてきたら、これらの運動は荷重により下肢の骨に適度な物理的な刺激を与えるので、骨を強くするのに適しています。

有酸素運動に加え、筋力トレーニングを行なうと良いでしょう。腹筋や背筋などの体幹の筋力や大腿四頭筋やハムストリングスや大殿筋などを鍛えるのも良いでしょう。これはフィットネスジムでも良いですが、毎日自宅でやって頂くだけでも効果があります。ポイントは翌日もしくは翌々日に辛くない程度の筋肉痛が出る程度の負荷を与えることで、筋力は向上しやすくなります。筋力を鍛える場合は、タンパク質やビタミンの十分な摂取も大事になります。

骨に必要な栄養素を日々十分摂取することもとても大切です。特に不足しがちで、積極的に摂取したい栄養素はカルシウムと、カルシウムの吸収を助けるビタミンDになります。カルシウムは乳製品や大豆製品に多く含まれているので、積極的にとりましょう。またビタミンDは魚介類や卵、乳製品などに多く含まれています。そのほか、ビタミンK、タンパク質、ビタミンB群(B6、B12、葉酸)、マグネシウムも骨の健康を守るために必要です。

ビタミンDを増やすために、日光を浴びることも大切です。日光を浴びると体内でビタミンDの生成が促されます。そのため毎日30分程度は散歩をするなど、習慣化すると良いでしょう。ただし日焼けやシミを防止するためや、日中の外出が難しいなどで日光を浴びるのが難しい場合は、毎日魚を食べたり、サプリメントでビタミンDを摂取すると良いでしょう。

骨密度はどうやって調べるのですか?

骨密度は多くの場合整形外科で測定して判断します。閉経が近くなったら、最低年に1回は整形外科で骨密度を測定してもらうと良いでしょう。ときどき「去年測定して問題なかったらから今年は検査をしなくても大丈夫」という方がいらっしゃるのですが、女性の50代は人生で最も骨密度が急激に落ちやすい時期です。そのため閉経以降は、たとえ昨年は問題なくても、少なくとも年に1回は定期的に測定して数値を比較することが重要です。

骨密度を測定するにはいろいろな方法がありますが、できる限り大腿骨と腰椎の骨密度を測定することが大切です。これは、大腿骨や背骨の骨折が寿命に大きく関わってくるからです。骨粗鬆症の診療基準でも原則的に「大腿骨と腰椎の骨密度を測定していずれか低い方の骨密度で診断する」ように取り決められています。そのため、医療機関のホームページを確認して大腿骨と腰椎の骨密度を測ることができる医療機関を受診することが大切です。

閉経後骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症の治療のベースは薬による治療が原則です。骨粗鬆症は女性ホルモンが閉経によって分泌量が大幅に減ることが大きな要因になるからです。現在は骨粗鬆症の新薬が数多く登場しており、病状に応じて選択できる幅が増えました。骨粗鬆症治療薬には主に以下の3つがあり、必要に応じて選択します。

1.骨吸収を抑制する薬(骨を壊す働きを抑える)

SERM(サーム)製剤、ビスフォスフォネート製剤、デノスマブ製剤など

2.骨の形成を促進する薬(骨芽細胞が骨を作る働きを促進する)

テリパラチド製剤、アバロパラチド製剤、ロモソズマブ製剤など

3.骨の材料となる薬

ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、カルシウム製剤、マグネシウム製剤、ビタミンB製剤など

 

骨粗鬆症の治療の目的は骨密度や骨質を改善させ、骨折を予防することにあります。しかし、薬による治療だけでは骨密度が上がりにくいことも少なくなく、運動療法や食事療法などを行い、骨への物理的刺激を上げたり、骨が作られるための材料となる栄養素を十分に摂取することでより骨密度が上昇しやすくなります。

骨粗鬆症の治療効果判定

骨粗鬆症の治療は、女性ホルモンの減少に伴いほとんどの女性は避けては通れない病気であり一生治療の継続が必要な場合はよくあることです。せっかく治療を始めても、医師の指示通りに服薬を継続できないという人も少なくありません。しかし、骨粗鬆症の治療は、最低4カ月毎でないと健康保険を使って検査することができないことに加え、やはりそれくらいは検査と検査の期間をあけないと骨密度が上がったのか評価が難しいものです。「なかなか治療効果が見られない」「特に痛みなどの症状がないから治療は必要ない」など自己判断せず、あまり構え過ぎず早めに検査・治療を始めて、根気よく継続することがとても大事でになります。

薬を使わない骨粗鬆症の治療は?

確かに、骨粗鬆症と診断された方から「なるべく薬を使わずに治したい」とよく相談を受けます。よく誤解されますが、生活習慣病と呼ばれる糖尿病、高血圧、高脂血症などは、暴飲暴食や運動不足などが主な原因になるため、原因に対して食事療法や運動療法が最も大事になってきます。しかし、閉経後の女性の場合、骨粗鬆症はエストロゲンという女性ホルモンの分泌量が大幅に減ったことが主な原因となっていますので、食事療法や運動療法だけで治療するのは原則難しいと思って下さい。治療薬として、例えばSERM製剤は女性ホルモンに似た薬で骨に主に作用して骨密度が上昇しやすくなります。

 

編集部 「骨粗鬆症の治療と並行して歯科で治療をすると、顎の骨が壊死(顎骨壊死)する副作用が出る」という話を聞いたことがあります。本当でしょうか?

骨粗鬆症治療薬と顎骨壊死

2000年初期に、歯科業界を中心に大きく騒がれた時期がありました。確かに、ビスフォスフォネート製剤やデノスマブ製剤など強力に破骨細胞を抑え込む薬は、抜歯などの歯科の外科的治療後に顎骨壊死を起こす危険性が、10万人に1人くらいですが起こる可能性があります。この確率は、歯科治療や骨粗鬆症の治療の有無に関わらず同じくらいの確率で起こり、実は大体宝くじで一等が当たる確率と同じです。すでに、「骨粗鬆症の治療は継続しながら歯科治療もしていく必要がある」という公な声明は出されていますが、未だに歯医者さんでは「この薬は危ないから飲んでいたらうちでは歯の治療はやらない」と治療を拒否されるケースが散見されます。骨粗鬆症も歯も同時に治療が必要な方は少なくありませんので、そのような方は骨粗鬆症の治療に寛容な歯医者さんを見つける必要があります。また、すべての骨粗鬆症治療薬が顎骨壊死のような副作用を引き起こすわけではありません。しかし、顎骨壊死は上記骨粗鬆症治療薬による治療中に一旦なると治りが悪いため、歯科外科治療や上記のような骨粗鬆症治療薬の開始のタイミングを調整する必要がある場合もありますので、骨粗鬆症の担当医師に相談すると良いでしょう。

最後に

 

女性は閉経が近くなったら必ず自分の骨密度を調べてください。日本では検査が必要な年齢なのにちゃんと検査を受けている方はたったの10%程度と非常に低い状況であり、結果的に高齢者の大腿骨や背骨の骨折を大量に招いています。大腿骨と腰椎の骨密度を最低でも毎年検査することに加え、レントゲン検査でいつの間にか骨折がないか、血液検査で破骨細胞や骨芽細胞の働きやビタミンDやカルシウム、タンパク質が不足していないかまで調べることもとても大事です。糖尿病や高脂血症などが骨粗鬆症と密接に絡むケースも多いので、必ず血液検査までトータルで行い、骨粗鬆症のリスクを測定するようにしましょう。一方女性だけでなく、男性にも骨粗鬆症は発症するので、60歳を超えたら測定する習慣をつけましょう。「糖尿病などの基礎疾患がある」「両親のどちらかが骨粗鬆症だった」などの場合には、40~50代でも定期的に検査を受けて頂くことをおすすめします。

骨粗鬆症のまとめ

基本的に骨粗鬆症は自覚症状がないため、いつの間にか発症しているものです。しかし骨粗鬆症を放置すると、将来的に大腿骨や背骨を骨折して日常生活での動作能力が大幅に下げるだけでなく、寿命が短くなります。必ず閉経が近くなったら予防として大腿骨と腰椎の骨密度を測定するとともに、食事や運動に気をつけ、予防を意識するようにしましょう。