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院長

<整形外科専門医が伝授>整形外科の選び方 病院編

いつもご覧いただきありがとうございます。 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック院長の渡邉順哉です。 さて、病院の整形外科の選び方について整形外科専門医の視点で解説します。 まず、クリニックなどの開業医と病院との違いは何でしょうか? 3つ挙げてみました。  

①入院施設の有無

クリニックによっては有床診療所といって19床以内であれば入院施設をもっているクリニックもありはしますが99%以上が無床の入院施設がないのがクリニックというイメージで良いかと思います。 決定的な違いはここだと思います。 入院が必要な検査や治療はどうしても病院でないとできない。 こればかりは病院を選ばなければならない最大の理由です。 例えば整形外科でいえば、全身麻酔が必要となるような手術は入院がほぼ必須になります。 逆に、日帰りでもできるような局所麻酔でできる小さい手術に関してはクリニックで行っているところもあります。  

② 専門的、先進的な検査や治療の差

これはひと昔まではかなり差がありましたが、今ではクリニックもその医師の専門性に特化して診療を行っているケースもあるので、一概に病院の方が診断・治療が優れているとは言えなくなってきました。 確かに、病院によっては大きな資本を活かして、通常クリニックでは導入しにくいような検査・治療法を導入する場合はあります。  

③ 結局は担当医によって大幅な差が出てしまう

これはクリニックでも、病院でもそうですが、診てもらった医師の診断・治療能力にかなり左右される点です。 病院では、大きい病院ほど整形外科になりたての医師が担当医になる場合も少なくありません。 私もそうでしたが、整形外科1年目は研修医に毛が生えたようなもので、整形外科専門医をすでに取得している整形外科医と比べると診断能力や治療技術・知識ともかなり劣ります。 大病院に通院する宿命ですが、患者様によっては大病院だから正しく診断して正しい治療を受けられると勘違いされている方が未だにいらっしゃるようです。 では、クリニックの医師は大ベテランだから大丈夫か? これも一概には言えません。 開業前に病院に所属していた時はカンファレンスがありますから、おのずと整形外科の最新の知識のアップデートされます。 しかし、開業医になると整形外科医は1名になりますから、自分で切磋琢磨して最新の治療法などの知識のアップデートを自ら進んで行っていないこともあります。 そうなると、世間ではどんどん新しい治療法がとっくに始まっているのに、その整形外科医は30年前に病院に所属していた時代の治療法をいつまでもずっと続けている場合があります。 今は、インターネットが普及していますのでたいていの場合は、ホームページを見て、あまり新しい治療について書かれていなければ、そういう感じの可能性があります。   なので、クリニックの整形外科が良い、病院の整形外科が良いというわけではなく、 私はそれぞれ病気に合わせて選んでいくことが必要かと思います。 正直、手術を受けたくない人は整形外科の受診はクリニックを選んだ方が良いと思います。 何故か? 私達、整形外科医は「外科医」です。 何故、病院にいる整形外科医は当直もないし、給与も良い開業医にならないのでしょうか。 そう、病院にいる整形外科医の多くは、手術を続けメスを置きたくないからです。 開業しながら病院にたまに行って手術する整形外科医もいますが、かなり稀で、通常開業したらメスは置く覚悟が要ります。 私もメスを置くときはかなり悩みました。 整形外科医から整形内科医になるようなものですから。 脱線しましたが、手術をしてなんぼの病院の整形外科医は手術以外には正直興味がない先生が圧倒的です。 私も整形外科医なりたての頃はそうでした。 手術が必要ない患者さんは何とか短時間で外来を終わらせて、手術に費やせる時間を確保する。 実際そうしないと手術の時間に間に合わないので、手術室の看護師からは催促の電話が来ますし、昼休みも一切取れなくなります。 忙しい病院の整形外科の外来では、手術にならない骨粗鬆症や圧迫骨折、腰痛や関節痛、交通事故・労災などは本当に時間が掛けられないのが現状だったりします。 高齢者が圧迫骨折したら100%骨粗鬆症なんですが、クリニックでは骨粗鬆症治療を行わない整形外科医はまずいないと思いますが、病院の整形外科医は余裕がなく放置され再度骨折というケースは珍しくありません。 逆にクリニックは手術できない分、そういった方を丁寧に治療して満足してもらうことに、整形外科医としてのモチベーションとなっていたりします。   従って、手術を前提に考えていない方は、まずは整形外科のクリニックへの受診をお勧めします。 後は、まだクリニックで相談していない方は一度クリニックで相談してからの方が良いケースもあります。 これは、病院の整形外科医は手術がしたい外科医ですから、手術しなくてもいけそうな病気も手術を勧めるケースが意外と多いからです。 病院としても、手術は利益が大きいので経営面でも手術件数を増やすように整形外科医に指導しているケースが多いです。 クリニックでは、手術を受けて頂いてもクリニック側にはメリットもデメリットもそれほどないため、純粋に手術する・しないのメリット・デメリットをお話しできます。 ただ、骨折などものによっては、手術するタイミングを逸してしまったことでの後遺症が残ってしまう場合があるので、ここもクリニック選びはとても大事だと思います。 特に開業してメスを置いてから期間が長い整形外科医は手術適応の判断基準も昔のままだったりで、昨今の手術適応の程度を知らない場合もあります。 骨折以外で手術が手遅れになるケースは少ないですが、手術から遠ざかって長い整形外科医に相談するのは要注意かもしれません。   あと、私が注意して頂きたい整形外科手術は背骨の手術です。 安易に相談した結果、手術になって、満足な結果が得られないケースが後を絶たないです。 腰の整形外科手術を受けられる方は意外と少なくないと思います。 例えば、腰部脊柱管狭窄症の手術。 私は、高度な狭窄でも筋力低下が出たり、多剤の痛み止めで十分痛みが取れず日常生活に支障が出ているケース以外は手術はあまり勧めていません。 ほとんどが、多剤の痛み止め、リハビリ、安静などで数ヶ月すると痛みが引いてくるケースがほとんどだからです。 私の方法で、手術が本当に必要になった方は数年に1例程度です。 しかし、腰の手術をたくさんやっている病院に受診した結果、手術を勧められ金属のボルトで腰椎を固定して、足の痛みは良くなったけども、腰痛や痺れは変わらない、でも執刀した整形外科医からは「腰は手術して治ったから大丈夫」と通院を終了させられたと来られる方もいます。 腰椎は1つずつ関節があり、その関節が動いて腰は綺麗に曲がります。 そこをボルトで止めるということは、少なくとも固定した関節は動かなくなりますので、動かなくなった分の動作を他の関節が代償する結果、代償した関節が痛んでくるというのは、固定術後の隣接椎間障害として整形外科医の中でも有名な術後合併症です。 腰部脊柱管狭窄症の手術の基本は靱帯や椎間板などで狭くなった脊柱管を広げるのが目的ですので、脊柱管の後ろの骨や靱帯を取り除いて圧を逃がしてあげるのが基本です。 それでもすべり症などで不安定性が残っている場合は、術後の脊柱管狭窄症症状が残ってしまう可能性があるため、ずれてしまう椎間を固定する目的で金属で固定する場合はあります。 これが、公立病院とそうでない病院とで固定されている確率が全然違うと私は昔から感じていました。 脊柱管狭窄症で狭いところを広げるだけの手術は13万円、そこに金属の固定を足すと1カ所目30万円、2カ所目以降1か所につき15万円の診療報酬が請求できます。 私の推測では下記のような感じではないかと思っています。 公立病院では、整形外科医が手術で稼ぐように厳しく指示されるケースはあまりなく、短時間で終わるな広げるだけの手術で終わらせる。 公立以外の病院では、経営的な面で、手術による診療報酬のアップを整形外科医師に要求するケースも考えられます。 全ての整形外科医とは言えませんが、より整形外科医は広げるだけの手術でも十分なところに金属による固定術を加えることで、必要以上の治療を行って利益を得ている可能性は否定できません。 病院によっては、診療報酬の高い手術を1件行うごとに、執刀した整形外科医の給与がアップする病院もあります。 私は膝の人工関節置換術をやってきた整形外科医だったため、脊椎外科の事情はあまり詳しくないですが、人工関節置換術と比べると、腰椎が金属で固定されたレントゲンを見て本当に手術必要だったのかなと思ってしまう患者様を時々お見受けします。 そんな時に、手術より前に出会えていれば、手術しないでも治せたかもしれないのになぁ、と心の中では思っているのです。 もちろん、すでに手術を受けてしまった患者様にこんな話をするのは何の解決にもならないし、患者様は不安と後悔に苛まれるだけなので心の中に留めておいています。 私は、手術否定派の整形外科医ではありませんが、手術より前に出来る治療を最大限して、それでも手術の方がメリットが大きければ、整形外科手術は勧めています。 もちろん、手術の方がメリットを最初から感じている方に無理強いはしませんが、患者様はほとんどは手術はできるだけ避けたいと思うのが当然だと思います。 私も全身麻酔で整形外科手術を受けるときも手術以外の方法で頑張ってもうまくいかなくて仕方なく受けました。 結果としては、受けて良かったと思いましたが、手術前に手術以外の治療法をしっかり受けていたので、例え術後の結果が思わしくなくても、手術以外の治療はやり切ってからの手術なので後悔はしなかったと思います。 私は手術を肯定するでも否定するでもなく、最終手段として取っておいて、その前に解決できる可能性のある治療法があれば積極的に推奨していきたいと思います。   長文になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。 イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長渡邉順哉

この記事の監修医師

イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 院長
渡邉 順哉

経歴

  • 平成16年 鎌倉学園高等学校卒
  • 平成23年 東邦大学 医学部卒
  • 平成23年 横浜医療センター 初期臨床研修
  • 平成25年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
  • 平成26年 神奈川県立汐見台病院 整形外科
  • 平成28年 平成横浜病院 整形外科医長
  • 平成30年 渡辺整形外科 副院長
  • 令和元年 藤沢駅前順リハビリ整形外科 院長
  • 令和6年  イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 統括院長